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【7章開幕】“VR MMO RPGってなに?”〜ほのぼの理想を目指してプレイしていたら『死神』扱いされた?!〜  作者: ハンブンシタイ
6章 プラモ好きが妹と始める最初の町編 中級
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八十九話「素材集めEX:招集」

前回のあらすじ


ギルドマスターの一言によって追われる立場になった紅月。立ちはだかる交渉の壁をものともせず、町を駆け出し続け権力が及ばない町の外へ向かうため門前までたどり着くが。そこにウミさん率いるギルドメンバーが待ち構える。






 「お久しぶりです。紅月様、」


 「あぁ、久しぶりですねウミさん。」


最悪だ。こんなところでウミさんに出会ってしまうなんて、いやウミさんにあったことはもちろん嬉しい、だけども今は立場と場合が悪い。


 「紅月様、おとなしく捕まってください。さもなければ私を含む百人抜きをしてもらいますよ。」


 「いや、大袈裟すぎないか?」


俺は周りにいる冒険者たちを見ながら、そうウミさんに話しかける。


 「拒否権ていうのはもちろんあるんですよね?」


 「いいえ、ありません。」


 「それはまたどうして。」


 「私が雇われているから、が理由になりますよね?」


可能性は考慮していた。しかしウミさんが心情よりも報酬を優先する人だとは思わなんだ。


 「なりますけど……」


 「紅月様、私は雇われている以前に勝手に逃げたことに怒ってます。」


 (さてはそっちが本命だな)


 「確かにギルマス様は、気が強く紅月様とは合わないと思いますけど……だからと言って、取って食べるようなことをする人ではありません。」


ギルマス様とかいう新出単語が少し気になりながらも俺はこう答えた。


 「えぇ〜ほんとですかぁ…」


 「ほんとですよぉ〜。っということなので。抵抗するのはお好きに、無論こちらも対応させてもらいます。」


さて、どうしたものか。いや考えるまでもないのだが、ウミさんのランクはこっちより上、つまるところ"決闘"を断ることはできない。

そしてウミさんが倒れても「また第二のウミが行きます!!」みたいなノリで周りの皆さんが突撃してくること間違いなし。


消耗戦に持ち込まれれば、こちらが先にやられるのは明白だ。残弾、装甲、修復不可、これらのデメリットが高すぎる。決闘システムは戦い終わっても装備が戦う前に戻るなんていうシステムはない、ただ利点として死なないというだけだ。無力なオートマタ(自分)が拘束される光景なんて見たくないが嫌でも見てしまうことだろう。


 「……ウミさんが言っていることを信じたい気持ちはあります。ですが、俺の直感がいかにもそれを否定している節があります。」


 「、そうですか。」


 「なので、まぁ強いていうならもう一押しって感じですね。」


戦うことに意味はない。ウミさんの態度を見てわかった、この人最初から戦う気なんてものがない。やはりウミさんはウミさん、大義名分として雇われているという立場があるため何も言わないが、別に戦って連れ帰れなんていう命令を受けている理由にはならない。"決闘"は戦いの象徴みたいなところがあるが、俺を逃さないために使ったという意思を別に感じ取れなくない。


 だからここで俺がやるべきことは。


 (戦闘に発展せず、自身が最大限の利益を獲得する展開にすること。)


もっとも、成立するかどうかは運次第だが。俺の読みが外れていたらそれまでだし、ウミさんが思った以上に現金な人だったら場合によっては戦闘だ。


 (さぁ、どうくる。。)


 「わかりました。では、私が可能な限りで紅月様の願いを一つ叶えるというのはどうでしょうか?」


ウミさんが可能な限り。それすなわち、冒険者ランクが上のものだからこそ取れる魔物の素材も取りに行ってくれるというわけだ。ここだけ見ても今回の交渉はこっちに利益ありと見た。


 「……そう言われたら、行くしかないでしょう。」


俺はどちらかと言えば自分に1%でも利益があればすぐに動くタイプだ。人生はギャンブルだという人がいるが俺からしたら下手に手を出して最悪な結果を迎えるよりも、小さい幸福の積み重ねこそが成功の鍵になると信じている。

だから、それ以上の利益がたとえ付属していたとしても、そこまで俺は気にしていない。


 チリも積もれば山となるというのはまさにこのことだろう。


 (まぁ、デメリットの方ももちろん考えるべきだと思うけど。ウミさんの言葉通りに受け取るならメリットを上回る最悪な展開にはならないだろうし。)


そう信じつつ俺はウミさんに連行されるようにギルドへと戻っていった。戻る道中の住人の視線はどことなく不思議がっているというか驚いているような眼差しだった。そりゃそうだ重要人を護衛しているが如くの大人数が道路のど真ん中を歩いているなら尚更、逃げないとは言っていないから警戒しているのか?っとら思ったりもしたが。


 (それ以前に、悪名高い"鉄血の死神"として見ている人が多そうだ。)


俺自体に悪気なんかはないんだが、こういう名前からくるイメージ、もしくは実績からくる印象というのは変えようがない。違うと本人がそう言っていたと知れ渡っても、案外覆らないのが世の末だ。


 (そのくせスキャンダルだとか悪い方向に向くなら容赦なく便乗するのにな……)


今のは我ながらかなりの偏見だと思う。ここにいる連中は何もそう言った悪い連中ではないと思う。ただ思っていてなぜそのような思考に移るかといえばそれは俺の根本的な問題にすぎない。


 「紅月様が盗賊たちを殲滅したんですよね?」


 「えぇ、はい。」


ウミさんの突然の声かけに俺は少し驚きつつも、敬語を忘れず返事をした。


 「何か不審点などはございましたか……?」


 「不審点、っと呼べるものは特に。(ウミさん、もしかしたら今かなり真面目な話をしているのか。)」


ウミさんは基本的に誰に対しても敬語を忘れず、他者を敬う姿勢をとり続けている。そのため、日常会話においても相手を褒めるというか基本自分の私情のようなものを出さずに言葉を選んでいる。

だが、ウミさんのいつも通りに見えて少し違う声のトーンからくり出される本題は、俺にどことなく緊張感を与えてくる。


 「そうですか。ありがとうございます、」


 「……聞きかじった話なんですけど。もしかして襲撃された"大事なもの"に、関係することですか?」


 「───はい。ご明察通り、詳しい話はおそらくギルマス様からお聞きになると思いますので、それにここではあまり大きい声で言える話でもないので、私からは…。」


 「……確かに。」


こんな参勤交代の大名行列みたいな動きを道のど真ん中でやってただでさえ注目を集めているのであれば、ウミさんが言っていることは間違いなく正しい。


それにしても、ウミさんは"大事なもの"についてよく知っているような口ぶりだ。そしてそれの秘匿性についても理解している。


 (失礼かもしれないが、ますます気になるな。)


 そんな心意気で俺はギルドの扉を開ける。ギルドは人数が少ないだけでそれなりの盛り上がりでまさに通常運転という感じだった。しかし、俺の後に続いて何人もの人が入ってくるものだから、元からいた人たちは随分と不思議そうな顔をしていた。


ウミさんに連れられるがままに階段を登り2階へ、並ぶ扉の一番奥、その部屋に俺は丁寧に案内された。


 「先ほども言いましたが、紅月様とギルマス様はいわば相性が良くない同士です。わかりやすくいえば、豪快な上司と玄人な部下という構図になるでしょう。」


 「すっごいわかりやすい例えですね。」


 「ですが、別に心から悪気があるわけではないと思うので、その点だけは押さえておいてください。少しは殴りたいという欲求を抑えられると思いますので。」


 「はぃ。(殴りたいと思ったんだなウミさん。)」



 まぁ、あの態度を見れば一目瞭然。豪快でいかにも通常の時の音量が大声みたいな人で人望がありそうで……俺と全く正反対。

下手に難しいイメージが浮かばないからかかなり想像しやすい。問題は俺が曰くギルマスとどういう距離感で接すればいいか、向こうから近づいてくるなら、少し距離を置けばいいが……


 (なんだろう、こういうこと考えるのがめんどくさいから直感が働いたように思えてきた。)


 「それでは、私は外で待機しろと言われているのでここまでです。殴ってもいいですが、笑いながら殴られかねないので気をつけてください。」


 (……………………………………どういう。)


とりあえず、入ってみないことにはわからない。えぇいままよ……!


 「失礼します。」


俺は扉を開け、部屋の中へ入室する。そこには窓の外を眺める1人の大男がいた。部屋の中は想像していたよりもシーンだとしていて、一周回って変な警戒をしていた自分が馬鹿だと思い、そして緊張が走る。


 「………。君が"鉄血の死神"、でいいかな?」


俺が声をかけようとした時、ギルマスはこちらに首を向け、静かにそれでいてこちらの声をかき消すかのように言った。


 「………はい。」


本当はその名前で呼んでほしくなかったのですが……の世間話すら切り出せない。切り出すことが難しい空気がすでに流れていた、少しの溜めの後俺はただただそれだけ口にした。


 「そうか、今回。なぜ呼び出されたかわかるか?」


 (うっわめんどくさい質問。)


こういう類の話は、"はい"か"いいえ"、どちらを言ったとしても碌な目に遭わないと相場が決まっている。なので話を逸らすかなように、それでいて核心をつくような話題を出す。


 「ギルドが輸送中だった"大事なもの"についてですか?」


 「そうだ。」


ウミさんに文句を言いたい、これのどこが豪快の人物なのだろうか。いや俺も最初見た時はそんな印象だったが豪快というよりはむしろ厳格という印象の方が今では強くなっている。


 「話したいことはそれに関してだが、あぁすまない、接客用の椅子は昨日破壊してしまってな。申し訳ないがそのままで聞いてくれ話はすぐ終わる。」


 (どうしたら椅子を破壊するのだろう……)


俺こと若葉暁は訝しんだ。


 「まず、礼を言わせてもらう。ギルド職員及び護衛を盗賊の強襲から守ってくれたことを。」


 「はぁ」


頭を下げながらギルマスは俺にそう言った。

それに対して俺はいい加減な答え方、正直何か言われても仕方がないが。なぜだかこのギルマスのことは複雑な心境で埋め尽くされている。


 (相性が悪いとこんな感じなのか。)


全くと言っていいほど、わからない。


 「それで、ここからが本題だ。君には今、選択肢を二つ与える。」


何に対する選択肢か、どんな選択肢なのだろうか。っという疑問は浮かばなかった、察しがいい俺はこのテンプレにも似た問いかけを前にも見たこと聞いたことくらいある。

だから溜飲を流石に飲む。


 「一つ、我々が現在保管している重要物を閲覧し、定期的に今後ギルドに肩入れするか。

二つ、貝のように口を紡ぎ、私の話を忘れ今まで通り過ごすか。」


なんだか後者がどっかで聞いたことのあるような問いかけだが気にしないでおこう。さて、ここでの問いかけに対する答えはもはや一目瞭然、絶対後者だ。

なぜかといえば、俺が面倒ごとに関わる原因になりうるからであって、また俺に対するメリットが前者の方になさそうに思えるからだ。


明らかに最初がハズレだと振っている。それを見越してなお俺にこの問いを投げかけているのであれば、少なくとも"俺でなければならない"理由があるのだろう。

 

 だがそれとこれとは別の話だ。


ギルドに肩入れする理由も、肩入れせざる終えない理由もない。だから、そう…はっきり後者の答えを述べればいいものを。


 (さっきからなんだ、この変な胸騒ぎは……)


ここで"いいえ"と選択すれば自分は後悔するっと俺の直感がそう囁いてきている。先ほどまでこの場所に来ること自体を否定していたのにも関わらず、だ。


 (選択を下すのはまだ早いと言っているのだろうか………?)「質問したい。一つ目の選択、俺になんのメリットがあるんだ?」


 「………そうだな。ギルドに所属しているという事実は、場合によっては縛られていると解釈できなくもない。ただ、今回私が言っている"定期的にギルドに肩入れする"というのはわかりやすく言えばウミのような立場になるということだ。」


 「…………それで?」


 「ギルドに所属している以上、こちらの庇護下にあるも同然だということ、制限はあるが我々が可能な限りで君をサポートすることができる。他にも、魔物の素材交換をやりやすくなったり、君の掛け声ひとつでギルドメンバーを自由に派遣できたりもできる。人脈が純粋に広がるという見方がわかりやすいだろう。」


 「…………なるほど、」


今の話をまとめると別に悪い条件でもなさそうに聞こえる。だが"そういう"時に限って悪い内容が飛んでくるのは当たり前だ、スポーツジムの会員になった結果、めんどくさいセールスが飛んでくるように。下手な宗教団体に入信してツボを買わないかと誘われる。いわばこれと同じだ、完全同類とは思ってもないが、それと同じ匂いがするのは確か。


色々な条件をつけることができるのなら、話を進めることができるが。それにはこの対等な交渉を"こちら"が主権を握れる形にしないといけないわけだ。


 (だが、それでも……何か引っ掛かる。)


やることが明白になり、それが正しいと直感は思った以上に素直に働く。だがそれだけでは足りないとなぜだかいまだに訴えかけている。


何か、まだ聞き足りないことがあるとしか思えないが。考えろ、俺がこの世で優先順位をつけるとして今この場で一番大切なものはなんだ…………


 「!、ウミさんにはこの話…通しているってことだよな……?」


 「あぁ。既に了承済みの上、手を貸してくれる予定だ。」


これか、直感の違和感がなくなった。間違いない、今回ウミさんがこの事件に関わることが何か良くないことにつながる。理由も根拠もないが、それでも俺は直感コイツを裏切ることはできない。


 「────────わかった。ウミさんが参加しているとなれば、俺が参加しないわけにはいかない、協力します。」


 「─────ほ、本当かっ?!?!」


俺がそう言うと先ほどまで厳格な態度をとっていたギルマスが慌て驚いた様子で先ほどまでと比べ物にならない声で俺にそう言った。


 「……………………はい、それと少し近い。」


俺は耳に響く声に少し怯みながら、答える。

一瞬耳鳴りのようにキーンっという金切り音が聞こえた、これが普通の声とか俺の耳は破壊されてしまうのではないのだろうか?っと多少の憤りを含みながら思った。


 「あぁ、ん゛ん。失礼、少々興奮してしまった。……それで本当なんだな?」


 「だから、そう言っている。で、本題の物はしっかり見せて、説明してくれるんだろうな?」


 「……もちろんだ、がその前にウミを呼んできてもらいたい。」


 「………いやその必要はない、どうせウミさんのことだから今扉越しに耳をつけてこちらの話を聞いている、そうでしょう?」


俺が扉に話を振ると、少しの間の後ガチャリと扉が開きウミさんが複雑そうな表情をしながら出てきた。


 「バレて……ましたか。」


 「何年の付き合いだと思ってるんですか。いい加減わかりますよ、」


時に誠実であるのにも関わらず、こういうお茶目というか普通の人みたいなところがあるのがウミさんだ。元々こうじゃなかったにしろあの義妹ルルカと一緒にいれば自然とこうなる。


 「2人は長い付き合いらしいな。、これなら少しは安心できる。」


ギルマスは俺たちのやりとりを聞き確信したのか、ため息と共にそんな言葉を漏らす。


 「……そんなめんどくさい依頼なのか?」


無論俺はそんなため息を見逃さない。


 「あぁ、正直頭が痛くなる話でな。なんせ相手は魔法国の貴族だ。」


 (貴族────最悪だ。)


歴史を見れば貴族でいいやつを探す方が難しい、それほどまでに貴族というのは大抵強欲の化身の塊だ、それか野望の権化。どちらにせよこの依頼めんどくさいだけじゃ済まなさそうだ。


 「それで、その貴族と今回こっちが取り扱っている重要品となんの関係があるんだ?」

 

 「我々が今預かっているものはその貴族が依頼した、"核魔力結晶"だ。」


 「"核魔力結晶"……………」


ギルマスは机から小さな箱を取り出し、鍵穴に青色の鍵を差し込み、ゆっくりと箱をあけ俺たちに見せた。


 「これだ。」


 「紅月様、こちらの"核魔力結晶"は最低でもSSランクが取り扱う代物です。通常の魔力結晶と異なり、凝縮には相当な時間がかかる超高級品です。一貴族が扱うにしても国を操れるほどの財力がなければ、まず目に入ることすら叶わないことでしょう。」


ウミさん、俺が知らないことを見越していい解説を、ほうんとうに気がきくメイドさんだと俺は思うよ。


 「なるほど、どうりで盗賊が狙うわけだ。」


 「そこがまた問題でもあるんだ、実のところな。」


ギルマスは箱を閉じ、また鍵をかけた。


 「どういう意味だ?」


 「普通なら、こんな重要物の情報流出なんてものは起こらない。これは一つの高級物でもあれば、国家が傾いてもおかしくはない代物なんだ。」


 「値段ということもありますが、この"核魔力結晶"は相当な工程を経て作られ、国同士が協力しなければ生産はほぼ不可です。なので所有しているだけで脅威になる、いわば対国家の戦略兵器とも場合によっては捉えられなくもありません。」


ウミさんが俺に耳打ちしながら小声でそう言った。そんなものが今ギルドにあるんだが…っと言いたいが、それはあとだ。


 「なんで情報が漏れている?」


 「それが全く。こちらも諜報員を派遣しているんだが、下手な漏れ方をしていないからか、全く足が取れない。」


 (……少し引っかかるが、これも後にするか。)


 「じゃあ、魔法国の貴族はどうしてそんなものを欲しがるんだ、コレの意味がわからないバカじゃないだろ?」


少なくとも、腐っても貴族なはずだ。権力云々の話に目をつけないで貴族になったやつはいないはずだ。これくらいの理由も答えられないのなら………


 「……………すまないが詳細はこちらも聞かされていないんだ。」


 「はぁ…………?」 


 「紅月様…おそらく。」


ウミさんが言うまでもなくわかっている。ギルドはあくまでギルド、おそらく今回相手にしている貴族は相当な権力をお持ちで、それでいて相当なバカであるんだろう。


 (差し詰め、従わなければギルドを潰すとか脅されてもおかしくはない。)


故に使い道に関しては何も言わず、下手にこっちが聞けば潰されるわけだ。


 「──────で、聞いてなかったが結局何をすればいい……?」


これまで散々情報開示が、あったのにも関わらず、本題を知らなかった俺はギルマスにそう質問をした。


 「コレを魔法国まで輸送、内密にその貴族に渡す。以上だ、、」


 「よく言う。俺の見立てじゃ、どうせ厄介な道のりになるぞ」


情報が漏洩していて、盗賊だけに済んでいるなら一周回って不思議だ。それこそ大怪盗くらいが襲ってきてもおかしくは無い、最悪国が相手になることも思考のうちに。


そうなると、俺たちが魔法国に行くリスクも…………


 「だから、君たち二人に頼みたいんだ。」


 「………おい、今二人って言ったか?」


 「あぁ。」


ギルマスは俺の言葉になんの顔色一つ変えずにそう言った。


 (─────────────考え方は少数精鋭と取れなくはないが。だが、俺が頷かなかったらウミさん一人で行かせるつもりだったと言うわけだ。しかし、こんなことを話せる人物をギルドの中で見つける方が難しいと考えるなら、この憤りの気持ちも少しは抑えた方がいいのか。)


心の中でそうは理解しているし考えてもいる、だがどこか握り拳に力が入る。


 「紅月様。」


 「………はぁ、大丈夫です。言いたいこともどういう状況かももう聞きたいことは全部聞いた気がしました。」


だが頭に手を置いて思わず大きくため息を吐く。流石にそれくらいは許されるだろう、さもなければこの非常な依頼に対する心構えというものが中途半端で終わる気がする。


 「受けた仕事はしっかりやり通す。当たり前だけど、ほんっとこの手の話は…………ひどいったらありゃしない。」



その後解散した俺は近くの喫茶店に来店していた。落ち着きそうな雰囲気の店で客数も少ない。俺のざわついた心とはまさに正反対だ。


 「それで引き受けたの?」


 「あぁ、引き受けたよ。じゃなきゃウミさん絶対無理してひどいことになるって思ったから。」


俺は出されたジュースを啜りながら、目の前の相手に話を続ける。


 「まぁウミだったら大丈夫って、、これは思えないなぁ。ありがとう、お兄様」


ルルカは苦笑いしながら俺にお礼を言った…俺はそのお礼を少し聞き流すかのように天上を見始めた。


 「いいよ、ウミさんにはいっぱい借りがある。でも…………」


俺はまた大きくため息をつく。考えるだけで疲れる。嫌な課題を嫌な先生から出された時の心境の5倍以上のストレス量だ。納得しているけど、納得できないみたいな最悪な気分。


 「…お兄様、今回の依頼。」


 「うん?」


 「私の直感というか経験則みたいな感じだけど、かなりやばい。」


 「………………………」


ルルカが珍しく真面目な目をしている。この目を見ることはそんなに無いどころの話ではない、場合によってはこの目を見ずに人生を終えるものだっている


それくらいルルカは滅多にこんな焦っているような目にはならない。


 「だから、ウミを守ってあげて。多分きっと─────『わかってる』」


 「わかってるよ。ルルカが言いたいことも、何がこれから起こるのかも、、」


俺の言葉を聞くとルルカはそっかっと少し落ち着き、安心したように背もたれに体を預けた。


 「まぁ今回良かったことは、装備が思った以上にいいものに仕上がりそうだってことくらいか…」


 「そうなの?」


 「あぁ、本来手の届く範囲のレベルで設計していたんだが、高級素材までOKサインを出されたら、つクァないわけにはいかない…こんなめんどくさい仕事を押し付けてきたんだ。こうなったら使えるだけ使ってやる。」


さて、これからだ。出発は確か三日後、【SAMONN】時間であることを忘れずに、それまでに装備を作って出発。もしもの時の準備もしておくか、


 「ルルカ、」


 「ん、にゃにふぃ〜」


ルルカは注文していたサンドイッチを口に入れながら、もぐもぐとそう答える。


 「ありがとうな、話を聞いてくれて。少し楽になった。」


 「いいよ〜、それよりお兄様も頑張ってね。もしもの時は呼んだら魔法国に突っ込むから。」


 「いや、もしもで呼ぶつもりだけどそれはやめてくれ。俺の胃が死ぬ。」



『topic』


魔法国の貴族は碌でもない奴が多い

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