十四話「砂漠って夜になるとめっちゃ寒いらしい。えっ知ってた?」
前回のあらすじ
長い森を歩いていく紅月一行は途中賊に襲われるも、理不尽な戦力差でRTA史に記録を残せるほどの速さで撃退。レナとルルカ二人に説教をくらった紅月だったが。
次に出る砂漠地帯の方が全員辛かった、一行は一旦ログアウトして涼しくなるであろう夜の出発を図る。
「お兄様!早く!。」
「はいはい、わかってるって。」
俺はルルカの言葉で少し急かされ、部屋に二つとある機械の片側の方へ入る。
「レナとウミさんは?。」
「もうとっくに。」
今回俺が遅刻したのは確かに良くなかったと思う。まさか新しいプラモデルの生放送PVにあれほど時間がかかるとは誰も予想しなかった、この俺でさえも。
「後で謝らないとなぁ。」
──【SAMONN】──
「よし!今日もやるかぁ〜。」
俺は右に左にストレッチしながら涼しい夜の中ログインする。続いてルルカも俺の隣でログインする。
「おー!、。」
「遅れてすみません、じゃあ今日は予定通り。近くのオアシスまでいきましょうか、」
俺は予定を確認するとともに点呼をかける様にウミとレナがいるであろう場所を向きながらそう言った、しかしそこには誰もいなかった。
「───あれ?二人は?」
俺はこの時驚いていた。二人を見ていったつもりだったのにも関わらず、その本人たちは影も形もなかったのだから、二人はどうしているのか?、なんでここにいないのか?という疑問が頭を巡った。その後に出てきた答えは
「ぁ〜、あの二人。もう近くのオアシスのところまで行ってるって。」
ルルカが目を泳がせて言った。そのいかにも何かを隠していたというよりかは、忘れていたものを思い出した態度といった方がいいだろうか、ともかくそんな態度に俺は考えで止まっていた予想が当たっていると確信した。
「──それ先進んでいるってことだよな。」
「う、うん。」
ルルカがなんだか歯切れの悪いふうに答えた。多分、
[来なかったら先に行ってるわよ!!]
っとメールが来ていたのだろう。画面を前にしているルルカは複雑な表情を浮かべている。
「まぁ、今回は俺が悪いし仕方ないこっちも後を追うか。」
「うん。」
俺とルルカはとりあえず中継地点である、二人が待つオアシスへ向けて歩き出した。道中、日中と同じくらいの変わり映えしない風景に退屈していたのでルルカと雑談することにした、
「なぁルルカ、この砂漠越えるまでどのくらいかかるんだ?。」
「え〜っと、レナがこの前教えてくれたんだかど、どうやら最低でもリアルタイムで、三日はかかるらしいよ、。」
「げっ!?、ちょっとそれゲーム的にどうなんだ?」
「まぁ、それも踏まえて神作って言われてるから、、。」
「、もうこれじゃあ一つの現実だな。」
「なんなら、自由度かなり高いからね〜。」
「それじゃあ、この夜空も現実をもとに作られてんのかな?。」
俺は上を見上げて、ルルカにそう言った。
「多分そうじゃないかな、このゲームのリアル度はそこらへんのVRMMOを超越してるから、。」
ルルカが何かを褒めるときはいつもテンションが上がっている、しかし今はまるで物事を冷静に分析しきった様な感じだ。いっときの感情や新しいものを見るときはことあるごとに褒めるものだが、。
「。ずいぶん気に入ってるんだな、このゲーム。」
「気に入ってる──。」
「?、どうした。」
ルルカの砂を踏む音が急に止まったので俺はルルカの方を振り返った、ルルカは上を見上げながら口を半開きにしている。
「うん、そうかもね。」
「?。」
「んー!やっぱりお兄ちゃんと一緒にいる時が一番楽しいなぁ〜、」
「そうか。」
ルルカの急な真面目顔から、いつもの様なテンションに戻った。この事実に若干の違和感を感じたが、それよりもルルカがいつも通りで良かったと俺は思っていた。
「でも、あんまり俺を乱暴に使うなよ。」
俺は手で首の後ろを軽く支えながら、ルルカに水を刺すように言った。
「ふふん、それは一生無理な話だよ。お兄ちゃんにはずっとそばにいてもらうもん。」
ルルカは少し喜びながら、体を前のめりにして俺に言った。
「そう言うと思ったよ、。」
俺はやれやれとした態度でルルカに言う。それに対してルルカは、少し微笑みながら、鼻で大きく息をした。
「そういえば、どうしてお兄ちゃんはあの時私の近くにいたの?。」
「あの時っていうと、初めて会った時か?。」
俺は上を見ながら、考えてる。しかしルルカには申し訳ないのだが、今はあまり鮮明に思い出せない、、肝心な時に色々思い出せないというのは本当に面倒だ。
「うん。」
「あ〜、どうだったけ?。普通に歩いて見つけたみたいな感じだった気がするんだけどなぁ。」
「、お兄ちゃんはいっつも忘れん坊なんだから、私がいないとなぁ〜んにもできない人だもんね、。」
ルルカが胸を張ってドヤ顔しながら言った。うんウザイ。
「そうだな、そうかもな。じゃあ先を急ぐぞ。」
「あ、待ってよぉ〜、、。」
ルルカは俺の後を追うようにまた歩み始める。ちゃんとついてきているか、少しだけ、顔を振り向かせてルルカを見る。
「えへへ、、。」
ルルカは俺の振り向いた顔に気づき、満面の笑みで返した。その反応に俺もフッっと少し眉ほ広げ、正面を向き歩き始める。
…。ヤベェ、いい感じに終わったけど喋る内容がねぇ、。
(う〜んどうしたものか、、。)
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。しりとりしない?」
「うぇ、まぁいいけど。」
ルルカの突然の切り出しに少し混乱したが、よくよく考えてみれば話って別に何か話題性がなくったっていいのだ、なんなら人との交流に話が絶対条件ではないのだからこうゆう遊びでもいいのだと、俺はそう感じた。そして自分のコミュニティー能力のなさに、若干落ち込んだ、。
──バスク砂漠・中継オアシスキャンプ──
「ふぅ〜、。寒いですねぇ〜。現実ほどではありませんが」
「、、。ウミさんって結構寒いのも暑いのも無理なタイプなんだ、。なんか鉄壁そうに見えるけど、。」
「そんな、人を鉄みたいに言わないでください、。私はこれでも立派なメイドです。」
ウミさんが体を震わせながら、答えてきた。先週の時同様なかなか覇気がない、それにしても毎度のこと思うのだが、ウミさんのこのメイドに対する執着はなんなのだろうか、。
聞いてみるのもいいか、。
「ねぇ、ウミさん?なんでそんなにメイドに執着してるの?」
「えっ、、。そうですねぇ〜…。多分なんですけど、メイドは私にとっての天職みたいなものだと思います。」
「て、天職?、」
「例えばですけど、紅月様にとってはプラモを作ることが生き甲斐であり天職だと私は思ってるのですが、それと同様に私もメイドを自分の天職だと思っています。」
「な、なるほど。」
これは私の理解力がおかしいのかウミさんの説明が難しいのか、。今の私には全く理解できない。だがとにかくウミさんにとってメイドは自分の人生を体現した職業なのはよくわかった。
「あのっ!もしかして、『永遠の採掘者』の、レナさんですか?!」
一人の赤髪の大きなリュックを子が私にしゃべりかけてきた、見た目的に、採掘者だろうか。にしても自分の二つ名、やっぱりちょっと小っ恥ずかしいな、。
「ええ、。」
「はわわわわぁ、ほ、本物、。はっ!さ、サインください。」
赤髪の子は自分のリュックについていたツルハシを取り出し、両手で丁寧に私の前に差し出した。
「えっと、この持ち手の部分でいいかしら?。」
私はそう言うと、ペンを取り出しキャップを外しペンを持った人差し指で場所をさし彼女に言った。
「あ、はい!、。」
「オーケー、あなたの名前は?。」
「え?、。」
「?、どうせ書くなら、あなたの名前も書いておこうと思って、。」
「あ、え。ありがとうございます!!。えっと、私はナズナと言います。」
「ナズナちゃんね、。」
私は少々書きにくかったがふたつな名前を書き入れることができた、自動翻訳でナズナちゃんがどこの国出身かわからないため、一応ローマ字で書いた。そして私はスペルが間違っていないことを祈りながら、ナズナちゃんにツルハシを渡した。
「わぁ!、ありがとうございます。」
ナズナちゃんは返された自分のツルハシに書いてある字を輝かせた目で、1〜2秒見た後私に向かって大きく礼をした。
私はそのまっすぐな意志と、スペルが間違っていなかったことに内心喜んだ。
「あのっ、つかぬことをお聞きしますが。れ、レナさんはどうしてここに?。」
「ん、私?、私、もとい私たちは今から錬鉱国へ向かう途中よ、。」
「私メイドのウミと言います、以後お見知り置きを。」
「あっっと、ナズナです。よろしくお願いしますウミさん。」
ウミさんの見事なメイド礼を真似するようにナズナちゃんは気弱い笑顔を見せながらもウミさんに一礼した。
「ナズナちゃんはどうしてここへ?、。」
「あ、え、私は、私も練鉱国へ、、。」
ナズナちゃんは少し照れながら、答えてくれた。可愛い。
「ならもうこのまま二人を置いて行っても、、。」
「ダメですよ、私たちが暑いのが嫌いという理由で、先に進んだのですから、。せめてお嬢様と紅月様は待たなくては、、。」
「いやそれはわかってるんだかけど、。」
「あの、もしよかったら、なんですが。わ、私もご一緒願えないでしょうか!!」
ナズナちゃんは大きく礼をした。その礼は見事に90度、直角になっている。正直そんなに綺麗な礼をされるとされているこっちがなんでかなんともいえない気持ちになってしまう。しかし私的にはもうちょっと、。そう。妹的な感じで接したい、正直一生共感したくないのだが紅月がルルカを可愛がる気持ちが多少分かった気がする。おっと、今はそんなこと考えている場合じゃなくて、答えなきゃ、。
「いいわよ、。」
「、やっぱりわたしなんかと…ええ!?いいんですか?」
「えぇ、でも待ってる間退屈じゃないの?」
「そ、そんなこと絶対ありません!、レナさんとなら一生話したいくらいです。」
「そう?、じゃあ待ってる間、、。お話ししましょうか、。」
「はっ、はい!!」
えへへ、ナズナちゃん可愛い。
(なんて思っているのでしょうね、レナ様。)
ウミさんは遠い目をしながらレナにその視線を向ける。
『topic』
バスク砂漠オアシスキャンプのすぐ離れには地下鉄道が通っている。らしい




