百十二話「始まりの終わりPHASE-1」
前回のあらすじ
氷寒国レマートルへ調査に向かっていたフライ(鷹橋)率いる聖調聖天天使部隊。本国へたどり着くあと一歩というところで彼らは予想だにしない光景を目にする。"悪魔"と表せるほどの巨大移動要塞が雪山から出現、もはや調査どころではないと考えたフライはケレムへと報告するため撤退することを決断。しかしその"悪魔"はフライへ部下を引き合いに交渉し始める、フライはそれを了承。部下達は上司であるケルストの元へと戻り、フライはそこで殿を務めることに。
だがそれも長くは持たず、フライは極黒閃光のエネルギー波と共に大陸外の大海へと撃ち飛ばされてしまう。
──???・時間不明──
「これが例のものだ。」
「これはご丁寧に、それにしても君はよく僕たちの計画に加担するものだよ。」
「………」
「君は今でも世界でとても著名な"死屍"の一人だと言うのに、これではプレイヤー達に滅多刺しにされても仕方ないよネ。」
「どうだっていいさ、俺が求めるものは一つだけだ。お前の、その狂った欲望と同じな。」
「ふふ、ははは。そうかい、それは良いことだ。にしても皮肉って言えば良いのかな、魔法国のバカ貴族の一人が偶然優秀な素材を持っていたなんて………。」
「………」
「その愚かさが、その醜さが、その血が自らを破滅に導いたことを身をもって教えてやる──ッ!」
──ゲレームMk ~Ⅱ・工場(紅月専用)──
教官としての役割がほぼほぼ終了していた俺は一人工場に籠りながら新たな装備開発へと動いていた。何気ない平和で、苦のない毎日のスタートに正直言って気分がいい。
(借金もなければ、金不足というわけでもない。おまけに制作費はエズの掛け持ちだし。)
自由気ままに新しいロマンを進めていけるってわけだ。
スペックだけを見れば今のAWで足りるは足りるのだが、最近酷使し過ぎてしまったせいかあちこちにガタがきていたので、しばらくメンテナンス及び改修期間を設けることにした。俺はその間使う用の装備を今何もない時期に作っている、長期的に使う予定がないので試験機ということになるだろうが、それでも遜色ないレベルに仕上げるつもりで取り掛かっている。
「よぉ、頼まれていたヤツを待ってきてやったぜ。」
「ありがとう、ファール。」
ファールは両脇に抱えた必要パーツを適当に机に適当にばらけ、こちらに向かってくる。
ファールは前回の一件でオムニカルツの技術担当として協力していた罪で確かに捕獲されたのだが、その技師としての能力の高さからエズとの交渉により特別にゲレームの技術者として働いてもらうことになったのだ。
だがあくまで観察期間も含むものであり、加えてゲレームの技術者達からの風当たりはそこそこ強くなる、のでエズの配慮によって今は俺の補佐技術者として働いてもらっている。実際プレイヤー同士というところからも、NPCと違い気負わずに話せるのは俺個人的にもかなり楽だったりするので、ありがたいと素直に思っている。
「で、これはどういった装備なんだ?」
「一応…設計図にも書いてあるが空中戦を想定した装備だ。」
俺は机に置いてあったタブレット端末を、示唆しファールに内容を見せる。
「空中戦ねぇ。HFMか……武装は聞いたことも見たこともねぇな。」
「そりゃあ今から作るからな。」
「なるほど、俺の技術もちゃっかり使ってるって感じだな。」
「不服か?」
「いやまさか。お前に使われてもいい技術で良かったと思ってるんだよ。」
得意そうに笑うファール。その顔は確かに本心だと受け取れる。
「アーマーとスラスターに関しての調整は任せとけ、そっちが本業だからな。」
「了解、それじゃあ俺はちょっと武装の方をいじってくる。」
ファールと軽く挨拶を交わしたあと、俺は試作途中の武装が立てられている机の方へと向かった。内部設計が未完成であるため配線が隣に置いてある大きなエネルギーバンクに繋がれている。
「さて、まずは基板から……」
と近くにあったレーザー接続機をその手に持った時だった。
『お兄様っ!お兄様聞こえるっ!?』
「うおっ、」
突然画面が目の前に現れてルルカの顔がその場に写る。突然のことであったため思わず道具を手放してしまったが電源が入っていなかったため、大事にはならなかった。そうそれこそ安全装置がないため落としでもすればそのまま机に切れ跡が残ってしまうこともため、ホッとため息が出る。
「──で、ルルカ一体どうしたんだ?かなり焦った様子だけど……」
「これを見て!」
ルルカは画面をちょこちょこいじり、こっちにその映像を送ってきた。ルルカの画面と置き換わるように目の前に映し出されるその映像に俺は心の底から驚いた。
「──なんだっ、これ…?!」
巨大な蜘蛛の形をした機械仕掛けの移動要塞。
大きくガシャンゴションと音を立てて動くその重々しい脚部は地表を踏み荒らし、後には何も残ってはいなかった。
ここまでみればただの大きな機械程度で済んだのであろう。だがその姿からくる不気味なイメージはどうにも中立とは判断しづらく、なんなら一眼見ただけで異性達と同じ悪性的異物感がすぐさま連想された。
「ただの、環境破壊兵器ってわけじゃないよな……!」
自分自身でも判断に困るこの兵器に俺はルルカに答えを求めるように聞く。
「もちろんだよ!それにこれもっ!」
ルルカは俺の意見を肯定しながら映像をまた切り替える。次の映像に映っていたのは誰かの配信映像であった、エンターテイメントらしく軽い口調、そして【SAMONN】が本来ゲームであることを思い出させてくれるような明るい演出。ここが現実だと、急にあたりまえ戻されたような感覚に陥るが別にそれは些細な問題だった。
その配信者の背後に映る先ほども見えた巨大機械要塞。現代的な言葉でまとめられたその配信者の口調を読み取るに、レイドボス的なその画面に映る巨大物の討伐を試みるらしい。
(…………)
だがそれが無謀であることは、配信のチャット欄が呟いていた。おそらく誰もがその姿を見て一瞬で理解したはずだ、今の俺と同じく生物的に絶対に勝てないと。そのコメントにはエンターテイメントを楽しむというよりかはただ注意喚起を呼びかける声だけが無数に流れていくだけだった。
要は楽しんでいるものなど一人もいなかったのだ。
しかしそれに対して配信者は余裕そうな言葉を並べる。まるで危機察知の歯車が完全に破壊されているような口調でその要塞のことを軽く罵る。それがトリガーとなったのか、次の瞬間画面の外で見切れていた機械要塞から黒い閃光が迸り、画面は真っ暗となり配信のコメント欄は目で追えない勢いで逃れていく。
「なんだ、これ?」
「わかんない、みんなはただのレイドボスとか何かの運営のイベントだとか言ってるけど……!」
「あぁ、どうにもそんなような気がしない!」
ルルカは俺が理解してくれたことに真剣に頷き、一呼吸置いてからこう口にする。
「それで、そのお兄様はどうしたらいいと思う?」
「………」
ルルカの言葉に対して、すぐには答えることができなかった。口で言うのはもっぱら簡単だが、如何せん情報が不足し過ぎている以上、対策も分析も作戦も評価も、何もかもがつけることができないのだ。そして下手な情報でルルカをもしもの危険に晒すわけにはいかない。
「とりあえず様子を見たい感じだ、でもルルカ……焦る理由があるんだな?」
「あっ、そうだった!なんで言い忘れてたんだろ!!」
そう言ってルルカは画面をまたいじり始める。
「この大きいの、動いてるでしょ……それで攻略班がどこに向かって歩いているか、方角から計算してみたんだって!」
ルルカの丁寧な説明とともに、画面に簡単な大陸図と赤い点で記された目標そして経路図が描かれていた。点からまっすぐ直線に伸びる場所、方角を見ていくとひとつの大国に当たることがすぐにわかった。
「それで、向かっている場所が!」
「魔法国かっ!」
あんまりいい思い出がない場所だが。今ではそんなことよりも驚きと思考に気を取られていた、それとルルカが話す言葉たちに。
「魔法国を通り過ぎた後の方角には基本的に何もないから、多分高確率でここに向かってるんじゃないかって!」
「………。」
あの大型要塞の危険性はさっきの犠牲になった配信者の行動で判明済みだ。それこそ武装を積んでいようがいなかろうが、体当たり程度で国落としだって容易にできる。まさに対国決戦兵器と形容しても差し支えないほどに。そしてこれらを紹介し終えたルルカがいう言葉は一つ。
「私は……正直、お兄様とかエズとかに厳しい国なんか好きじゃないけど、それはそれとして……こんな変なのにみすみす壊されるのは間違ってるって思うよ!」
「つまり、魔法国を守るってことだな。」
「………うん、」
俺の言葉に勢いを失うようにルルカは、言葉を一旦止める。おそらく俺が協力しないと考えているのだろう、まぁ実際にそのつもりだ、向こうは俺に間接的であろうが直接的であろうが、危害を加えてきた。ならば助ける義理なんかは一つもない。
(だが、)
そんな単純な恨みとかの感情でどうにかなるんだったら俺は間違いなく、連中と同じになってしまう。嫌いだからどうするとか、そういう減らず口を吐いていいのはいつだってバカで自分勝手な連中だけだ。俺はそうならないために常に"そうなって"きたんだ。ならば、
「ルルカは、助けたいって思うんだな?」
「───うん!」
返事は早かった。もはや俺がどうこう言おうと一人で勝手にいくつもりだったのだろう。正直命知らずがすぎると言いたくなるが、今は言っている場合じゃない。それに兄バカもここまでだ。
「なら、俺が協力しない理由はないな。」
「えっ!でもいいの、お兄様は───」
「妹を勝手にする兄がいると思うな。ルルカが何かをやるなら俺はなんだって協力するさ、」
「───!。ありがとう、お兄様っ!!」
ルルカは嬉しそうに画面の向こうで満足そうに笑顔になる。
「それじゃあ、何か進展とかがあったら連絡してくれ……俺も何か対策を考えとく。」
「うん!わかった。」
そう言いきっぱりとルルカは通信画面を閉じた。なんだか妹が遠ざかっていくような気がしたが、状況が状況だ、我慢しなければ。とりあえずまずは軽い情報収集から始めなければいけないことは確かだ、ここはプレイヤーらしくあの移動要塞(仮)をインターネット(現実)の力によって収集しなければ。
「よぉう、盗み疑義するつもりはなかったんだが。どうやら外は大変なことになってるらしいな」
ファールが用を終えた俺にすかさずそう告げてきた。同情というよりも、本人も密かに焦っている様子が密かに伝わってくる。
「あぁ、まずは情報収集から始めないといけないな。」
「だな、俺も聞きながら少しは調べてみたんだが。」
っと言いながら、彼が調べたであろう内容をメッセージ機能を通して、画面を共有してくれる。
「どうやらこの速度的に、到着は4日後らしいぞ。」
「4日ッ!?」
突然の情報で素で驚いてしまう。だが、なんで時間の概念を忘れていたんだと正直自分を叱責したくなるような気持ちの方が今は格段に大きい。
「まぁ、気持ちはわかるぜ。つまりどっちにしたって時間がないってことだな、こういう時の対処方法は────」
「文字通り、レイドで速戦即決ってことだな。」
一人一人が突っ込んでどうにかなる相手ではないのなら、総力戦を仕掛けるのが現在の最善の手。
ゆったりとしている時間はない。とりあえずエズに報告してなんとか軍の力を使えないかどうか交渉しにいくところから始めるのが今の俺にすべきことなのだろう。そうと決まれば今すぐいかなくて、っと思った時。
「そういうことだ。じゃ、エズへの報告は任せろ。」
とファールは肩を少し叩き、いつもと変わらない表情で出入り口へと向かう。まるで俺には他の役割があるかのような言い回しだったが全く見当がつかない。ので
「ちょっと待て、俺は?」
何を思ったのか、俺は何をすればいいのかという意味でその場を去ろうとするファールを引き止めるように問いかける。すると、彼はさも当然のような顔をして
「──決まってんだろ。」
っと一言だけ告げて、その場を後にしていった。わけがわからないような返し方をされたと一瞬誤解する、しかしそれはすぐにわかった。彼が俺に向けて言った言葉はたった一言だけであったが、それなりに彼の心情を察することができた。入り口とは正反対に位置して俺の背後に広がる"それ"こそが答えだった。
「HFM…………。」
ファールは理解していたんだろう。俺が活躍できる場所というのは常に司令塔ではなく戦場だということ、そしてそんな俺に装備がないとくれば答えは一つだけ。そう自分の装備を作る、それが今の俺の真っ先にすべきことなのだということ。
「……!」
俺は急いでスケジュールを調整し始め、同時に装備を製作に取り掛かる。今まで組んでいたパーツを最短でそして最善のモノへと仕上げるために、自分の持てる能力をフル活用させ順番通りに進めていく。
(まずは基板、次にモジュール、次は出力テスト、正直試し撃ちはできないかもしれないが……)
なんとしても4日以内に完成させる。あの巨大移動要塞を確実に仕留めるための装備を、そして真っ向から対抗できるような装備を、ルルカに完璧な勝利を捧げられる今俺ができる最大の力を。
──最初の町サイモン・冒険者ギルド──
「ギルマス、お兄様に話してきたよ。」
扉を開け、ウミとギルマスがいる会議室の部屋を開ける。雰囲気は私が出て行った頃と何にも変わってない、ピリついた感じが空気を刺激し続けていた。
「ありがとう。魔女様、」
「それで、今の話の続きなのですが──」
ウミは話し始める。ただ難しい話なのは少し承知だから、今までの経緯を思い返すことにする。
私はいつもと何気ない日常を送るために【SAMONN】にログイン、お兄様が戻ってくるまではいつも通り新しいコンテンツから朝のニュース、そしてウミが用意してくれる朝食をゲームでも食べていた。でも突然アラートのような速報が入りニュース欄一面に大きな機械仕掛けのモンスターが表示されて事情を知った。
そのモンスターには名前がなかったけど、明らかなオーバーすぎる地形破壊、そしてゲームの中だとしても離れすぎた運営の配慮(配慮なんてものないけどね。)それらを加味した結果。今回のは異性と同じ分類に入るんじゃないかって話になって、私とウミはギルマスの元へ訪れた。
「──お嬢様、聞いていましたか?」
「え、あぁごめん聞いてなかった……」
あははっと言いながら誤魔化し気味に言うけれど、ウミはいつもより余裕が少しないのか目を閉じ鼻からため息を吐く。
「今、A以上の冒険者メンバーを緊急招集している。目標が魔法国に向かっていることはすでに共有済み、となると冒険者ギルドとしては前線をはり、総力戦で進軍を阻止するのが今回の役割ってことになった。」
「…そして、私たちはその援護をとのことです。」
「なるほどね、わかった!私に任せておいてよ。」
私は胸を張り、至って真面目な二人の空気感を和ませようと堂々と少し大袈裟に言った。
実際それは聞いたようで二人とも私の言葉を聞いた後は落ち着いたようにな表情をしてくれた
「魔女様がいるなら、問題なしだな。」
「はい、ですが油断はできません。私たちプレイヤーがこの【SAMONN】を始めて以降2回目に当たるほどの大規模戦闘になりそうですから。」
「………"サイモン侵略戦"以降ってことになるか、」
サイモン侵略戦。ゲームリリースが始まって間もない頃、突如として現れたレギオンが町を襲った。軍団を冠するその名の通りプレイヤーはリリース当初のこともあってかこのレギオン相手に大苦戦、被害は町の半分以上を壊滅状態にさせるほどだった。
当時私もまだ初心者だったけどあの光景は今でも脳裏に浮かぶ。血の匂い、やまない炎、倒される味方、壊される平和の風景。どれも、どれもが2度と見たくないと拒絶したくなるほどの地獄絵図。
(その時からだったけ、たとえゲームでもこの世界を守ろうって思い始めたのは──)
話を戻して。そこから、レギオン…及びそれに準ずる正体不明の無差別破壊活動を指す標識として異性という言葉が広まるようになった。
そして以後、異性はプレイヤー達と切っても切れない縁にあるようにその姿を度々現し、蹂躙していくようになった。
(まぁ、正確にはそれも数回あったんだけど。どれも"サイモン侵略戦"レベルの大戦争レベルではなかったから、)
あまり目立っていないということ。
「今思えば、あの時なんで勝ったかわからなかったなぁ。」
ギルマスが頭をかきながら、渋そうな顔をそう言った。
「ですね、まぁこの立て直し速度も十分異常でしたけど。」
1ヶ月経てば元通りになっている街に本当に驚かされた人は多いはず、私も現にその一人だったし。
「……みんなここが好きなんだよ、きっと。」
「そうですね。」
私とウミがそのような会話をしていると、ギルマスも元の顔つきに戻り本格的な雰囲気を醸し出し始める。
「一応、この後魔法国、聖帝国、鍛造国、氷寒国、練鉱国とかの代表とかにも取り合ってみる。そっちも腕が立つ奴がいたら協力を要請してくれ、」
「わかりました。」
ギルマスは椅子から立ち上がり、そう言いながら部屋を後にした。部屋に残された私たちは互いに目を見合わせる、
「お嬢様?」
先にこちらの違和感に気づいたのはウミ、どことなく心配そうに不思議そうにそう質問した。
「うぅん。なんだかさ、今回のあのその……大規模な戦いってなんか変じゃない?」
「変、ですか?」
「うん。なんかさもっとこう異性とかそう言うのじゃない気がするの。戦争みたいにさ人と人との戦いっていう感じが。」
「────。お嬢様、もしそのような感覚があるのでしたら……忘れないでください。きっとただの思い違いだと思うかもしれませんが、私はあなたをいつでも信じています。だから、お嬢様の今の言葉をしっかり頭の中に留めておきます。」
「…ありがとうウミ。うん、でもたとえそうだったとしても私、頑張るよ!お兄様にかっこいいところ見せるために!!」
「はい、見せてあげましょう!!」
ウミと互いに激励しあった後、私たちもギルマスに言われた通り自分たちの行動を開始した。
いろんな知り合いに声をかけて今回の総力戦についての説明から、お願いまで、自分の二つ名が役立つ時が来るのならいくらでも使ってやるという覚悟でその日費やした。
──北東地方・魔法国前哨基地──
自国が標的だということを知った魔法国の行動は早く、プレイヤーが巨大要塞に感じての情報を知るときにはすでに進行ルート上に様々な拠点を配置して防衛体制を整えていた。
魔法国は軍事出来な面でとても優れており、過半数のプレイヤーがこれらの防衛攻撃によって防ぎ切れると確信していた。
結果は惨敗だった。
「そんな、我が魔法国の精鋭が…っ」
魔法国の魔法師団は数ある部隊の一つであるがその戦闘力はこの【SAMONN】においてはそれなりの実力を誇っていた。だがそれらが築いた基地も砦もそして人さえもその巨大な"悪魔"は全てくらい尽くしていく、
その"悪魔"が悪魔たらしめるのは、その圧倒的な質量、超兵器、そして無限とも言える軍団であった。
寄生生物のように死体、もしくは生物に取り憑いたその変異体は個体の自由を乗っ取り"悪魔"の手下として再活動を始めるようになる。そして本体自体にも強力な装甲、そして敵を一瞬にして葬り去るほどの高火力兵装が多数搭載、中でも極め付けは魔素を完全に分解し切る兵器、いわゆる極黒閃光と呼ばれるもの。
これらの圧倒的な能力によって戦闘群を形成し切った"悪魔"は楽観視していたプレイヤー、そしてこれから戦前に備えていたプレイヤー達を軽く絶望させるには十分であった。
「バアル・ゼブブ。」
部下を失った聖調聖天の長はそう口にする。
その蟲の王の名を、その絶対的な蝗害の悪魔の名を。
『topic』
"サイモン侵略戦"においてルルカは初心者でありながら高い功績を残し、ゼロです100キル以上の成果を上げたことにより、"全知の魔女"という異名がつけられるようになり、広まった。




