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隠話「予期せぬ乱入」

前回のあらすじ


調子に乗ってレア素材を間違えてしまった他に使ってしまった紅月は苦肉の策としてレナに素材をもらえないかと交渉しに行く、しかしルフの手荒い接客を受けながらもなんとか本人へとこぎつける。だがレナもすでに素材を使ったばっかりであったため、アテは外れてしまった。そんなところをレナに捕まってしまい、彼女のイベントクエストへと連行されてしまうのだった。





 「おい、どこに向かってるんだ!?」


 「もうすぐ着くわよ、黙ってて!」


会話が成立していないことを実感しながらも、レナの言葉から俺は自分の下に広がる大地へと目を向ける。向かっている先を少し見てみると一個団体が止まって何かしている。


 (何して────うおっ!!)


急に傾いたレナに足を滑らせそうになるが、咄嗟に背部のパーツを掴んで体を止める。


 「捕まってなさいって言ったわよね!」


 「せめて曲がるならそう言え!」


少し言い争いをしながらレナは少しずつ着陸の体制へと変わって行く。そして正面を見てみれば先ほど真下にいた一個団体の姿がそこにはあった。どうやら目的地は彼ら彼女はらしい。


 「残念だけど、さっさと降りて。」


 「わかったよ……」


レナは低空飛行を始め、俺に自分で降りろと言ってくる。もちろんこのまま変形した際にえらいことになったら嫌なため、俺はスピードを調整しつつ、スラスターで脚部に負担をかけない方法でスムーズに着陸する。


俺が降りたことを確認したレナは身体を変形させ、人形へと変わる。そして無事着陸し目の前の一個団体の元へと駆けていく。俺もレナに連行されている身であるため、とりあえずで彼女の元へと向かった。


 「ごめんなさい、待たせたわ!」


 「いやいや、それで問題は解決した?」


 「えぇ、ばっちり。」


 「ふん、ただ貴方が進行を止めた分の落とし前はどこでつくんですか?」


 「こら、コストルクス……!」


 「そうね、回答としては今って言っておくは。」


 「ほう、今。ですか、」


 「えぇ、強力な助っ人を連れてきたってことで……チャラにできるわ、名前を聞けば貴方が文句を言わない程度には強いはずよ。そうよね、紅月。」


会話の矢が唐突に俺に放たれるが、俺はそれをキャッチする。会話の流れから察しはついていたが、俺はどうやら時間を奪った責任を直に取らされるようだ。


 「とても強いかはどうかと思うがな。」


 「紅月……!もしかして"鉄血の死神"の!?」


 「……その名で呼ばれてることの方が多いのは確かだな。」


あんまり好きな二つ名じゃないけどな。


 「ほう……」


 「本物か。」


 「なるほど、これは心強い。」


どうやら味方になった俺の評価は心強いらしい。敵になったら言わずもがな"鉄血の死神"っと呼ばれ畏怖されるんだろうけども。


 「そうか、君が"鉄血の死神"か。」


 「紅月って呼んでください。俺その名前あまり好きじゃないので。」


 「なるほど、それじゃあ紅月。今日はよろしく!」


リーダーらしき気持ちがいい男性の人と握手を交わすが、何がよろしくなのかわからないため俺はレナを見た。


 (後で説明するわ。)


 (今説明しろ。)


 「それじゃあ、行こうか!」


そんなアイコンタクトをしている間に一個団体は俺とレナを連れて歩き始める。目的地も何もかも不明な状態だが、歩きつつも周りの人たちの様子を軽く確認しレナへとさりげなく近づき、先ほどの問いの続きを聞く。


 「で、なんだこれ?」


 「イベントクエストよ。集団狩りって呼ばれているやつ、まぁ知らないだろうけど。」


 「悪かったな。で、具体的には?」


 「今から行くところに大型のモンスターがいるからそれを狩るってだけ。報酬はたんまり出るから、あんたが欲してるものもきっとあるわ。」


 「そうかよ。」


嫌な顔で誘われた俺だが、パルチドラが手に入るかもしれないとなれば、少し本腰を入れる。

だが他にもレナには聞きたいことがある。


 「ちなみにだが、レイドと違うのは?」


 「そうね……レイドは不規則性がすごく高いけど、こっちはイベント開催期間内なら挑めるって点かしら、パーティも整った人達が多いし、ほらさっきアンタと握手した人は、ここのリーダーで、クランのリーダーでもあるわ。」


 「クランなのか?」


 「正確にはクランと一般人が同席してるってところよ。みんな同じ電車に乗ってるって感じ。」


 「なるほどな。」


 「私はこれで10回目くらいになるから、負ける心配はしなくていいわよ。」


 「誰が負けるか。」


そうか、っと個人的に合点がいった。最近レナがクランを留守にすることが多かった理由はこれか。


 (ま、こいつが10回も行っているってことはそんなに難しくないんだろうな。それこそ、こんなに人数がいるなら、)


そう思い、俺は一個団体に続いて歩きつつ、知らない目的地へと足並みをそろえて行った。


 「失礼、少しいいかな?」


 「どうぞ?」


道中一人の優しそうな爺さんから声をかけられた。


 「私はコルストック。こう見えても魔工家でね。マジックアイテムには興味がつきないんだ。君の持っているそれは、前々から気になっていたんだがマジックアイテムの部類なのかい?」


 「あー……どうだろう、俺はその辺疎いんでわからないですけど。」


 「マジックアイテムは基本的に使用者が魔力を使わずに発動することができる。魔力がないオートマタならば、それが顕著に出るはずだと。」


 「………多分その様子からだと、これはマジックアイテムじゃないことになりますね。」


 「ほう。」


 「これはオートマタの専用兵装なので、普通の人がこれを使うとなると電力と魔力の両方が必要になります。それにこれは魔法を中に封じ込めてるわけじゃなく、物質同士を高圧にかけて圧縮して撃つので。」


 「なるほど、素材を打ち出しているということか。ならそっちの剣は?」


 「こっちは─────。」


その後目的地に着くまでコルストックと会話を弾ませた。マジックアイテム専門と口ではいっていたものの、こちらの原理をすぐに飲み込むほど職人気質であったため、久しぶりに変わった話をすることができた。


 「それでは…」


 「紅月、良かったの?」


 「なにが?」


コルストックと話を終えたところでレナが横から俺にそう聞いてきた。


 「アンタ結構ペラペラと喋っていたようだったけど?あんな調子じゃいつかパクられるんじゃない?」


 「仮にパクられたとしても許容範囲内だ。あんな原理面での話一つで、この武装の全容が予測できるわけじゃない。」


 「それもそうね。アンタが全部話したら、こっちの商売上がったりだからヒヤヒヤしたわ。」


 「お前もエズからの受け売りだろうに……。」


エズから技術を聞き出して自分で改良したことは賞賛できるが、元はといえば俺が確立した技術だ。


 「ついたぞー!!」


最前列からそのような声が聞こえるとともに列が止まった。目的地は山の洞窟への入り口、リーダーから軽く内容の説明を受けた後、俺たちは準備支度をして洞窟の中へと突入した。


洞窟は一本道となっており、その先には少し広いバトルフィールドが形成されている。中央にはモンスターの反応がある。それも巨大な。


 「紅月、いいことを教えてあげる。入った瞬間に、まずは身を隠しなさい。」


 「………。」


返事はしなかったがレナの言葉は確かに受け取った。これはスタンドプレイではなくチームプレイ、なら初心者の俺は大人しく周りの様子を伺いつつ動いていくのが先決だろう。



 バトルフィールドに到着すると、そこは刺々しい岩で形成された視界不良好の場所だった。レナの忠告通りまずはレーダーを頼りに中心にいる敵と距離をとった場所に身を潜める。周りの人達はまるで訓練された軍隊かのようにそれぞれ散らばり始める。

そして俺は下手をせず、そのままじっと周りの出方を伺った。


 [ドゴォォォォォォッン!!]


敵性反応が地点で爆発音が聞こえた、それと同時に風圧が壁にしていた岩へとあたる。そして周りの人たちが再び行動を開始する様子を見て、俺もスラスターに火を入れて戦闘へと参加する。



 (ファランクス・スコーピオン………か)


ファランクス・スコーピオン、以前ルルカにもらったモンスター辞典に載っていた大型のモンスターだ。複数のサソリが大きな本体に集まり盾のように膨れ上がったハサミで本体を守るように行動する。その様がファランクスを組んだ、スコーピオンなので、ファランクス・スコーピオン。安直だがこういう命名は個人的に嫌いではない、少なくとも"鉄血の死神"よりかはるかにマシだ。


 「火炎瓶を投げろ!」


号令を聞いたプレイヤーたちはこぞって、手に持っていた火炎瓶をファランクス・スコーピオンに投げ始める、すると大型のモンスターを覆い尽くすほどの大炎上が巻き起こる。

ファランクス・スコーピオンに通常攻撃や魔法攻撃はほとんで意味をなさないが、熱変動にはもちろん弱い。火がついた本体はある程度耐えられていても、無数に積み重なった手下のサソリたちはみるみるうちにボトボトと悲鳴を上げながら倒れていく。


 (時間の勝負だな。ここは洞窟の中、酸素がなくなった方が負けだ。)


その点オートマタは何の不自由なく活動できる、ならばこっちが頑張るしかないようだ。


 [バデュゥゥゥゥン!!]


一射目の後にすぐさまエネルギーパックを交換して二射目の準備をする。


 [バデュゥゥゥゥン]


効果は抜群、まぁそもそもビーム属性自体が特殊なせいで普通の相手なら真っ先に蒸発しているはずの兵装なんだが、しかし魔法にも物理にも体制があるファランクス・スコーピオンは本体に大きな抉れ風穴を作る態度で済んでいる、元が昆虫なためか耐久性も高い。


 「ちょっと!あんまり派手にやらないでよ、大技が飛んでくる可能性があるんだから!!」


 「ならその前に片付ける───!」


ビームマグナムを背部にしまい、ビームサーベルを二刀流で展開する。そして大炎上中の本体に向かってスラスターを全速で吹かす。ファランクス・スコーピオンは近づいてくるこちらに標的を向け、大きなハサミを振りかざす。だが高機動のこちらを捉えられるわけでもなく、避けつつビームサーベルでハサミを横切るような形で流れるように反撃、続けて、弱点であり大技を放つ尻尾へと向かい、変則的な動きで回し切る。


 (切断はできなかったが、痛めただろうな………!)


 「アンタ!突っ込みすぎよ!!」


 「なら少しは援護したらどうだ?」


 「っやってやろうじゃない!!」


レナはそういうと、俺を巻き込む量の弾幕をファランクス・スコーピオンに叩き込む。もちろん挑発した俺はそれらを全て避けながらファランクス・スコーピオンに攻撃を与え続ける。

そして近代兵器の猛攻を数分間味わい続けたファランクス・スコーピオンはあっという間に討伐された。


 「いやぁ、今回は助かったよ。」


 「結局我々の出番はなかったですけどね、何ですか全く。」


 「まぁ紅月が出た瞬間に勝ちは決まっていただろうからね。」


 「ほんとよ、この化け物」


 「おい、レナ最後のは全然褒め言葉になってないからな。」


最終的にイベントクエストは意外にあっけなく幕を閉じた。その後俺はお目当てであるパルチドラを手にいれ第三階公式大会に向けた装備の製作を無事完了させた。


そして第三回公式大会の時がきた。




『topic』


ビームマグナムは改良を重ねるごとに対物理対魔法耐性を逆に撃ち破るような威力へと発展進化している。

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