九十九話「チーム的教官」
前回のあらすじ
エズの説教を終えた紅月は再ログインをし、どこかへ行ったエズを探す。道中アンジュに再開した紅月は彼女の話を聞きながら、エズのいる工場へと向かう。
慌ただしい工場の中エズを引っ張り出し、依頼内容を聞いた紅月は驚く。それはアンジュさんが話していた教官の役目を自分がやることとなったからだ、断る理由がない紅月は色々考えながらもエズの依頼を受けることになり………
依頼を受けた俺はエズから2つの紙を渡されて工場を後にした。一つ目には軍事宿舎への行き方。二つ目の紙にはエズ承認の印鑑が押された依頼書。後半はレシートみたいなものか?っと思いながら俺は新しいエリアに入って行った。
顔が割れている門番さんが出迎えてくれたため、特に複雑な形式を取らず簡単に軍施設へ入ることができた。こう考えるとエズが言っていた自分に対する名声を改めて実感することができる。
(いい気分かどうかはさておき……)
ゲレームMk ~Ⅱの一角にある軍施設の第一印象は近代化された軍事基地という、そのまんまの印象だった。そもそもゲレームMk ~Ⅱ内自体のセキュリティが強固のためか大きな壁と門番が1人程度とそこまで厳重さを感じることはできない。おかげで入りやすかったものの、イメージしていた堅苦しい印象を抱くことにはつながらなかった。
国の規模という関係もあってか、この軍施設もどことなく小さいような気がした。そう感じたのははるかに短い移動で目的地の軍事宿舎にたどり着くことができたからだろう。
(えーっと、105……105。)
見た目が全て同じな宿舎はさながら小規模の集合住宅のようだった。だがアパートのような印象とは違うコテージのような物がいくつも建てられており、そこから外見的違いを探すとなればそれはもちろん、壁に書かれた部隊番号だろう。
アンジュさんの言葉では部隊ごとに訓練教官が着くみたいなニュアンスで話していたが、俺はその中で当たりを引いたらしい。紙に書いてある105 特殊機動部隊着任証がその証拠だ。
(逆に他は誰が担当するのか気になるところではあるが………今考えることじゃないか。)
何部隊いて何人の教官がつくかはそれはまぁある種の機密事項だし、今回の依頼でもしかしたら知ることができる内容の一つ程度だ。それこそ進んで知るとなるとエズに揚げ足とられる可能性だってあるわけで………あくまで俺がここに依頼できているという現実を再認識させられる。
──ゲレームMk ~Ⅱ・軍事施設内軍事宿舎・第105特殊機動部隊──
大雑把に渡された案内図でも意外にたどり着くことができるものだ。規模が小さかったことも俺が迷わなかった理由の大きな一つかもしれない、
(せめて案内図は欲しいって思うんだけどなコレ。)
不満を心に宿しながら宿舎の入り口へと近づく。
(アンジュさんのような知っている人が出てくれることを期待しよう。)
いきなりで知らない奴が尋ねてきたらそれはそれで、なんか向こうも怖いだろうし、なんなら俺が一番怖い。軍の教官なんて仕事今の今までやったこともやろうとしたこともないのだから。出会って1秒で銃を構えられでもしてみろ、それは俺が今まで体験してきたケースの中で最悪の初対面となる……なぜそんな思考になるかといえば、俺の中の一般教養として軍の人がアホみたいに堅苦しいってイメージがあるからだ。ただそれだけと言ったらそれだけだ、いつも落ち着いている俺らしくない変な焦りでもある、しかしここは覚悟を決めて。
「…………」
[キンコーン]
チャイムがあってよかった。っと安堵するが次に誰が出てくるかわからない、ファーストコンタクトにふさわしく、なおかつ一瞬で不審者と判断されないような文面を作らなければ。
[ガチャ────キィ]
「あ、あの。」
「………?」
ドアが少しだけ開き、蚊の鳴くような声で扉の向こう側からこっちに話しかけてくる人がいる。まぁ開いている隙間が隙間なので全く顔が見えないんだが、
「なんのご用でしょうか。」
「あ、えっと………もしかして105特殊機動部隊の人だよね?」
「は、はい。」
初対面の人と話す時のコツ。まずは互いの所属をはっきりさせる、こうすることによって話の立場で対等さをアピールしつつ私があなたを知っている、あなたが私を知っているという形を作る。相手が感じているであろう疑問を理解しつつ、一つ一つ解いていきながら話を進めることが、初対面の人との会話で何よりも重要になる。
「あの、俺は………本日から第105特殊機動部隊の訓練教官に任命された者なんだ。」
「そ、そうですか。」
(なんだか知らなさそうな感じだ。)「信じてもらえないなら、コレを。」
ドアの隙間からエズからもらった依頼書の紙を半分くらい差し込む。扉の向こう側から引っ張るような感触を覚えたので離すと、紙は扉の向こう側に吸われていった。
「………………」
「…………………」
沈黙が続く。向こう側で紙を動かす音が聞こえているということは少なからず、確認作業をしているということがわかるが、それでもこの何もできない時間はどこかもどかしさを感じる。
(まぁでも、後ろから切りつけられるみたいな展開にはならなさそうだし………ていうかそんなふうになったらふざけんなって文句が出て──────っ!)
今の今まで表示されなかったレーダーに映る俺の背後にいる人、そして確かに聞こえてくる武装の解放音は俺に回避行動の選択肢を与えた。
背後から振り下ろされる大斧を間一髪で避ける。
「っ?!」
「───ハズレた!」
追撃と呼ばんばかり早い判断能力を持つ相手は大斧の方向を瞬時に転換させ、自身の回転を織り交ぜた一撃を俺に叩きつけようとする。混乱していた俺は回避するという選択肢よりも、防御を選び、大斧の一撃を両腕部のビームシールドで間一髪のところ受けきる。
「───くっ!!」
「……ビームシールドっ?!」
相手の驚いた顔、それによって生じた隙を利用して緩まった大斧の圧力を弾き返しながら、大きく後退する。
(ビームシールドを知っている……!)
その事実に驚きつつあるが今はそれを気にしている場合ではないと瞬時に頭を切り替えて。目の前のオートマタに話しかける
「……っおい、いきなり何するんだ!」
「──こっちのセリフだッ、私たちの宿舎の前でコソコソしやがって……お前不審者だろっ!!」
「………はぁっ?!」
じゃ不審者だったら背後からそんな殺意マシマシの大斧で切りつけていいのかよ?!っと思ったがおそらくそんなこと言えば火に油だ、初対面なのにいきなり不審者だと決めつけて切り掛かってくる奴なら尚更。
「………お、いや君っ!もしかして105特殊機動部隊の所属か?」
「そうだったらなんだよ!!」
「俺は依頼で君たちの部隊に用がある者だ、だから武器をッ───」
「オラアあああぁぁぁ!!」
そう口に出してみるが、次の瞬間には先ほどと同じように大斧が俺めがけて振り下ろされる。最小限の動きで回避しつつ相手の戦闘本能に火をつけないように繰り返し振り下ろされる斧を回避する。
「───っ、せめて話くらい!」
「……証拠があれば話は聞く──!」
「それは────ッ今、あの扉の向こうに。」
「嘘つけッ!!」
大振りから繰り出される一撃を再び両腕部のビームシールドで受ける。バチバチと音を鳴らしながら、一方的な圧力をスペックで拮抗状態に持ち込む。
「やっぱりお前は───不審者なんだろ!!」
「────ッ………!」
──同刻・ゲレームMk ~Ⅱ・軍施設入り口──
「ハァ、ハァ、ハァ!」
報告を聞いた私は一目散に105宿舎へと向かう。戦闘了承区域でもないのに、うちの部隊の誰かが戦闘を起こしているという知らせを受けたからだ。
あーもう、絶対あの子だ。っという確信が私の中にはあった、思いっきりがいいとか、色々な利点はすぐさま浮かんできたり部隊内でも私たちのことを毎回すごく気にかけてくれる、それはいいけど……猪突猛進なスタイルは前々からどうにかしたいとは考えていた。
実例を挙げるとキリがないし頭も少し痛くなるから、さておき、流石に今回のは擁護のしようがない……今日はせっかく紅月さんと会えていい1日が始まると思っていたのにこれだ。
(でも、部隊長を任されている以上は私がなんとかしないと……!)
なんて始末書を書こうかと頭の中で考えるながら私は現場に到着した。
──同刻同所──
「────いい加減、落ちろっ!!」
「……………くっ。」
こちらからは手を出さないように立ち回るのは意外と骨が折れる。もういっそのこと1蹴り入れてもいいだろうかと思ってしまう。しかしそれでは根本的な解決策にはならない、何かもっといい方法が……
「──────フォズ………やめなさい!!」
「……隊長ッ?!」
声を呼ばれた目の前のオートマタは武器を適当に振り払い、大きく後退する。俺も少し後退しながら名前を呼んで止めた人の方向に目をやる。
「アンジュ……!」
アンジュが今まで見たことのないほどの真剣な表情でこちらに近づいてくる。しかしその目線は俺に向けられたものではない、どちらかと言えば先ほどまで俺に攻撃を仕掛けていたフォズと呼ばれるオートマタにだ。
「コレはどういうこと…?なんで、戦闘了承区域外でこんなことをはじめたの!」
「アンジュ……聞いて!、あそこにいる不審者がッ」
「それはあなたの主観で決めつけたこと?、それとも確たる証拠の元で独自に実行したこと………どちらにしても私たちにそんな権限はない。」
「────っでも!」
「でももない、話は後で聞きます。それと私がよしというまで発言を停止します。それが勝手に違反行為をしたあなたの罰よ。」
「───────わかり、ました。」
アンジュさんがフォズというオートマタに対してコレでもかと責め立てる。今までの彼女からは想像がつかないほどの姿だ、コレが部隊長としての力ということかっと冷静にみる。
「………ごめんなさい、紅月さん。」
俺の方へ近づいてきた彼女がそう口に出し頭を下げる。
「いやいや、まぁ驚いた驚いたけど。まず止めてくれてありがとう。」
「………そのお手数おかけしますが、お話を聞かせてもらってもいいでしょうか。」
「もちろん。それで誤解が解けるなら、」
俺は先ほどまでの一連の流れに関してアンジュさんへ説明した。彼女は首を縦に振りながら俺の話をなんの文句も言わず聞いてくれたが、後ろフォズとやらはどうにも腑に落ちないような様子であった。
「改めて、申し訳ありません紅月さん。状況はわかったので、少し待ってていただけますか?」
「あぁ。」
アンジュさんは状況の全てを飲み込んで、尚且つ理解したようで宿舎の方へと向かっていった。鍵を使い扉を開けて彼女は宿舎の中へと消えていった。
その間、フォズからのすごい視線に俺はあんまり心が休まらなかった。まるで狂犬の威嚇だ、だが今ここで俺が口を出しても何も良くならないので黙るが吉だ。
しばらくするとアンジュさんが宿舎から出てきてこちらに走ってきた。手には一枚の紙を持っている、遠目であったが間違いなく俺が宿舎の奥にいる誰かに吸われた紙と同じものであった。
「ありました。エズ様からの直々の了承が下りた依頼書。"紅月、以上の該当者はこの依頼者の発行日から数日、ゲレーム防衛軍第105特殊機動部隊の訓練教官として責務を全うすること、及び部隊責任を一任すること。"っと書いてあります………………コレで文句はないでしょ、フォズ。」
「…………っ、」
アンジュさんの丁寧な読み上げに対してフォズは驚いた顔をしながら俺にそっぽを向く。まぁそう納得するほどの性格じゃないよなっと思う。
「ゲレーム防衛軍所属、第105特殊機動部隊部隊長がこれを了承します。初日から頭が上がらないことだらけで申し訳ありませんが、本日からよろしくお願いします、教官。」
「…………こちらこそ、足りないことがあるかもしれないがよろしく頼む、アンジュ部隊長。」
「はい…!」
俺たちは互いに敬礼をしあいながら、軍交辞令
を交わす。なんだか少し気まずい雰囲気が流れそうな予感がしたので、敬礼を下げ次第現状確認すべき足りない情報を埋める命令をアンジュさんへすることにする。
「それではアンジュ部隊長、ここにいない部隊員全員に俺が教官になったことの報告、共有、そして招集命令を……場所は宿舎を使わせてもらっても構わないか?」
「はい……問題ありません、直ち。そして差し支えなければ提案がございます。」
「発言を許可する。」
「……フォズ部隊員を私との同行に当ててもらえないでしょうか。部隊長として、今回の件について彼女の認識を改めさせる必要があると、進言いたします。」
「わかった、許可する。ただしあまり言い過ぎないように………それと、話し方は今まで通りでいい、俺はあまり堅苦しいのが好きじゃないから。」
「……わかりました。それでは紅月教官さん、また宿舎で。」
なんか色々混じってた気がするけど。っという感想を心に抱く頃にはアンジュさんはフォズを引っ張りながらどこかへ向かっていった。命令だおりここにはいない部隊員を集めに行ったのだろう。
「なら、宿舎にいるか俺は。」
再び宿舎の扉の前に立ち止まる、今度は何か吸われないといいけどなっと思いながら扉をノックする。
[コンコン────ガチャ……]
「お、お待ちしておりました教官。アンジュ部隊長から報告は受けています、どうぞ……」
先ほど扉から姿形さえも見えなかった。部隊員の1人が俺の前で姿を現した、先ほどの声からも印象を受けていたのだが、すごく気弱そうだ。
(やっぱり中にも部隊員がいるよな……じゃなきゃ紙は吸われないし。)「失礼する」
その子に案内されながら俺は宿舎の中へと入っていく。内装に関しては、まぁこの宿舎にこの内装ありと行った感じのスタンダードな感じだった…ところどころで花やら写真立てやらなんならが飾られているところを見るになぜだか女性らしさを感じる、そういえば今まで会ってきた隊員がこの子も含めて全員女性型だったが、まさか……な。
「あの、適当にかけていてください。」
「じゃあ、ここに。」
一番広いソファーと対照的になるような小さい椅子に俺は腰掛ける。うーん、今更ながら思ったのだがここは上司が来るような場所じゃないな、なぜだかいうとコレ普通に応接間がないタイプの家だ。
目の前の長いソファーもきっと部隊員全員で座る系のものだろう、なんだか場所を間違えた気がする、あのフォズとかいう隊員にまた変な目で見られないといいが。
(ファーストコンタクトも大失敗だったしな。)
「……………あの、」
「ん?」
「何か気になることでも?」
「あぁ、いやそんなんじゃない。ただそう癖みたいなもので、色々観察するのが……」
「…………なるほど。」
そうだよな、あんまりジロジロ部屋の中見るの、普通に考えたら気持ち悪いよな。特にそれが異性型だったら尚更。
(……………沈黙。)
「……………」
俺は話を展開するのが下手くそだ。なぜかと言えば毎回話しかけてくるのは俺の周りの人だからだ、俺は基本的に自分から望んで声をかけることはない、なぜなら一日中部屋でプラモデル作っている時ですら話し相手が必要だと微塵も感じたりしていないからだ。そう考えると、今の自分のコミュニティ能力の低さに想像以上にがっかりするものだ、世間話の一つすらまともにできないとは。
(だが、下手に詮索すれば印象を悪くする可能性がある。ここは穏便に、それでいて当たり障りのないような、)
「えっと、君も105特殊機動部隊なんだよな。」
「はい、」
「そっか………なら何か役割とかは?」
「私は……スナイパーをやっています。」
「スナイパー、か。」
うーん、、本当に話が盛り上がらない。俺はミリタリーオタクというわけでもない。それに現実の銃種がここでもてきようされているのか?っという問いに関してはもはや答えるのが難しいことだろう。それに俺は常に前線に出ている都合上、スナイパーなどの狙撃兵装を扱ったことがあまりないわけだし。
(どうしよう、どう足掻いても会話の展開が絶望だ。)
「あの、教官はどんな役割とかをやったことがありますか……よければ教えてください。」
「えっと……軍所属じゃないからわかりにくいかもしれないけど、一応前線で戦うことが多い役割かな………遊撃兵って言ったらわかりやすいかも。」
「なるほど。ア……部隊長も実は遊撃兵なんです。」
「そうなのか……」
「個人的には、あんまり向いてないと思うんですけど…」
(アンジュ、隊員からこう言われているが、一体どんな動きで、、)
[コンコン──ガチャ]
「紅月教官、全部隊員を連れてきました。」
噂をすればなんとやら、アンジュが部隊員を連れてきたらしい。俺は入ってくれっとアンジュに声かけをして彼女の後ろに続いている部隊員の入室を許した。
まぁここ俺の部屋じゃないんだけどね、
部屋に入ってきた部隊長率いる部隊員は元々俺と話していた子を含めて全部で6人、小隊規模だ。それぞれを一通り顔と目を見た後に俺は全員にこう言い始める。
「部隊長から聞いての通り、本日からこの部隊の教官となった紅月だ。よろしく頼む、」
『よろしくお願いします。』
みんないい返事をする。この中でそんな教育まともに受けていない俺がなんだかはぐれものみたいな感触がするが、まず間違いないだろう。
しかし教官となったからにはそれなりに格好をつけなければならない。
「アンジュ部隊長からそれぞれ簡単な自己紹介を頼む。」
「わかりました、僭越ながら私から。第105特殊機動部隊所属……アンジュ部隊長です。役割は遊撃兵を担当しております。」
「第105特殊機動部隊所属……副部隊長、メイビスです。役割は支援兵・通信兵を担当してます。」
「第105特殊機動部隊所属、役割は盾役を担当しております、ウィストです。以後お見知り置きを。」
「……………第105特殊機動部隊所属、フォズ。攻撃兵を担当している。」
「第105特殊機動部隊所属。ケリーンです。スナイパーをしています。目はいいです」
「第105特殊機動部隊所属、担当している役割は万能兵で、テトンと言います。実はあんまり上手くありません、」
「なるほど……自己紹介ありがとう。さて早速で悪いけど、君たちには俺との模擬戦もしてもらう」
「模擬戦……?」
それぞれがアンジュさんに顔を向けたり、かたや動揺しつつ小声で何かを話し出す。アンジュさんも知らない突然のことを言い出され、動揺しているようだった。
無論だ、これは俺が今さっき決めたことだからだ。
「へっ、なら6対1を希望するぜ、」
「フォズ!!」
アンジュさんはフォズの態度を叱責する。
「アンジュ部隊長いい。あぁ………もちろん6対1でだ。」
『?!』
全員は驚いた顔で互いの顔を見合わせる、いったいこの人は何を考えているのだろうかといった顔をしている。自分で言い出したフォズですらだ。もしさっきのが冗談で出された言葉なら、覚悟が足りてない証拠だ。
「ちなみに、俺が君たちを侮っているなんてことはない。一目見ればわかる、君たちはいいチームだ、それぞれが自分の役割に真っ当にこなすことができるだけの力があって、団結力もある。でも一つ気がかりなことがある、それを確かめるために俺との模擬戦をやってもらう、もちろん俺の実力を知ってもらうという面でもやる、中には俺のことがすごく嫌いな奴もいるわけだしな、」
俺はそう言いながら椅子から立ち上がる。そして部隊員の顔を見ずに入り口へと向かっていく、
「教官……、」
「─────上等だ、やってやるっ!!」
アンジュさんの不安な声、フォズのヤル気に満ちているであろう声を聞きながら俺は
「結構。ちなみに、その気がかりなことは終わってから話す。話は以上だ各自荷物まとめてた後、戦闘訓練場に来てくれ。申請はこっちから出しておく。」
そう言い残し、少し無責任ながら宿舎を出た。
「さてと、どう作戦立てるかな………」
『topic』
紅月はあそこを闘技場と認識しているが、他の人からすれば戦闘訓練場なので、毎回気を遣って言葉を選んで答えている。




