百四十八話「第三回公式大会《17》」
前回のあらすじ
逃亡するパラディスを追撃するレナ。二者のスナイパー対決は時間切れという形で幕を閉じることとなった。
二種目目のクランデストラクションが終了し会場は依然として熱冷めない状態となっていた。すでに著名クランがいくつも落とされている中大勢の観客たちは最後の種目、クランバトルロワイヤルに注目を集めるのであった。
「さぁぁて!みなさん、いよいよ最後の種目です。ここまで長いようで短いようでしたねー!私は体感5ヶ月くらいの長さに感じます!しかーしまだまだ終わりじゃありません。ここから最後の種目クランバトルロワイヤルを開催いたします!!」
会場にプレイヤーたちの歓声が響き渡る。さながらクライマックスを迎えたフェスステージよう。
「皆様準備万端、トイレも飲み物も食べ物もすでにようした様子!あ、用意してない人は異mかからでも問題ありません!今から行うのはハイライトです。もちろん私ばかりではあれなのでさっきから考え事と新しい記事を書いているカイさんに振っていこうかなと思います!」
「はいはい。それじゃまずは第一種目から。この種目ではクランが互いに牽制し合いながらもモンスターを狩るのが主な種目となっていました。が、クラン:エレストスターダストの伝説装備によって戦局は大きく変わることとなりました。最後に現れた大型モンスターヴァニタス・エディタは圧倒的に強く、紅月選手含む多くの上位プレイヤーたちが大立ち回りを見せ、無事協力し討伐を果たしましたね。」
「いやぁぁぁぁさすが上位の人たちは立ち回りというか決断が早いですね。さっきまで牽制しあっていた仲でもすぐ同盟を作るんですから。」
「それほど、ヴァニタス・エディタが脅威だったということ。正直私も他の討伐方法は思いつけないかな、なんて。」
「絶対思いつきそうな顔してますよ!」
「さて次です。」
「無視された!?」
「第二種目では本格的にクラン同士の衝突が始まります。ここでは各クランの城攻めやスタンスがよく見れる場面でしたね。集団行動を得意とするクラン、少ないながらも少数精鋭の役割分担でこなすクラン。多くはこの二つに分類されてました、ですがやはり優勢だったのはそもそもの人数が多いクランだったでしょう。塵も積もれば山となるの如く、たとえ一騎当千に強くなくても物量作戦、人海戦術を活かせるクランはこの種目にてアドバンテージを取れていたことは間違いないだったようだしね。」
「全知の魔女とドラゴンスレイヤーの戦いも見どころでしたね、私あそこで泣きそうになってました!カイさんは?」
「……で、データ収集に。」
「コラァなんて人なんですか!!」
「いやすみません。代わりに私のデータ収集していいですから。」
「それやっても楽しくないんですよ、それにカイさんのデータ能力なんて誰が欲しがるんですか?!」
「そんな、部下からは欲しいって言われる才能なのに!」
「もういいです!!とりあえずこんな感じのがハイライト!みなさんもすでに全力待機しているみたいですからちゃっちゃと始めますよ!」
巨大なスクリーンにカウントダウンを指す数字がゆっくりと下がっていく。十秒前になるとMYYが大きな声で合図をしてプレイヤーたちは大きな声を出しながらカウントダウンを数えていく。
『3、2、1!!!スターーーーート!!!!!』
開始のゴングがなると、マップが一瞬にして生成される。マップは混沌を極めた大地、氷結、煉獄、平原、闇の世界、天の世界。その場に広がるのは無秩序なファンタジー世界、同時に最終決戦のバトルフィールドである。目新しい世界に観客は視線を木々づけにし、そしてその大地にプレイヤーたちがランダムに配置される。戦いの鐘はなっている、この大会の最後の種目クランバトルロワイヤルのルールは至ってシンプルである。
それはサーチアンドデストロイ。見つけた相手が同じクランでないのだとしたら殺す。
以上。
「まずはお嬢様と合流しなくてはいけませんが───」
「!!見つけたぞ─」
相手がその声を上げた瞬間、ウミの高速のラリアットが脆弱なプレイヤーの胴体を粉々に破壊する。戦術の基本その1敵を発見したのなら自分が発見されることを考慮した上で行動しなければならない。ましてや発見時声を出すなどしにいいくようなものである。
「その前に露払いを。他にもいるのでしょう、私がお相手いたします。」
「ひ、ぃぃぃいっ!!」
「おや。ですがご勘弁を──」
逃亡する剣士にウミは一瞬で追いつき肩を掴む。彼はもう逃れることができない。
「がやぁぁああああああ!!!???」
そして肩を粉砕されたと理解した次の瞬間には、その剣士の腹はウミの炎によって貫き焼かれていた。
「この種目では手加減などできません。──私ウミは勝利のために戦います。」
いつも温厚に行動するウミ、しかしこの種目が自身の主人であるルルカに捧げるものだということを決して忘れてはいない。ゆえに手加減などしない、郷に入っては郷に従え。ウミはこの原則をもとにこの瞬間から見つけたプレイヤーを刈り取るキリングマシーンモードに突入した。
そして某所
「どうなってる、相手は一人だぞ!なんでこんなにいるんだ、」
「ゴーレムマスター!?」
「いいや、クラフトマスターが正しいの」
『!!!』
エズの大きなアームがプレイヤー二人を鷲掴みにして握り殺す。粒子となってあっという間に消える仲間を見たプレイヤは恐怖から逃亡に出る。しかしすでに死んだとはいえ仲間に背を向けるような行動はエズの前では御法度だ。
「やれ。」
『──了解』
主人の命令を聞いたエズの機械人形たちは一斉に攻撃を開始する。逃げるプレイヤーの足を打ち抜き、迫り殺しに行く。
「や、やめてくれ!!こっちに来るなぁぁぁ!!!」
その悲鳴は誰にも届くことはない。偶然にも集まり淡い希望を抱いたとあるクランの三人組は理不尽にも女王の軍勢によってその痕跡をどこにも残すことなく終えた。エズが作り出す機械兵たちは一斉に大地へ広がっていく、彼女自身が軍隊に匹敵するだけの力を持つのである、そしてそれはこの大会の多くのプレイヤーを凌駕する兵士を生み出すのである。
「これは、運が悪い相手を吹き当てたものじゃ。」
エレストスターダストの雷帝爺さんが対面するは、手加減を知らない無邪気な魔女である。全知の魔女ルルカはその杖先を雷帝爺さんに向けると、先から紫色の雷、金色の雷が織りなす絶雷呪文を迸らせる。
「むっ!」
雷帝爺さんは青白い雷を身に纏い、それらに真っ向から対決を申し出る。威力は互角。しかし雷帝爺さんはわかっているルルカが全力でないこと、自分は全力でないにしろ伝説装備を持ち使っていること。
「わしに雷で対決とは、甘く見られているのか?」
「うぅん。私は手加減なんてしないよ。貴方は神雷、私は魔雷。でも手数が違うの。」
「……ッ」
ルルカの背後に魔法陣が縦並ぶ。それらが帯電を帯びると向かう先は雷帝爺さんへとセットされる。
「私は正々堂々と貴方達を負けさせる。」
「あまり、老骨を舐めるでないぞ。小娘…ッ!!」
二つの雷撃が激突し、赤雷が周囲一帯を吹き飛ばしながら大地を削り取る。二人の戦いによって生まれた雷たちは道中のプレイヤーを薙ぎ払い、全てを黒焦げにしていくのだ。
「──っち。」
空中をかける一閃、レナを狙撃するのはスナイパーパラディスである。そしてその二人の間に乱入するのは天使ケルスト、召喚天使たちを従え二人の戦いの合間に入る。レナは二者の攻撃の合間を掛け抜けながらマイクロミサイルランチャーで迎撃の姿勢に出る。放たれたミサイルがさまざまな軌道をとり、パラディスとケルストに食らいついていく。しかしいずれも決定打にはならない。
「。。」
ケルストは召喚天使たちを円形に作り、そこから光の柱を打ち出す。天へと打ち上がった柱はそこから無数に枝分かれをして外地を焼くメギドに至る。炎が雲を焼き焦がし崩壊する新世界を垣間見せる。神聖魔法が織りなす大魔法である。
パラディスは自分の撤退先に落ちる炎を予測しながら弾倉を切り替えながら回避する。レナも高速移動でそれら全てを回避。しかしあたり一体は神秘なる炎で燃え盛っている。燃え盛るメギドから姿を現すのはケルストただ一人、その両腕には灼天使を連れている。
「私もただ参加しているのではありませんので。勝てるのなら、勝たせていただきます。」
大大なる宣言、しかしレナもパラディスも理解しているその人物がいかに危険で。その言葉を豪語できるかを。
「……紅月イィイィいぃ!!!!」
聖槍を携えた天使は地上スレスレを飛行しながらまるでバーサーカーのごとき戦意を見せながらただ一人の巨人へ立ち向かう。巨人の名は紅月。装備名であるヘカトンケイルは百腕の巨人。最後の戦いを始める二人の邪魔をするものはいない、邪魔をしようものなら殺されると一瞥するだけでわかる戦い。紅月の腕がフライを掴む前にフライは紅月の大剣と衝突する。
大地が揺れ、凄まじい剣戟が耳を突き刺す。目まぐるしくも輝かしい光線たちが空中を破壊し、二人の壮絶さを物語る。
これより先は瞬きすらできない真の境地。参加者たちの最後の戦いである。
『topic』
ウミは状況によってルルカを完全に最優先するキリングマシーンと化す。彼女の前に立つのならば全力で挑まなければならない。




