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百四十話「第三回公式大会《9》」

前回のあらすじ


ヴァニタス・エディタの討伐により、第一種目"モンスタースコアアタック"は終わりを告げた。







 ヴァニタス・エディタが討伐されたことにより、第一種目の"モンスタースコアアタック"は終了した。終始プロプレイヤー達により大迫力の戦闘に会場は未だかつてない熱気に包まれていた。


そんな熱気治らない中、実況席に座る二人はマイクをオンにして話し始める。


 「皆様!!第一種目"モンスタースコアアタック"の集計が完了いたしましたため、手持ち、あるいは観客会場のスクリーンをご覧ください!!」


MYYの言葉の後すぐに第三回公式大会【SAMONN】と書かれたスクリーンは切り替わり、第一種目の点数票を高いクラン順に並べる画面へと移行した。先頭にあるクランはネイムズである。


 「はい!!みなさん、言わずもがなですね!現状クラントップはネイムズです!鉄血の死神、全知の魔女と行ったネームド達の集まり!どれもトップクラスの実力に加えてその力の源の多くは未知数!私の隣にいるカイさんも終始興味津々です!!」


 「いやぁ〜あんな活躍されたらねー。攻略班としてはもう目が離せないっていうか、」


 「解説と言えば!ヴァニタス・エディタの解説について未だしていませんでしたね!はい、マイクどうぞ!!」


 「あー。それについては後でまとめ記事を出すよ、私も人間でさ。こうメモしてはあるんだけどそんなことより次の種目が気になるー!!って人なんだ!!」


 「おや!私と同類でした!これでは人に品性を求めるのは絶望的ですね!それでは次の種目の解説です、私の体内時計にして約9週間ほど立っているような気がしてならないので、改めてご説明いたします!!」


 「……あ、マイクねハイハイ。」


マイクを渡されたカイは咳払いをした後、スクリーンの画面を確認しながら、解説を始めた。


 「少し前にも話したように、次の種目は"クランデストラクション"。拠点攻防戦っていう言い方の方がわかりやすいかな。この種目ではそれぞれのクランが独自の拠点を持ち、それを攻めて守り合うっていうルールだね。」


 「おぉ、そんなルールでしたね!それで勝利条件はなんでしたっけ?」


 「勝利条件っていう勝利条件はないけど、このクランに割り当てられる拠点にはHPがあるんだけどね、それが高ければ高いほど、比例してポイントが加算されるってことは、要は被ダメの少なさがポイントに繋がるってことだね。」


 「なるほど!そう言った点では特に勝利者がいないということになりますね。これで敗北願望のある人はリストラできます!」


 「そんな人来るかなぁ。いやいなくはないと思うけど、、あぁでもこの種目一見普通そうに見えるでしょ?」


 「はい!!」


 「いい返事だね。」


 「もしかして違うんですか?」


 「違うんです。」


 「どう違うんですか!!」


 「よくぞやっと聞いてくれました実は、この種目では初のクラン脱落要素が存在します!」


 「ナ、ナンダッテー!!」


 「こらこらMYYさん。そんな棒読みアイドルらしくないよ。」


 「おっとこれは失礼。」


この意味不明なショートコント、意味不明すぎて観客席は呆然とスルーしがちだと思われるが実のところ真面目に聞いている人もいる。【SAMONN】において人の話を聞かないことは直接的な死を意味する。ヒントなしに難問が解けないように、赤本がなければ東大の問題も非常に難しいのと同じである。


 「それで、脱落要素とは。」


 「文字通りなんだ。第一種目の時はプレイヤーが何回死のうが関係ない仕様だったけど、今回の"クランデストラクション"は違う。拠点のHPをゼロにしたらそのクランはその場で即脱落となる。」


 「ぎゃぁぁ!!ここでまさかの弱肉強食!!。、あれ?でもそれだとみんな攻撃しなくてもいいんじゃないですか?みんな平和に拠点に閉じこもっていれば同点もらえて、、」


 「まぁそう安心して望めたらねー。でも流石に一種目に差はついてるわけだし、それに"クランデストラクション"では攻撃して削った拠点HPに対してもポイントが加算されるから。」


 「ゑ!!?初耳ですよ!」


 「おっと失礼。だから、ただ守るだではいけない、より多くのポイントを手にするにはやっぱり拠点を半壊じゃなくて壊滅させないといけないってわけだね。」


 「おおおう。防衛と攻撃の両立。まるで社会みたいですね。」


 「あー。頭が痛くなりそう。僕飲み会とか嫌いなんだよねー。」


 「そうなんですか!では今度飲みにいきましょう!」


 「ねぇ!私の話聞いてた?!」


 「っということで話はここまで、種目説明も終わったところで、そろそろ試合が始まりそうです。プレイヤー達はすでに新しく用意された大地にて拠点を築いています!あれ?これって大丈夫なんですか?」


 「大丈夫に決まってますって。言ってませんでしたけど、プレイヤー達には試合が始まるまでの間、各々準備したり、拠点を守る壁を作る時間が設けられてますから、ここでどれほど強固な壁を作れるかも戦いの鍵にはなりますね!」


 「なるほど!今回カイさんは相当ボケてます!なぜなら解説役なのに言い忘れが多いからです!!」


 「それは本当にごめんね!」


 「っと、雑談はこの辺にしていよいよ第二種目"クランデストラクション"スタートです!!」


MYYの掛け声共に、大スクリーンに映し出されていた電子タイマーが0になる。大会出場者達に一斉に第二種目の開始通知が鳴り響く。戦いの火蓋が切って落とされるとほとんどのクランがこぞって拠点を離れ、一番近くの拠点を叩きに向かう、そしてそれを防衛するクランといった具合に展開は極めて安定しつつ進んでいる。


カイは解説していなかったが、この大会の主な拠点HPの具現化は拠点中央に設置されたオーブ状の球体である。これに攻撃を与えることによってポイントを獲得でき、そして体力を削ることができる。むやみやたらに爆発物で拠点を火の海にしたってそれはあまり効果的ではないのだ。だが、拠点を攻める一手には使えるだろう。


 しかし何事にも例外は存在する。


 「………。」


クランミリアリズムのスナイパー、パラディスは照準を弱小クランに向ける。銃口から放たれるオーダーメイド徹甲弾は拠点を覆っていたあらゆる魔法防御や物理防御を貫通し、オーブに直接攻撃を与える。そのダメージ、なんと全体の10%。オーブは基本的に高レベルプレイヤー1000人分の体力に匹敵するため、今の一撃によってどれだけのダメージが出たのかはもはや語るまでもない。


 「ど、どこから!!」


 「なんで、拠点のHPがこんなに!?みんな早く敵を探せ!隠蔽を使ってるかもしれない。」


 「………。」


実戦慣れ、イレギュラー慣れをしていなければパラディスの精密で静かな射撃を正しく捉えるなんてことはできない。

そのままパラディスは狙撃を続け、あっという間に弱小クランの拠点を破壊した。


 「終了。」


 『おつかれー、やっぱりパラディスに任せておけばこのくらい楽しょーだねー。』


 『油断は禁物』


 「……次はどうする?」


 『そうだなぁ、じゃーあ。ちょっかいかけてみよっか。』


 「わかった。」


 『ポルマー…はぁ、パラディス。危険だと思ったり見つかったりしならすぐ戻ってきて。』


 「了解。」


パラディスは迷彩マントを羽織り、すぐさま狙撃ポイントを移動した。凄腕スナイパーの彼女にかかれば狙撃ポイントを見出すのは用意、あとは敵の防御力次第だ。


 パラディスが次に向かった地点はクランネイムズの拠点、そこから約10km離れた狙撃地点だった。パラディス、ひいてはほとんどのクランがネイムズを恐れる理由は二人のネームド、それだけではなくなんか無駄に強いメイドや現代技術もりもりの謎の工学系プレイヤー、そしてこの中じゃ珍しいくらいの腕前の剣士だ。


最後のはともかくとして、メイドは今やネームド二人に並ぶ絶対強者。ヴァニタス・エディタ討伐の功績からも、他のクランはネイムズをより一層警戒するようになっている。そしてそれはパラディスも同じである。


彼女は凄腕のスナイパーである以前に、凄腕のプレイヤーでもある。一つ間違えば死ぬ状況、それを理解してなお仲間のためにネイムズの拠点に照準を移す。そしてそこから数秒待つ、パラディスはスキルによって中の様子がある程度わかるが、警備には鉄血の死神がついていた。そのため彼が少しでも油断する隙、もしくは何か他の行動をした瞬間に撃とうと考えていた。


だが。


 「…………。」


鉄血の死神はまるでパラディスが狙っていることを気づいているように動こうとしない。それどころかその全身から感じられる警戒はスキルを通して見ているパラディスにも伝わっていた。おそらく何をしても動かず、こちらの気配をなんとなく感じ取っている。そんなバカなと思いたいが、今までの鉄血の死神の功績を見ればそれが容易に説明つく。


 「…………。」


よってパラディスは緊張感を持って、拠点に照準をつけ続ける。釣り糸による魚が油断した隙を逃さないように、狡猾にも獲物を狙う狩人はそのチャンスを見逃さない。


そのタイミングが来るまでずっと同じ体制で待ち続けるのだ。


 「…………。」


何秒経ったか分からなかった頃、鉄血の死神がようやく動き始めた。彼はパラディスと同じく同じ体制でコンマ一つも動きはしなかった。ただこの瞬間、同じ仲間に声をかけられ振り返ったその瞬間をパラディスは見逃さなかった。


 「………!!」


だった一撃、されど一撃、これでネイムズという難攻不落の要塞に10%も削れるならパラディスにとってそれは勝利への一歩へと繋がる。気付いた時には引き金を引いていた彼女は反動をその身に受け、弾が虚空を裂く軌跡をただ黙って見ていた。彼女にあったのは命中したという確信とそして、、、ただ一つの懸念であった。


その懸念はわずかなもので、気に留めるほどのものでもないはずだ。しかし時に運命は残酷なもので、この世には何一つ上手く行った試しが存在しない。


 「────!!」


 パラディスは見た。放った弾丸が拠点に衝突するわずか1秒。その隙に仲間と何気ない会話をしていた鉄血の死神は恐るべきスピードでオーブの前に立ち、そしてその大剣によって自らが放った弾丸に追いつき、それを縦に真っ二つ、一刀両断した姿を。


その姿はパラディスに深層的な恐怖を植え付けた。何よりも恐ろしかったのはその反応速度と行動速度、あの一瞬にして鉄血の死神は人間をも超越するかの動きで、ひと三人分の大きさに相当するオーブのどの地点に狙っているかを定め、そしてその重々しい大剣を1秒、いや0.5秒もかからず振り上げ下ろし、そしてピンポイントに弾丸を切り裂いたのだ。


これでは鉄血の死神が人間だということに無理がある。そして何より、パラディスはそのスコープ越しに鉄血の死神と目があったのだ。10kmも離れた地点だというのにその眼光は確かにパラディスの肉眼に届いた。


 「っ!!」


まずいと感じたパラディスはすぐさま狙撃ポイントを離れ、自らの全速力で場所を移動した。

すぐに来るような追撃の予感はない、そんなパラディスが安心し切ったその時だったら。


上空から何かが飛んできた。それは機械のガラクタだった。だがそれはパラディスの移動速度に追従するように、1秒先のパラディスが歩こうとした道にちょうどよく墜落した。


 「っ!?」


パラディスは驚いた。それはただのガラクタだというのに、わかる。ガラクタを誰が投げてきたのか、あの鉄血の死神が自分の移動速度それら全てを考慮して投擲してきたことを、よってパラディスは恐怖した。鉄血の死神とは同じ人間にアあらず、名の通りの死神であるということを。


 「以上。」


 『うんわぁ、やっぱり無理か。』


 『無理かって具合より、逆にどう攻略しないかを探す方が早いね。大人しく投降する?』


 「………いや。別にネイムズに勝たなくてもいい。」


 『そうだねー。でも勝ちたいなー。』


 『なら、私たちの方法でやるしかないよ。』


パラディスの通信越しに聞こえてくる声はいつだって不敵に笑っている。彼女達はジャイアントキリングを生業としている、故に彼女達は強者ではなく、あくまで強者を狩る者。


それがクラン"ミリアリズム"である。





『topic』


パラディスのスナイパーライフルそして弾丸はポルマーのお手製である。

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