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『小説家になろう』の風潮に物申す

感想機能を使って気がついた点を指摘することって、いけないことなんでしょうか?

作者: 鶴舞麟太郎

 みなさんは小説を読んでいて気になることってありませんか? 中世ヨーロッパ的な世界なのに『シャンプー』が出てくるとか。異世界なのに、パンに具材を挟んだものを『サンドイッチ』と呼ぶとか。挽肉をまとめて焼いたものを『ハンバーグ』と呼ぶとか。『ハンバーガー』なんて突っ込みどころ満載ですが……。

 まあ、ファンタジー系統の物や制度の話は、「過去に転生者がいた」とか、「魔法が……」とか、「精霊力が……」とか、いろいろ理屈の付けようがあるので、あまり気にはならないことが多いのですが、それ以外のジャンルの作品はどうしても気になってしまいます。



 なお、一番最近に指摘したのは、『走れメロス』に出てくるメロスの親友セリヌンティウスをモチーフにした作品です。そこでセリヌンティウスは、ずっとはりつけ状態だったことになっていました。さすがに、屋外で3日も磔になっていたら、下手をしたら死んでしまいますし、その間トイレはどうしたんだろうと思ったので、指摘しました(※ちなみにこれを書いている途中に思い出したのですが、磔台に上げられるのは、メロスが刑場に到着した時刻という描写が『走れメロス』の本文にありました)。


 このエッセイを書いている途中で、作者の方から返信があり、会話劇なので設定はあえて緩い感じにしたとのこと。それならば多少設定に違和感があっても一種の演出と考えることができますし、情景を想像するに、磔にされていた方が面白そうなので、お話は納得できました。(注1)




 さて、2編の文章を出します。これから出す文章は、過去に私が書いた『気になる点』についての文章で、幾多の文章の中でも第1位と第2位の長さを誇る長文による意見です。


 まず第1位の文章を書いた小説ですが、こちらは日本の戦国時代をモチーフにした歴史改変小説で、主人公はみんな大好き織田信長です。この信長は、転生知識もあって早々に家中をまとめ、1549年の段階で伊勢まで制圧してしまいます。1549年ですから、当然、信長の父の信秀も存命です。そんな中で今川の尾張侵攻が始まり、何と10年早く桶狭間の戦いが始まる。というタイミングでの書き込みでした。


 実際の書き込みは以下の通りです。(注2)



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 いつも楽しみにしています。が、急に気付いてしまいました。


 たしか、史実では1549年11月の第4次安祥合戦で落城するまで、西三河の安祥城まで織田領だったはずでは?

 安祥城は先の内乱に乗じて松平家が奪ったとしましょう(弱体化した松平が単独で安祥城を落とせるのか、合同で落としたとすると、清康時代の本拠だった城を松平に返還するのかしないのかなどの問題もありますが……)。


 でも、まだ信秀、生きてましたよね。すると、信秀の信頼が厚いの重臣で、信秀の死による混乱と、それまでの信長の奇行から、織田を見限って今川に寝返った、鳴海城の山口教継は、まだ織田方なのではありませんか?

 と、すると、教継の調略で今川方に落とされた、大高城や沓掛城も、織田方にあるはずです。

 三河との国境近くにある沓掛城と、伊勢湾沿いの大高城・鳴海城の中間辺りにある桶狭間って、織田領の結構奥深くの丘陵地帯です。前線にある沓掛城(ケースによってはさらに前線に安祥城が加わる)を見捨てた上で、よっぽど策を弄さないと、大軍同士の会戦に向いているとは思えない、桶狭間近辺での決戦は苦しいのではありませんか?


 また、教継は信秀には忠実でした。信秀が存命で後見についており、さらに、伊勢を瞬く間に平定してしまうという、史実では目にすることのできなかった信長の才覚を目の当たりにしているわけです。教継が寝返るとすると、それなりの理由が必要になるのではないでしょうか。


 仮に既に寝返っていたとすると、後背の伊勢を平定したのに、本拠から目と鼻の先にいる敵をそのまま残しておく理由が(主に家臣に)説明できません。


 場合によっては、ちょっと○○さんの構想からは外れてしまうかもしれないのですが「桶狭間決戦」にこだわらなくても良いのではないでしょうか。たとえば釣り野伏りみたいにして誘い込むとか……。


 いつも勝手なことを書いて済みません。気になったので書いてしまいました。私が話を良く読み取れていないだけかもしれませんし、何らかの伏線になっているところを、つつき回してしまったかもしれません。お気を悪くなさらないでください。


 P.S.地黄八幡が援軍に来ていますが、北条綱成・今川家無関係説を採ったのですか?


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 次に第2位です。書きこんだのは、中国の三国時代をモチーフにした歴史改変小説でした。

 書き込んだときの状況を説明すると、この当時、作中で『魏』は南方で『呉』に敗れて許昌を失い、西方で『蜀』に敗れて隴西を失った状態でした。ちなみに『魏』の首都は洛陽です。その中、史実通り(・・・・)諸葛誕しょかつたんの乱が発生し、皇帝は長安に避難したという話が投稿されます。これについて、それはないだろうと書き込んだのが以下の文章です。(注3)



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 諸葛誕が10万の兵を集め、洛陽で反乱を起こした!?


 諸葛誕はどんな立場にいたのでしょうか。首都に10万の兵を集められる立場って相当限られてくると思います。さらに、洛陽で反乱を起こす。or 反乱を起こした後、洛陽に入城するまでの間、司馬昭と曹髦はどこで何をしていたのでしょうか。10万の動員ってよっぽどですから、挙兵まで気付かれないためには相当の準備と隠蔽性がないと……。少なくても司馬昭が洛陽にいたら気付くでしょう。



 皇帝が長安に避難!?


 街亭で蜀漢が勝利した結果、天水郡などの隴西は蜀漢の領地になっていますよね。ということは、涼州も蜀漢の領地になったか、鮮卑などに占領されたか、独立勢力になったかで、魏の領地から切り離されているはずです(※隴西を押さえていないと、当時の交通の状況では、涼州を維持することはできませんし、飛び地を維持するメリットもほとんどありません。関中盆地の北西にある街亭が戦場になったのも涼州を分断しようとする蜀漢とそれを防ごうとする魏の意図があったからです)。

 関中盆地は、山脈のある南と東からの攻撃にはめっぽう強いのですが、北と西からの攻撃には比較的弱いという特徴があります。さらに渭水が防壁となる北からの攻撃に比べて、何の防壁もない西は大きな弱点のはず。

 橋頭堡を築こうとして撃退されていた史実と違い、完全に橋頭堡と後背地ができているこの展開です。呉が許昌まで落としているこの時点で、少なくとも蜀漢が長安の目前にまで迫っていないのは、大いに違和感がありますが、魏の武将たちの奮戦で何とかなっている。としても、そんないつ戦場になるかわからないような危険な場所へ皇帝を避難させますか?


 せめて、河北の大都市の鄴か、防衛に適した山西の晋陽あたりにしておいた方が良かったのではありませんか?


 史実に忠実になるように進めていると縛りが多くて大変だと思います。もう大きく史実とかけ離れた展開になっているので、もうある程度好きに書かれたほうが良いのではないでしょうか。バタフライ効果という言葉もあります。これだけ史実と離れている以上、同じような展開が起こらなくても不自然ではないと思います。


 今回は、当時の交通網や政治情勢を鑑みても「それはどうなんだ!?」と思った点を指摘させていただきました。勝手なことばかり書いて申し訳ありませんでした。御容赦ください。



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 数年前に書いた文章ですので、稚拙さが目立ちます。また、少し感情的になっている所もあり、お恥ずかしい限りです。


 ちなみにこの2編を書き込んだ後どうなったとういと、全く対照的な結果が生まれました。


 前者は返信をいただいたうえ、その後、本文が大幅に改編されることになったですが、後者は、全く音沙汰無く、文章の修正もなされなかったのです。


 具体的には、前者は、感想の返信で、今、予定している構想で頑張るという旨の回答がありました。『大変だろうな』と思いつつ更新を待っていたところ、しばらくして、突然、作者の方から直接メッセージをいただき、それによると、なんと、確認のため、直接桶狭間付近に足を運んでいらしたとのこと。そして、実際に現地を歩いてみて、明らかに無理があると判断したので、構想を白紙に戻して改稿するとおっしゃっていました。

 その後、投稿された話は現地の地理や当時の勢力図などを考えて編まれたすばらしいものになっており、意見を差し上げた私としては、完全に脱帽させられたものです。


 それに対し、後者については、前述の通り、作者からの返信はありませんでしたし、指摘した内容についても変わることはありませんでした。




 この違いは何から来ているのでしょうか。


 作者個人の許容量の問題とか、先の文章が完成していたか否かの問題というのも原因としては考えられます。


 ただ、私はそれよりも、作者の方とのつながりの太さが大きな要因だったのではないかと考えています。



 実は、この2編の長文の『気になる点』ですが、前者を書いた作品については、これを書くまでに2回ほど感想の投稿をしていたのに対し、後者を書いた作品については初の感想投稿だったのです。


 時々感想を投稿してくる人から届いた長文の意見と、いきなり届いた長文の意見。作者の立場からすれば、前者は傾聴に値し、後者は胡散臭いと感じても無理はないことです。



 また、後者については「魏の首脳がよっぽどアホでないとこんなことは起きないだろう!」と自分自身がイラッと来てしまい、自らの思いの赴くままに書いてしまったこともあって、今見返すと、きつく感じる言い回しも目立ちます。


 せっかく良かれと思って書いた文章に対し、きつい物言いで長文の駄目出しをされたら、作者としては良い気持ちはしないでしょう。そして、仮に作者が攻撃されたと感じたのなら、私のその意図がなかったとしても、攻撃者の意見を聞こうなどとは当然考えられないでしょう。(注4)






 私は感想による『気になる点』の指摘自体は、基本的に悪いことだとは思っていません。

 なぜなら、端から見たら明らかなミスや、不整合、記述の不足があっても、自分の頭の中では完結し、筋が通ってしまっていると、気づけないこともあるからです。


 独りよがりな自己主張や、論点のずれた意見、内容の曲解による指摘などといった迷惑行為にあたるものは困りますし、中には指摘を受けること自体が嫌だと感じる方もいるかもしれませんが、そうでなければ、『気になる点』の指摘を一種のチェック機能として働かせることで、作品の完成度を上げることができると思うのです。




 誤字報告機能の整備で、読者は誤字脱字限定ではありますが文章校正に協力できるようになりました。そして(これは以前から可能でしたが)感想機能を活用することで、作者に協力できる道が開かれているのです。よりすばらしい作品を仕上げるために、読者が作者に協力する。これはweb媒体ならではの強みであるといっても過言ではないかと思います。


 しかし、これが上手くいくためには前提となる条件があります。


 まずは何よりも作者の方がそれを求めているかです。どのような真っ当な(と自分が考えている)意見であったとしても、求めてもいない方に差し上げたとしたら、それは不快な雑音でしかありません。


 では、作者の方が意見を求めているならば何を言っても大丈夫でしょうか? 当然、そんなことはありません。

 いろいろとあるとは思いますが、一番大切なのは、お互いの信頼関係ができているかということです。


 いつも褒めてくれる人がたまに書いてくる意見と、私がしてしまったような、何もないところからのいきなりの長文の意見。作者の方はどちらを採用しようと思うでしょうか。


 高評価を付けてくれている方の意見と、評価無しの人の意見。(注5) どちらに耳を傾けようと思うでしょうか。


 いつも罵詈雑言や文句ばかりしか言わない人が、心機一転、真面目な気持ちで意見を書いたとしても、その話を誰がまともに聞くでしょうか。



 感想欄で意見を書いたけれども、作者の人の反応が全く反応がないという方。私も返信を貰えなかったことや、指摘した点が直らないことにことに悶々とした経験があります。返信や反応が無くても怒らないでください。


 作者にも事情があります。もしかすると本編の執筆や本職で忙しく、返信や改稿をするキャパがないのかもしれません。作品も予約投稿が設定されていて、修正する前に投稿されてしまっているのかもしれません。


 そして、何より作品は作者のものです。読者としてできるのは、あくまで『気が付いた点』という『意見』を書くことまでです。読者の立場でいかによいと考えた意見であっても、採用するのは作者です。

 作者がよいと考えなければ作品に登場することはないのです。作者は自分の作品に責任をもっています。読者としても、その作品が大好きな作品であるなら、なおさら、多少意見の違いがあったとしても許容してしてしかるべきではないでしょうか。


 どうしても我慢がならないと感じるのであれば、悪口を言って敵を作るよりも、読むのを止めて自分の感性に合うような小説を探すか、自分自身で納得のいく作品を書くかした方が建設的だと思うのですがいかがでしょうか?




 必要だと思ったら意見を書く。良いと思ったら良い点をきちんと書く。そして感想を書く余裕があるなら、評価もする。

 返信や修正があることが当然といった傲慢な考えをもたない。作者からの返信があれば喜び、自分の意見が通れば人知れず一人で喜ぶ。返信が無くても「ああ○○先生忙しくて大変なんだな。」と作者を思いやる。


 みんながこのようにすれば、作者にとっても読者にとっても過ごしやすい環境になるはずです。


 こんな『小説家になろう』みんなで作っていきませんか?






注1

 この後読み直したところ、私の読み込みが甘く、とんちんかんなことを書いてしまっていたことに気付き、慌てて作者の方に謝罪。快くお許しをいただきました。書いたことには責任をもつという観点から、書いてしまった感想は、自分からは削除しないことにしていますので、誰でも読めるようになっています。歴史ジャンルの作品ですので、興味のある方は探していただき、アホな鶴舞を笑いに行ってください。ついでに、もとになった作品も評価していただくと、みんな丸く治まりますw



注2

 文言については基本的に修正していませんが、作者の方の個人名が出ていたところがありましたので、そこだけ伏せ字にしました。



注3

 文言については一切修正していません。



注4

 ただ、補足しますと、他の読者からも複数、同様の指摘が寄せられており、指摘した内容については、基本的に間違っていなかったと考えております。



注5

 付けた評価については感想欄から感想を書いてくれた人のマイページに行けば簡単に見ることができます。感想を書いたら自分が付けた評価(付けていない評価)も見られていると考えた方が自然です。普段評価を付けない人。感想を書く気概があるなら、ついでに評価もしてあげてください。何かポリシーがあるなら致し方ありませんが……。





 このような長文を最後までおつきあいいただきありがとうございました。今回のエッセイはいかがでしたでしょうか。お手数ではございますが、もしよろしければ下の評価ボタンで評価していただきますと幸いです。


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[良い点] 作者・読者間の信頼を考察していること。返信や修正が当然と考えることを戒めている点。 [気になる点] フィクションにどれだけ『現実の正しさ』を求めているんだ、作者はどのレベルの専門知識を備え…
[一言]  ご意見、拝聴させていただきました。  最近、作品や作者様に甘い感想や評価を与えるという風潮に疑問を投げかけるこうした随筆を多く見かけます。  それだけ、当該サイトの現状に疑問を抱いている方…
[良い点] 作者と読者の信頼関係にもしっかりと言及してくれている点 [一言] 興味深く読ませていただきました。 過去のご自分の経験談を踏まえ作品に対する指摘の在り方や落とし穴、付き合い方を分かりやすく…
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