(14)助っ人
一週間後。
休暇を終える前のフィルさんが言ってくれた通り、畑仕事をしてくれる人たちが派遣されてきました。
いつ来てもいいようにと、長期滞在用に部屋を用意していたのですが。
フィルさんの手紙を持ってラグーレン領を訪れたのは、思っていたのとは全く異なるタイプの人たちでした。
「……あいつ、何を考えているんだ」
フィルさんからの手紙を読んで、アルベス兄様はうなっていました。
何と声をかけていいのか迷っていたら、私にも手紙を見せてくれました。
『もっとまともな人材を派遣するつもりだったが、どこかで情報が漏れて、希望者が殺到してしまった。それなりにましな部類ではあるから、こき使ってほしい』
はね方に特徴のある文字で綴られた手紙は、だいたいこんなことが書いてありました。
読み終えて、私は途方に暮れながらお兄様を見ました。
アルベス兄様は、もう諦めたのでしょうか。気の抜けたようなため息をついています。
私は、派遣された人たちをそっと見ました。
三人とも背が高くて、がっしりとした体型で、見るからに頑丈そうです。
日焼けしていますし、知的な目をしていますし、最高の人材なのは間違いありません。
ただ……三人とも、ここまで立派な馬に乗ってきて、腰には剣を下げています。
どう見ても騎士です。
うーん……。
警備の仕事を頼むならまだわかりますが、私たちが頼むのは農作業とか土木作業とか、そういうものなんですよね……。
「まさか、お前たちが来るとは思わなかったぞ」
「おう、久しぶりだな! アルベス。すっかり領主ぶりが板に付いているじゃないか」
あれ?
もしかして、お兄様とこの騎士たちは知り合い?
「おっ、こちらが噂の妹ちゃんか。俺たちはアルベスの同期なんだよ。よろしくな」
「アルベスが急に騎士を辞めてしまって、寂しく思っていたんだ。いつまでも声をかけてくれないから、この機会に押しかけさせてもらったよ!」
なるほど。
そういう関係でしたか。
しかし……つまり王国軍の騎士ということですよね?
ほとんどが貴族出身と言われている王国軍の現役騎士たちに、農夫の仕事を押し付けていいものか……。
「俺とこいつは北部で開墾をやっていたんだ。繊細な管理は難しいかもしれんが、それなりに役に立つと思うぞ」
「私の実家もここと似たような感じでね。農作業は子供の頃からやっているよ」
ありがたいことに、騎士たちはそう言ってくれました。
ならば、少し安心……いや、待って。
まだ問題がありました。
「あの、まさか王国軍の騎士が来るとは思わなかったので、部屋は昔の使用人用の建物に準備してしまったんですが」
「屋根がついているだけで十分ですよ」
「この辺りはそのまま寝ていても凍死はしないから、平気平気」
……似たようなことを聞いたことがあります。
フィルさん特有の冗談かと思っていたら、王国軍騎士の常識だったのでしょうか?
「それから……あの……お食事はどうしましょう?」
「大丈夫だよ。俺たちの世代は自炊が必須で、こいつらはそこそこ料理がうまい。ルシアが指示を出せば、その通りに実行することもできるだろう」
へぇ、そうなんだ。
そういえば、お兄様も騎士になってからは、時々料理をしてくれるようになっていましたね。
「ということなんで、食事は気にしなくていい。食材もこいつらが勝手に入手するだろう。バカンス気分で来ているからな。もちろん警備関連は完璧だ。……くそっ、あいつ、確かにいい人選しやがった!」
え? そうかなぁ?
……これ、いい人選なの?
アルベス兄様がそう思うなら、私はそれでもいいんですが。
まあ、頼もしいのは確かですね。
この上なく。
なお、この数日後に、ものすごく美人なメイドさんが来ました。
美人だ!と素直に喜んでいたら、私の肌と手を見た瞬間に表情を変えられてしまって、レディーとは如何なるものかを延々と説教されてしまいました。
レディーへの道は厳しいです。
落ち込んでいたら、騎士さんたちが豆入りパンケーキを作って慰めてくれました。見た目は厳ついですが、優しい人たちですね。
決戦の日まであと一ヶ月。
がんばりましょう。




