閑話「砂漠は暑い、現実は寒い。」
前回のあらすじ
説教された紅月は森を抜け、、砂漠に出た。とてつもない暑さにより、ルルカとウミが今にもダウンしそうな勢いだったのでログアウト、舞台は猛暑から極寒に変わる。
「──。寒っ。」
俺はあまりの寒さに目が覚めた、。そしてめちゃくちゃ冷えている顔面をとりあえず温めようと布団に突っ込んでいた手を自分の頬に当てる。自分の体温を通して暖かくなった手は自分に安心と行動力を与える…。
「よし、プラモつくろう。」
いつものルーティーンを始めようとまず上半身を起こす。しかし待っていたのは冷凍庫のように冷えた自室だった、俺はあまりの寒さに一瞬でプラモ魂は消失寸前になり、布団に潜った。
「氷河期でも始まったのか?」
いやほんと寒い、冗談じゃないくらい寒い。とんでもなく寒い、ルルカが早めにこたつを出したことを苦評していた頃の自分が正直憎たらしいくらいだ、。ルルカ、お前のお兄様は今年の冬を舐めていたよすまん。
「しかしこのままではいかん。」
俺はそう言い頭だけ布団の外に出しあたりを見回した。側から見たらコタツムリならぬフトンツムリ状態だろう、渋谷のハチ公前にでも出したら言い笑いの的になることだろう。しかしここは自室、誰もいない。俺のこの無様(?)な姿を笑うものは誰もいないのだ、、。
[シーン]
「さびしっ。」
俺は何をしているのだろうか、、。はぁ〜っと白くなった、ため息をつきながら子供染みている遊びをやめ、この冷えた部屋の打開策を考える。まずはフルアーマー装備ならぬ寒冷地仕様(完全冬服)を出さねば、、しかし装備があるクローゼットは今俺がこもっている布団から2〜3mくらい離れたところにある、、。さてどうするか、。
選択肢1:自分の体温の温かみで包まれた布団を離れこの世の終わりをそのまま寒さに変えたような室内を歩き装備をとる。
選択肢2:極力布団から出ないようにしながらクローゼットの中にある装備をとる。
選択肢3:面倒臭いが、布団ごと移動しクローゼットを開ける。
選択肢4:とてつもなく申し訳ないと思うのだが、人を呼ぶ(ナミさんとかルカとか鷹橋とか、、。)
「一番簡単なのは1だがこの暖かい布団を離れたくない、2はちょっと面倒臭いし、3はもっと面倒臭い4は時間と申し訳なさが半端ない、。うーんどうしたものか、、。」
側から見たら、くだらないことの一つかもしれない、しかしながら今の俺にとっては結構重要な問題だ、日本の冬の寒さはどう考えたっておかしいと思うのは俺だけだろうか、夏の時は早く冬になってくれぇ〜っと嘆いていた俺だが、今は早く春になってほしいと思う。不思議なものだ、インドア派の俺にとって冬は結構住みやすい環境なのだが…正直この部屋に暖房がないことを少々悔やんでいる。えっ?なぜつけないのかって?、理由は簡単面倒臭いし、その取り付ける時間でプラモデルが作れるからだ、。
「はぁ〜。」
俺は足で敷き布団の中を蹴り、掛け布団を頭からかぶりながら立ち上がる。そして布団の裾を掴み自分を覆う。
「こんなくだらないこと考えていても結局は自分で行くんだよなぁ〜、一人暮らしってさびしっ。」
そんなことを一人寂しく呟きながら、俺はクローゼットを開け、完全冬服を出そうと中を漁る。、、一人暮らしは慣れたきた方だが、やはり人手が欲しいことがある。いや違うな、これはルルカの家に泊まりすぎていることが十中八九理由だろう。次行くときはお世話にならないようにしなければ、、。にしても寒いな、、
「あ、あった。」
俺は少しボロくなった大きめの冬服を出した。
「う〜ん、ずいぶんくたびれてきたな、そろそろ替え時か?。」
俺は綻びを少しいじりながらそう呟いた。ここに引っ越してきて初めての冬に買ったんだっけ、確か寒さに耐えられなくて、、。
俺はリビングを見渡した、なんとも生活力が皆無な部屋だ、、あるのは布団とキッチン、それとちょっとした勉強机(ほぼ使っていない)それとテレビ、座布団くらいだ全くもって人をもてなす気がない内装、他は塗装部屋だったり、プラモ製作部屋、風呂、トイレ、。本当に全くないな、。そう思いながら俺はボロくなった冬服に裾を通した。
「。大学へ行く準備をするかぁ〜、。」
今日から金曜日まで平日だ、また頑張らなくては、、っと思ったがそもそも俺は頑張っている部類の人間なのか?っと思った。この前鷹橋に「お前はいいよなぁ〜勉強なんかしなくても、どうせ満点取れんだろぉ〜。」
っと言われたことを思い出したからだ、俺は別に勉強していない訳ではないのだが、、。
「今日は何作ろう、、。」
積みプラ置き場を1〜2秒ほど見た後、俺は支度を始める。とりあえず昼飯食おう、、。
──大学(帰り時間)──
「…。」
「おいっ!暁一緒に帰ろーぜ、って。どうしたぼーっとして?。」
机に肘をつき、手を顔に置きイカにもつまらなそうな顔をしているだろう俺に鷹橋は声をかけてきた。
「ん、なぁ〜んかつまらないなと思っていてな、、。」
「つまらないって、プラモは?」
「家帰ったら何作るか決めてある。から」
「、、。えっそれだけ?いつものお前ならここから1時間くらしゃべるところなのに、、。」
確かにそうだ、だがなんだか今日は気分が乗らない、。それと何か忘れているような感じが、、。
「。なんか忘れてる気がする、、。」
「なんかって、何よ?。」
「何か─、」
俺は足で椅子を後ろに少し引き、机に手を置いてだるそうに立ち上がる、実際なんか気だるい訳だが、、。
「話になってねぇ〜。」
「そうだなっと、いくか、。」
「おう。」
置いてあった自分の荷物をとり、鷹橋と共に扉に向かう。今日もなんことない1日だった。先週と同じ…思えば俺の世界は結構狭いものだ、大学に行って帰る、そしてプラモデルを作る。いつもこのローテーション、正直退屈だと思って、今度ルカも誘ってどっか行こうかと考えることもしばしば、、だが結局は予定が合わなかったり、計画している途中で面倒臭いと感じてしまい止めることが大半だ、俺は元々インドア派の人間ではなかった、だがいつの日か外に出ることが嫌になって、、やめたんだっけ、。
「〜んで、俺もやることにしたのよ、、。VRMMO、」
「、、ん?今何て??」
さっきから鷹橋がなんかしゃべってるなぁ〜程度でしか認識していなかったが、。聞き慣れた単語が出てきたな、、。っていうか、いつの間に学校の外出てた?!、考え事していたせいで話も状況も全く認識してなかったわ、、。
「親父が、貰い物をして〜、、。」
「そこじゃない。今、VRMMOやるって言ったよな、。」
「あぁ、その貰い物がハードと、でかい機器で、。いや〜金貯めて買おうと思っていたんだけど、手間省けたんだよなぁ〜。」
(そこに繋がるのかよ、、。)
にしてもさすが金持ち、、。なんでもありだな、。←適当に大会でたら手に入れた人。
「だから今度俺も仲間に入れてくれよ、、。」
「嫌だね、。」
「なんでや!?」
なんとなくッ!とは言えないので、、。
「今俺たちは砂漠を横断中なんで、とりあえず装備整えてからきてもらっていいですか?。」
「ソシャゲの古典的なやつやめい!!」
『
1「装備整えてからきてくださいねぇ〜。」
1がパーティを離脱しました。
』←古典的なやつ
「いや〜事実ですしお寿司、。」
「くそっ、腹立つぅ〜、、。」
鷹橋が怒りを抑えながら低い声で言った。、、ホントこいつ面白いな、、。
「ていうか、お前は装備整えているのかよ!?、この間始めたばっかりだろ?!」
「整えるために横断してるんだよ、熱々の砂漠を、。」
「。つまり整えてねぇーーっ!!ってことじゃねーか!ふざけんな!!」
(マジこいつ面白いな、見てて飽きねぇ〜。)
俺がそう思った途端鷹橋が俺の顔もじっと見始めた。
「お前今マジこいつ面白いな、見てて飽きねぇ〜、とか思ったな、。」
「なぜわかったし?!」
「図星じゃねぇーか!ふざけんなこの野郎!!」
鷹橋が怒りをあらわにして俺にむけてきた。
「落ち着け落ち着け、別にお前を笑い物にしようとしてる訳じゃねんだよ、、。」
「ぜってー笑い物にしようとしてるだろ!、口がにやけてんぞこの野郎!!」
あ、やべ顔に出てた、、。
「悪い悪い、明日モス奢るから許してくれ、、。」
「今おごれ!!、お前どうせ金持ってんだろ、、。」
「お前には言われたくないわ──はぁ〜、わかった奢るよ。」
俺は苦笑しながら言った。
「よぉ〜し!早速行くぞー!!お前全額しっかり奢れよぉ〜!!」
「俺を破産させないレベルで頼むぞ、。お前バイトマンなんだから」
「ん〜無理だね俺に奢る言ったお前が悪い、。」
「遠慮を知れ、遠慮を、、。」
その後俺の財布がピンチになったのは語るまでもないことだ、、。銀行(に金)がなければ破産するところだった。そんなこんなで俺は高橋と途中までだべりながら、帰宅。
──自宅──
「、、。ふぅ〜。」
俺は倒れ込むように敷き布団へダイブ、一見危険そうに見えるこの行為だが冬仕様の敷布団は結構厚みがあるため、このようになことができる、しかし夏の敷布団はそこまで厚くないのでダイブなんかしたらめちゃくちゃ痛い。←昔一回やったことがある。
(今日はやる気が起きない1日だった。どうしてだろうか──。そういえば毎年この時期はやる気が起きなくて困ったな、、。)
いつからこんな年単位の気落ちする日ができたのか、、。俺は今、20歳だが、昔のことがほとんど思い出せない、一番記憶が鮮明になっているのは、、。ルカと出会ってからだ、、。この記憶はよく思い出せる。きっとこの話をルカの前でしたら怒るんだろなぁ〜。
寝返りを打つように俺がそんなことを考えていた時、、。
『ヴゥーヴゥー。』
すぐ近くにあったスマホが電話の通知で鳴っていた。
「誰だ?」
そう呟き俺は下向きにしてあったスマホの画面を手で裏返し、画面に書かれたった名前を見た。
『母親』
「母さん?、なんでこんな時に、。」
俺は基本家族とは連絡を取らない人間だ、理由はめんどくさいもあるが、なんせ忙しい。(プラモ作りで)向こうもそれをわかってか、滅多に電話をしてこないていうか、連絡すらしてこない、いいとこ連絡してくるのはお盆の時くらいだろう。親不孝していると言われたことがあるが、金渡してるし問題ないだろ、っと言ってやったことがあったな、鷹橋に。とりあえずめんどくさいから出るか、、。
「もしもし母さん?。」
「もしもし?暁、元気?」
「元気なのは当たり前、どうしたんこんな時期に、。」
「あんたは昔から生意気だねぇ〜、誰に似たんだか、、。」
「母さんだろ、。」
正直母親はそんなに悪い人ではないのだが、、なんというか苦手だ。、昔から結構馬鹿みたいに明るい性格なのが原因に違いない、それと昔部屋の掃除という名目でプラモを破壊したことがあるからだ、、。よく言って豪快、悪く言ってうるさいっと言ったところだろう。
「で、なんで電話したかだろう?、暁あんた忘れていたでしょ、。」
母親の雰囲気が一気に変わり、なんだか悲しそうな声になった、レアだ、。
「何を、、?」
「今日、あの子の〜〜、、。」
(!っそうか、すっかり忘れていた、。)
俺はその言葉を聞いた瞬間、昔の記憶が蘇った。いい記憶、やな記憶様々だ、、にしてもこれはいけないな、かなり大事な記憶のはずなのに忘れてしまうとは、、。
「あんた、明日くらい帰ってk『悪い、』!。」
「悪い、母さん。まだ俺は帰れないよ、、。」
「、はぁ〜、わかった。父さんに伝えておくよ、暁はプラモを見せにこないって、。」
「頼む、、。」
俺は目を瞑り、腕を頭に置いて、しばらく黙った。スマホから聞こえる、向こう側の生活音が妙に大きく感じた。
「それじゃ、いつか、。」
「あぁ、いつか、、。」
『ピッ』
俺たち家族は電話を切る時、または別れるときに『いつか』っと言う、なんで言うのか昔母親に聞いたことがあるが教えてくれなかった。なので俺はなんとなくの理由で、『いつか』という言葉を使ってるんじゃないかと完結させた、。いつか、、またどこかで、、。
社会にはこういう意味がある。いけたら行くは『行かない』行こうと思っていたは『行こうと思っていない』全部天邪鬼だ、。だが俺が今さっき使っていたやつにも天邪鬼みたいな感じかと最初は思っていた。だがそれは違っていたと…。遅くなって気づいた、、。
「、、。プラモ作るか、。」
そう言い、俺はまた始める。毎年こんな感じだ、いや毎日こんな感じだ、だが一年でこの日、この、寒すぎる冬の日は俺の全てが寒くなる、、。
「何言ってんだか…。いや、思ってんだかが正しいか、、。」
『topic』
暁の父親はプラモデルが暁同様好きらしい。




