百三十四話「第三回公式大会《2》」
前回のあらすじ
ついに始まった第三回公式大会。大型モンスターであるグランドレッドドラゴンが、紅月とメルドの手によって倒される中、他のクランはモンスターを狩りつつ、プレイヤーも狩るという行為を行っていた。
メルドと紅月の戦いはなおも続いていた。両者の動きは素早く、手に持つ大剣は豪快に当たりの地形を通りすがりに破壊していく。
森林だったその場所はいつのまにかクレーターが形成されていた。
「速ぇけど!まだまだ私には追いつけねぇ!!」
「………速度負けしてるのはどちらだろうな!」
紅月はスラスターを巧みに使い、地面をホバーの用に移動しメルドの背後を取り続ける。対してメルドも凄まじい剣戟によって応戦。両者は一歩も引かない状態になり、ここに介入することはまさしく自殺行為であると賢いものは理解する。
だがバカは来る。
「弓連装射!!!」
『!』
2人の戦闘に突如として無数の矢が介入してくる。そしてあたりを囲うように現れる漁夫の利プレイヤー達。
「おいおい、モンスタースコアであってここはプレイヤースコアじゃねぇんだけどな!」
「…………。」
戦いを邪魔されたメルドはそう言い、紅月はあたりを見まわし敵の数をレーダーと目視のロックオン機能で補足する。
(大体、50人くらいいるな。)
「モンスタースコア?関係ないな。私たちは君たち上位プレイヤーが目障りなんだ。特に"鉄血の死神"にはうんざりしている。」
「あぁ?人の戦い邪魔してくだらねぇ御託並べるとか頭イカれてんのか?」
「ふふ、ただの竜殺しはすっこんでいてもらおう。」
「あぁん?!」
「鉄血の死神、まずお前はここで死んでもらう!!」
ビシッと1人のプレイヤーが紅月を指差す。そしてその瞬間、あたりにいたプレイヤー達はワイヤーのような鞭を紅月の機体に絡ませて拘束する。
「食らえ────360°雷電空間!!!!」
ダサい名前から繰り出されるは高電圧の電撃攻撃。オートマタの弱点属性である電気属性を利用した直接攻撃であった。その威力はたとえ全身に鎧を着込んだ戦士であっても丸焦げになるほど。
「はははは───怖かろう!!お前達の嫌いな電気属性だぞぉ、うぅん!!?」
とても得意げに煽りドヤ顔を決めるプレイヤーしかし、気付く普通なら誰しも根を上げるほどの攻撃であるのにも関わらず紅月が全く動いていないことに、痛がっている様子もなければ我慢している様子もない、まるでその攻撃自体が無意味であることを物語るかのようだった。
「………はぁ。」
紅月はため息を一つ入れ、全身に巻き付いている。ワイヤーひとまとめにして自分の元へと引っ張った。
「っうお──────!?!?」
[パパパパパパパリン!!]
プレイヤー達は一気に紅月の元へと引き寄せられ、同時にその大剣の大回転斬りによって一撃で葬られることとなった。残りのプレイヤー達はその光景に驚愕した。
「ま、まさか───そんなっ!」
「お、オートマタは電撃に弱いはず!!」
「悪いな。電撃は俺に効かないんだ。」
その一言を聞いたプレイヤー達はすぐさま逃げ出そうと、一歩足を引いた時だった。
「オラーーーーっ!!」
「なっはぁ?!!!」
[バリリン!!!!!!]
メルドが逃げるプレイヤー達をことごとく切り伏せ、確殺を決めた。
「ったく。人様の戦いに手ぇ出してんじゃねぇよ!!」
メルドがプレイヤー達を切ったのはそんなありきたりの理由だった。そしてあたりに伏兵がいないことを理解すると紅月とメルドは互いに歩み寄る。
「ふぅ。」
「よかったのか?俺を倒せるチャンスかも知れなかったんだぞ?」
「何がだよチャンスだよ、あんな奴らにやられるお前じゃないだろ。それに第一これは私とお前との戦いだ、他に邪魔されたぶっ飛ばすだけだ。」
(ぶった斬っていたがな。)
「はぁぁぁあ、あいつらが入ったせいで興醒めだ。ここは互いに本来の目的にでも戻ろうぜ。」
「あぁ、同じことを考えていた。じゃあまた会おうメルド。」
「……!──おう!!」
メルドと紅月は互いにモンスタースコアという本来の種目に戻っていき別れた。そしてそんな光景を実況席で眺めていたカイとMYY。
「いやー!これは友情ですねぇ!見ていてとても素晴らしいです!!MYY、感激しました!」
「こういうプレイヤー同士の絆も【SAMONN】のら醍醐味だよねぇ、うんうん。」
MYYの自然な感想とは裏腹にどこか達観した様子が出ているカイの発言にMYYはじーっと見つめた。
「……本当にそう思ってますぅ?」
「いや思ってるから!私そんなに胡散臭い?!」
「はい。」
「直球なレビューありがとーう!!よく言われるよ全く!!」
「それは、さておき!カイさんカイさん!!」
「なんだい?」
「さっきの見ました?紅月さんが敵の電撃攻撃を見事に無力化してました!あれはどういう技術だと思います?!」
「あー。あれね、そうだなぁ普通なら対電アイテムやスキルなんかを使うのがセオリーだけど、オートマタは種族に弱点がついてるからカバーできないんだよね。なのに大丈夫だったってことは………!」
「ご、ごくり、ことは?!!」
「うーん!わかんない!!」
「えー!」
「いやぁ!ほらかの名探偵ホームズも仮説だけの推理なんてしないらしいじゃん!私も流石に解説するならしっかりわかった上でがいいかなって!」
「いや、仮説でもいいから仕事してくださいよー!!」
2人は実況席と観客席を再び賑やかにする。そしてこちらは一方ルルカ、ウミ、レナ、エズ、シルギスの五人ことクランネイムズ。
[ガボン!]
「ふぅ、なんとか逃げ切れたノォ。」
エズが首を地面から出し、四方八方を警戒して敵がいないことを確認すると穴から出てくる。そして続けて4人を穴から引っ張り出して、外に出る。
謎のルルカ殺しクランからの追撃を逃れたネイムズは別の場所に出ていたのだ。
「えぇ、ですが逃げ切るために多くの時間を使いました。私たちも紅月様に負けず、しっかりモンスターを刈りませんと!」
「うむうむ、そうじゃな。あやつに苦労をかけると後でなんで文句言われるかわからん。」
「……ちょっと、なんで私の方見るのよ。」
エズはじーっと文句を真っ先に言われそうなレナの方を見ていた。
「いんやぁ、べつにぃ。」
「文句はともかく、同じクランとして面倒をかけないように立ち回ろう。」
「────それじゃあみんなでまとまりながら行こー!さっきみたいにPK狙ってくる人結構いそうだし!」
『オー!』
エズはミニチュア兵器とルルカの魔力探知のおかげでネイムズは円滑かつ、スムーズにモンスターの多い場所を見つけ、狩りに勤しんだ。
途中他のプレイヤーにちょっかいを出された際は、全体攻撃方法にどことなく乏しいシルギスとウミの2人が三人のボディーガードのような立ち回りを引き受けていた。
そして試合開始から30分が経過した頃。実況席では雑談が一区切りをして、新たなモンスターの予告をしている時だった。
「さて、皆様方頑張ってらっしゃるところで、本日2体目の大型モンスターです!」
「いえーい!」
「その名は────キングダムスライム!」
「キングじゃなくて?」
「それは別ゲーのやつです!それに、書いてあるでしょう!これは王国なんです!!キングと比べてキングダムスライムは格が違うんですよ、」
「ほほー、その心は?」
「なんとおーーー!文字通りスライムで作られた意志を持ったスライムの王国なのです!その大きさなんと2k㎡!!東京ドーム約42個分の大きさです!!」
「いや大きすぎでしょ。私も初めて見たよこんなモンス………これ大丈夫?サーバークラッシュしない?」
「大丈夫ですよ、【SAMONN】のスパコンを信じてください!」
「いや、確かに統括はスパコンだと思うけど、問題は描画とデータ量だと思うんだけど、まぁどうせ容量足りるから大丈夫か……。」
「そうですよー!神ゲーを信じてください!!」
「ていうかさ、こんなに大きくなかったよね?もしかして特殊個体?」
「はい、なぜならこちら大会用に調整された個体らしいです!普段は大体18㎡の小さな子供用トランポリンみたいな感じらしいのですが。」
「最近の子は怖いねぇ。。私の時代じゃ家庭用トランポリンなんてせいぜいシングルベッド二分の一くらいの大きさだったのに。」
「レジャー施設にはよくあるらしいですよ、巨大トランポリン。」
「まじかー!おじさんだけど今度行ってみようかなぁ………」
『topic』
大会の一種目は大体2時間くらいを予定している。




