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百四十三話「第三回公式大会《12》」

前回のあらすじ


次々とクランを焼いていくウミ。そこに"競い合い"がしたいとフライが舞い降りる。ウミはフライと交戦しながらも紅月に連絡をし、その場を託すことにする。紅月とフライの二人の直接対決が始まる。








 観客席は向かい合う二人に大盛り上がりとなっている。第二公式大会で見せた二人の戦いは未だ多くのプレイヤー達の心を掴んで離さない名シーン。それゆえにこの第三回公式大会における再戦は見ているプレイヤー達の心を鷲掴みにしている。


 「ご覧ください!紅月選手とフライ選手、互いに向かい合ったまま動きません。第二回公式大会で意図せずぶつかり合った二人!記憶に新しい人は多いんじゃないでしょうか!!そうです、あの激戦をもう一度、プレイヤー同士の戦いが公式的に許されている場所だから可能なマッチなのです!!」


 「。。。」


真面目に実況するMYYの傍でカイは二人の分析に取り掛かる。攻略班として上位プレイヤー同士の戦いは互いの手の内の暴き合いでもある。まだ未解明なところが多い技もサンプルにできると踏んで、この時ばかりは解説役ではなく一人の攻略班として向き合っている。


 紅月とフライは少しの会話をしたあと全く動かない。どっちかが動き出すのを待っているかのように、しかし戦いが始まらないことに落胆する観客達ではない。達人同士の戦いが一瞬で決まるように、二人の戦闘もそれこそ初手の行動がどんなものであるかによってその後が決まっていく、それを理解しているからこそ、黙ってただ注意深く観察するのである。


 「…………。」


 「…………。」


痺れを切らした方が攻撃を開始する。これはそういう戦いだ、なら先に攻撃するのは競い合いをしたがるフライの方だと思われるしかし、向こうも向こうで油断はしない、相手が紅月であるのなら無策で戦うわけにはいかない、というより無策で戦えばすぐ終わり楽しめなくなる。


ゆえに動かない。


紅月も同じである、フライのことをただの狂人だと甘く見ていないでその衝動の中にある驚異的な戦闘能力を十分に理解している。第一種目にて見せた戦闘機動も以前見た時よりはるかに洗練されていることを見抜いており、それに加えて新しく技も持っていると考えると紅月もただでは動かない。


 そして二人が向かい合って1分ほどが経過する。この間二人の間では1時間以上もの思考時間に匹敵する。その間ただ始まりの瞬間を待っているのではなく頭の中であらゆる攻撃に対してのチャートを対策する。

そうして二人はついに


 『────!』


動き出す。動きは早かった。紅月はスラスターを使わずにフライも翼を使わず己の体による踏み込みによって前に出る。そして初撃は互いの武器がぶつかり合うだけとなった。


その際に生じる衝撃波は大地を揺らし、近くの木々ですらすくむような一撃であった。


 フライは紅月の背後に数十もの聖魔法攻撃をスタンバイする。紅月はそれを先に理解していたゆえに、追加兵装を開放する。

紅月のスラスター部分は展開され、そこから二つの巨大な腕が姿を現す、そして背後にある魔法陣に向かって極太ビームキャノンを斉射することによって魔法攻撃が飛んでくるより先に全てを打ち壊した。


フライが次の行動として槍を振るい紅月を攻撃しようとするも、逆にそれを掴まれ、大剣を盾に向かって振り下ろす。


 [──ォォォン!!]


鐘をたたき鳴らすが如く音が響き渡る。そしてフライは今の攻撃で若干腕が痺れてしまう。そこにすかさず前足を繰り出してフライを吹き飛ばす紅月、遅れをとったのはフライであった。


突き飛ばされる体勢でありながらフライは槍を投擲し、紅月に向かって攻撃する。それをなん楽回避する紅月はフライに向かって突貫しつつ腕部のビームカノンの一斉射によって迎撃の聖魔法攻撃の選択肢をフライに与えない。


そして紅月が大剣振り下ろしフライを叩き折る時、彼の手には戻ってきた槍があった。

フライは紅月の思い一撃を盾でパリィし、そして槍を紅月に向かって刺し込むがそれを大型アームによって掴み取られ、そのまま槍ごと地面に叩きつけられる。


逃げ場がなくなったフライに向かって大剣をまた振り下ろす紅月、しかしただでは折れない。フライは聖魔法を超至近距離かつ、超高威力のものを用意し自爆覚悟で紅月諸共自身を吹き飛ばす。


二人中心に大爆発が巻き起こり、大地をひっくり返す。


観客達はこの戦いに息を呑むばかりで誰も叫んだり喜んだりはしない。本気の殺し合いのように本気の戦いのように二人の間で繰り広げられるのはまさに最上位でしか許されない戦いであった。


 「────!!」


煙が晴れたのは二人の武器が互いにぶつかり合った衝撃だった。聖魔法の絶え間ない攻撃を掻い潜り、大型アームを自在に使い、近接戦と射撃を繰り返す紅月と、それに応戦するフライ、

目にも止まらない戦いがそこにはあった。

先ほどの爆発は前座であったようにフライと紅月は互いの体に傷すら負っていない。


 フライは隙を見て、自身の槍を模した聖魔法をいくつも紅月に向かって撃ち放つ。ビームカノンの斉射によって応戦する紅月であるが、それで大半をやられたとしてもフライはそれらの槍を自在に操り紅月を追従する。


紅月は大剣を高速で振りそれら全てを叩き落とし、背後から奇襲をかけてくる。フライへ向かい大剣を振り下ろす。


 [ドォォォン!!]


しかしそこにいたはずのフライはどこにもいない。あるのは聖魔法の波動のみ、つまりダミーである。


 (もらった──ッ)


そう思うフライだが、一筋縄ではいかない。紅月の腕は何も大型アームと両手だけではなかった、腕に方一つ足にもう一つ、総じて四つのアームがフライの刺突攻撃をすんでで受け止め、本体へと傷をなかったかとにした。


 そして動きを止めさせられたフライに大剣をまたも振り下ろす紅月、何度も見せられた攻撃にフライは盾を構えてパリィしようとするが


 [ガゴゴゴッバギィン!!!]


紅月はパリィをするであろうフライを見越して、わざと大剣の力を途中で落とし、そして盾を目繰り返すかのように上薙ぎ払いへと変えた。結果フライの盾は空中を舞い、一気に不利になる。


 紅月はフライの首を狙って大剣の刃を押し降ろすが、フライは聖魔法のダミーを使いこれを難なく回避する。とはいえ咄嗟に見せられた行動にフライも気が気ではなかった。


 「……っ!」


顔は互いに頑強な鎧の中に隠されていたとしても、二人は笑っていている。さすが紅月、さすがフライと言ったように。


そしてフライは槍を逆手持ちにして、伝説武器のリミッターを開放する。必殺の一撃が次の瞬間にはくると理解した紅月も魔力放衣を解放し始める。が、その二人のクライマックスを破るように通信が入る。


 『紅月、そろそろ戻ってくるのじゃ。クランが何やら群れをなしてこっちにやってきておる。』


 『フライ、時間です。予定通りに進めるって言ったのは貴方ですよ、』


二人は通信を聴くと、戦闘態勢を解除し。戦いをやめた、そして先ほどのはただの話し合いであったかのように振る舞い言葉を交わし始めた。


 「悪いな紅月、用ができた。」


 「奇遇だなこっちも用ができた。」


 「再戦はまた今度にするか!」


 「……この戦いは絶対に決着がつかないと思うけどな。」


 「つくだろ?」


 「つかない。なんせ、お前は負けようが勝ちようが一生俺に挑んでくるからだ。」


 「へへっ!!」


回答に満足したフライは飛び立っていく。紅月もスラスターに火を入れ拠点の方へ舞い戻っていく。


こうして二人の戦いは、ひとまず幕を終えた。

そしてそれを見ていた観客席はざわつきながらも、まるで映画を身終えたかのようにテンションを高くして落ち着いていた。


 「はわー!すごかったですね皆さん!!あれが紅月選手とフライ選手の戦い!第二公式大会で見た時よりはさらに洗練された近接戦と射撃戦の嵐!!正直目で追うのがやっでしたが!私は楽しめましたー!!」


 「……。」


カイは今の一部始終を頭の中で整理しながら、手元にあったメモへと無心になって書き綴っていく。それを見たMYYは、呆れながらも画面を切り替えそれぞれのクラン達の動向に目を光らせていった。




『topic』


紅月の装備は隠し腕が多く内蔵されている。

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