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百五十一話「第三回公式大会《20》」

前回のあらすじ


NEOアームストロングと対峙するウミ。界変技を使用されたことによってたちまち劣勢となり負けそうになるも、自身の力をありったけ使い、なんとか相打ちに持っていくことに成功しウミは退場。





 雷撃が轟く廃坑した大地には一人の少女と一人の老人が浮遊している。片方は魔法による恩恵、もう片方は伝説装備の権能で浮遊している。その身体はつにて帯電しきっており上空に浮かぶ雲雲のあらゆる電力を我が物にし、力を高めていた。


 「ウミ。」


少女ルルカは自分の友達でありメイドである彼女の退去を戦闘中に知った。クランメンバーと書かれた欄にウミと書かれた文字は赤くなっている。彼女はそれを名残惜しそうに指でなぞる。しかしそんな少女に向かってくるのは鋭い怒号を纏った雷撃であった。

それは老人から放たれたものだった。


 「戦闘中によそ見とは随分と舐められたものだ。」


 「……私のセリフだと思うんだけだ。」


気分を害されたルルカの瞳は怒りに近いものが渦巻いていた。至って冷静であった。


 「今まで手加減してたんだ。」


ルルカが対面した老人は、最初こそ今のような雷帝とならず人の身で雷撃を操り全知の魔女と対峙していた。しかし長期的な戦いの中今のような状態へと変貌したのであった。


 「手加減?まさか、これは奥の手だ。ジョーカーを切るにはまだ早すぎたと───」


老人が言い終わる前に、白色の暴風が悪雲を突き破る槍のようにまっすぐ雷帝へと放たれた。雷撃を身に纏っていた老人の電力の多くは瞬間的な防御に使われ、暴風が過ぎ去った後、それは半減していた。


 「流石にウイニングランに早すぎるよ。私は誰かさんと違って手加減できないから。」


ルルカの目はマジであった。それを身をもって味わった雷帝爺さんはその重い腰を上げざるおえなかった。


 「やれやれ、若いものに負けるわけにはいかないからの。」


雷帝爺さんが天に両手を仰ぐと、雷竜が姿を表す。その長い体を持ったその龍はルルカにルルカに巻きつき直ちに鼓膜がちぎれるほどの轟音を奏で始めた。大地に無数の雷撃が走り、不可思議にも岩岩が空へと持ち上げられる。自身の最大火力を叩き込むには今しかないと考えた雷帝爺さんは遠慮をしない。


次に暴風を巻き起こし放電する雷竜ごと大地の断片を押し付ける。これで動きを封じたと確信した雷帝爺さんは次にその手にありったけの雷を溜め込む。そしてそれを身動きが取れないであろうルルカにぶつけようとした時だった。


 「!?」


突然、あらゆる方向から魔力砲マジックカノンが放たれた。攻撃寸前だった雷帝爺さんは警戒のためそれらが放たれた魔法陣を雷で徹底的に潰していった。しかしそれでも魔法陣が再生され出現する速度の方が速かった。


 「くっ。」


雷帝爺さんはひたすらに回避と迎撃をする立場に置き換わった。先ほどまで縦横無尽に攻撃していた姿勢は跡形もなく消え去った。それもこれも全てルルカの卓越した魔法操作によるものだった。


 空中の岩岩が光の粒子によって根絶され、まとわりついていた雷竜もまるで意味がなかったかのように弾け消し飛ばされた。純粋な魔力攻撃は時にどんな魔法よりも対処が難しい、加えて全知の魔女が扱う魔力砲は格別である。練り組み上がった魔力とそれを複数同時発動できる魔法使いとして異常とも形容できる技量は同じ魔法職のものから敬意と畏怖を抱かれる。

無論この雷帝爺さんもこれに準ずる、問題は敬意はともかくとして畏怖と恐怖が大きかったのだ。


ルルカは杖を掲げ世界の終末のように魔法の雨を展開した。高速で飛んでくる魔力の塊は地上にいるのならまず避けようがない、空中にいたとしてもあまりの段数に撃ち落とされる可能性があるため。迂闊に大きく動き回ることはできない。ゆえにとれる選択肢は同等クラスの攻撃による迎撃である。


 「!」


雷帝爺さんは自身の雷撃を出し惜しみせず、自分へと降りかかる魔力砲の弾を相殺する。そして同時にその物量攻撃に対応するため、一瞬で周りの雷から電力をかき集めそれらを天井に向けて放った。


再び轟音が鳴り雷の大樹が空中に現れる。一瞬にして構築してあったルルカの魔法陣は全て消滅、同時に空中が激しく帯電しているため新しく魔法陣を設置できないようになってしまった。


 「これで得意技は無くなったの。」


 「魔法使いが魔法を使えなくなったら戦えないけどさ──」


ルルカは風邪を切り裂き、一瞬にして雷帝爺さんに接近した。そして彼が迎撃の雷を放つより早くその腹部に重い蹴り技を入れた。


 「私は、魔女だから!」


意外にも最近のルルカの得意分野は近接先頭である。ただひたすらに魔法を打って終わってしまう魔法形態よりも、肉弾戦に特化したスーパールルカモードの方がよほど駆け引きがあって楽しいとは本人の談。本来魔法使いが近接線など嗜むなど考えもしない行為である。しかし例外はここにいる。


 「なんと!」


しかし雷帝爺さんもまた例外的な人物である。近接戦を向こうが望むなら伝説装備の担い手として受けて立つまでとかなり乗り気であったのだ。

彼の伝説装備は雷そのものであり、それは雷帝に由来するものである。彼の持つ雷の槍は時に竜となり時に嵐となり時に雷になりと、変幻自在である。電気という性質さえ失わなければいくらでも形は変えられる。それは帯電し切った武器にも変わる。


 ルルカの蹴り技に対して、雷帝爺さんの雷の槍が激突する。本来なら強度的な理由でルルカが不利だが彼女も彼女でかなり意地悪に立ち回る。自身の体から一ミリ浮いたところに攻撃被弾盾アタックダメージシールドをアーマーのように纏うことによって、強度を維持、あとは圧倒的な速度で殴る蹴るなどすればそれは立派な格闘へと生まれ変わる。

攻撃被弾盾アタックダメージシールドは属性攻撃に対してもある程度の耐性があるため、何重にも重ねがけすることによって、強固な守りとすることができる。


雷撃と格闘がぶつかり合い続ける。近接戦闘に意地があっても実力が伴っているわけではない雷帝爺さんも数回打ち合えば、スタミナ的にキツくなる。老人の限界である。


 「グゥっ!」


 「甘い!!」


鋭い一撃が老人の顔を横殴った。何回もパンチをくらていながら働く老人は意外にも耐えられている。その皺がある顔の骨が今頃何本折れていることやらと予想していた観客たちは粘り強さと防御力の高さに今頃感嘆していただろう。


 「トドメをきまさせてもらうよ。」


 「まさか、小娘が…よく言う!」


雷帝爺さんは再び力を貯めようと雷をかき集め出そうとする。しかし意外にも雲行きは悪くなっていった。彼がいくら大空を仰ごうが何一つ起こりはしなかった。


 「!、なぜだ!」


 「わからなかったでしょ。」


ルルカは得意な顔をして指先を空へと向ける。すると彼女の人差し指に空に存在するあるとあらゆる電力が極限にまで集中し出した。


 「!?」


 「あなたはあくまで雷を操るだけの能力。独特な固有現象じゃないなら、こんな感じにジャックすることは容易い。」


 「まさか、魔法陣から。」


破壊したルルカの魔法陣はただ破壊されたわけではなく、魔力を残して破壊されていた。残存された魔力は元々ルルカのものである。それが何十回もの戦闘によって落とされた雷に呼応して性質が雷よりになっていった。ルルカは最初から破壊された全ての魔法陣の残存魔力を感知し続け、そして少しずつ操作していた。近接戦に持っていったのはそれを悟られないため、それと魔力操作に集中するためだった。


結果、残存魔力によって雷の属性を纏った魔法陣が完成し、その宙域に存在する多くの雷を奪う結果となった。


魔力は持ち主に直結する。それはどんな伝説装備やどんな異常な法則であろうとも例外はない。

こと雷を操るだけの伝説装備であるのならば、先に魔力を結びつけていたルルカの方が所有優先度は高かった。


 「電光・雷帝!!」


魔力を使用した攻撃は魔術とされる。そのため、これは魔術行使に当たる。ルルカの叫びによってかき集められた雷は一つの塊となって打ち出される。それはまるで電光の弾丸であった。弾丸は音を切り裂き光の速度で直進し、次の瞬間には通り道にあった雷帝爺さんを音もなく消し飛ばした。


 「あ。」


しかし速度が落ちないその攻撃は大地に直撃。結果とんでもない轟音と共にスパークが起き周囲一帯にいた生体電気を持ったプレイヤーたちが軒並み感電死したのだった。

効果範囲はとんでもなく、ルルカは内心紅月に当たっていないようにと心で祈りながら敵を探しにその場から逃げるように出ていった。



『topic』


ルルカの強さは異常なまでの魔力操作もその一因である。


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