私はもうバイ菌と呼ばれるのは限界です
あれはいつぐらいだったろう?
みんな中学校を卒業した後に進学する高校の話でクラス中が盛り上がっていた頃のような気がする。
私はバイ菌としてマトモに学校に通う事も、大好きだったはずの勉強をする事も出来なかった。当然、受験出来る高校など1つも無く、学校から紹介される就職先等も決まっておらず【とりあえず面倒だから卒業だけさせておけ】と言う感じに扱われていた。
そんなある日の前日、給食に大好きなプリンが出るからと言う理由で私は、お昼の給食の時間に合わせて学校に顔を出した。バイ菌扱いされる事は重々承知の上だったが、プリンが食べたかった。
プリンを食べた後にクラスのカースト最上位のカップルに案の定、捕まってしまった。
そいつらは私をベランダに押しやり、ベランダの柵を乗り越えて飛び降り自殺をする練習と言う物をさせた。
私は泣きながら謝り許しを必死で請い土下座までして何とか許してもらった。その後は、一目散にクラスから走り逃げた。
『バイ菌は2度と来るな』『クラスが汚れる』等の罵声の言葉を背中に浴びて。
私の家の近所には昔から私とよく遊んでくれていた従兄が住んでいる。さすがに年齢が離れすぎていたためにいまではすっかりと疎遠になり、一緒に遊ぶ事も無くなっていたが。その従兄はブルース・リーに憧れていて誰かに格闘技を習う訳でも無く、サンドバッグを叩いたり蹴ったり、藁を巻き付けた板を殴ったりと自分を鍛えるのが趣味だった。
ホコリやゴミまみれのベランダで土下座までして許しを請った私の学生服を見て、またイジメられたのかと悟ったのか、従兄は私に話かけてきた。
「またイジメられたのか?大丈夫か?」
大丈夫な訳が無い。私の心は既にボロボロでほんの些細な事でバラバラに壊れてしまうようなバランスでギリギリ生きているんだから。私は従兄に私の怒りをぶつけてしまった。必ず私の味方をしてくれる事を知っていた私は、従兄に八つ当たりをしたんだ。
何を言ったのか正確には覚えていない。ただ従兄は何も言わずに私の怒りを受け止めてくれた。
最後に従兄に言った言葉だけは何十年と経った今でも忘れられない……
「もういいよ……きっと私は明日校舎の3階から飛び降りて死ぬんだから、今日、飛び降りる練習をさせられたから……」
私の言った言葉に激怒した従兄は、私にこう言った……
「それでいいのか?本当にそれでいいのか?お前はバイ菌のままで人生を終わらせていいのか?」
私は大きな声を上げ泣きながら、嫌だと何度も言った。
「それならば、お前はお前自信の力と勇気でバイ菌から卒業する必要があるぞ!誰かが助けてくれたか?お前がイジメられ始めてからお前の味方はたくさん居たと思うが現状を変えてくれるような味方は居たか?自分自身の力と勇気でバイ菌から卒業するんだ!今日がその日なんじゃないのか?」
そう言った従兄は、少し待ってろと言い残し自分の部屋へと戻っていき5分ぐらい経って戻ってきた。
手に何やら見た事の無い物を持って。
「これは、木刀の短と言う物だ30cmぐらいの長さだな。握ってみろ」
そう言って握らせた私の手を包帯でぐるぐる巻きにして木刀がすっぽ抜けないように縛りつけた。
「明日、これでお前をイジメる奴の頭を思いっきり殴れ!間違いなく血が吹き出し相手は怪我をするだろう。当たり所が悪ければ死ぬかも知れない。でもないいか、お前が明日、ベランダから飛び降りて死んだら、何人の人がお前の死を悲しむ?お前の兄ちゃんは?姉ちゃんは?弟は?お前が死んで泣いて悲しまないか?もちろん俺も泣いて悲しむぞ!俺の両親だって!近所の人達だって!パチンコに狂ってるお前の両親だって!みんなみんな悲しむんだぞ!お前はみんなにそんな悲しい思いをさせたいのか?それなら逆にイジメてる人間を殺してこい!6年間も執拗にお前の事をバイ菌だと言ってイジメるような奴は、人間ではない!お前は明日必ずバイ菌から卒業するんだ!わかったな!」
その後、日が暮れるまで包帯で縛られた木刀を藁を巻いた杭に従兄に教えられながら打ち付けていた。
そんな事を繰り返していたら、軽い洗脳状態になり私は明日、今までイジメて来た人間を殺してもいいんだ。そんな思考に陥っていた……
次の日……利き腕に木刀を握り包帯でぐるぐる巻きにした姿で教室に現れた私に向かい。カースト最上位のカップルは、ものすごく軽い感じで私に言った。
「おっ飛び降り自殺ショーを見せに来てくれたか?派手に飛んで脳ミソぶちまけてくれよ」
その言葉をトリガーにして、私はそう言った男子生徒の頭に木刀を目一杯力を込めて振り降ろした。
その後、柄尻を使い横にいつもいるイヤミったらしい女子生徒の口と言うかアゴを思いっきり殴った。
突然、木刀で殴られた二人は当然、自分に何が起きたのかも理解出来ずに、倒れた。私は二人に交互に馬乗りになり、頭や顔や兎に角いろんなところを力一杯殴った。
「今日でバイ菌は卒業するんだ!今日でバイ菌は卒業するんだ!……」
そううわ言や自分に言い聞かせる呪文のように。
こうして私は初春のうららかな日に、やって来た警察に取り押さえられその後、鑑別所に行きそのまま少年院へと送致される事となる。
こんな気持ちの良い気分になるのなら、もっと早くもっと多くの人間を血だるまにすれば良かった。
私は本心からそう思った……
私を焚き付けた従兄には感謝しかない……
そしてこの事件は私の中で今でも一切の後悔は無い……
男子生徒は噴水のように血が吹き出ましたが頭蓋骨骨折(脳に障害無し)
女子生徒は前歯が上下で6本折れました
木刀で殴った割には2人とも軽傷だったのは、私自身に体力も腕力も無かったせいでしょう。
☆☆☆☆☆を★★★★★にすると作者のやる気が変わるらしい本当だろうか?