第9話 ドールで大乱闘
オニール家へ戻るとみんなの姿がなかった。
「みんながいない?! ど、どういうことなんですかオニール大佐!」
「え? 私に言われてもなあ……」
オニール大佐は部屋の中を見回して言った。
「家のどこかにいるはずだよ。ひょっとすると地下室かもしれないな?」
「なんで地下室なんかに?」
「地下室にプレイルームがあるから、そこで遊んでいるのかもしれないよ」
「なるほど。じゃあ言ってみてもいいですか?」
「いいとも、じゃあ私が案内するよ」っとオニール大佐は先に立って歩いていった。
あたしたちが地下室へいくと、そこではドールの対戦が繰り広げられていた。
「わあ、ヒナちゃんもドールを使えたんだね」っとあたし。
「マリアお姉様と対戦していました。コトコお姉様はドールやらないのですか?」っとヒナちゃんが答えてくれた。
「今だから言えるんだけど……、あたしの構造的にドールは使えないらしいんだよ」
「あ、そういうことだったのか」マリアちゃんはあたしが初めてドールに挑戦したときのことを思い出しているようだった。
「体を消したらドールも動かせるらしいんだけど……」
「あ、コトコの場合は小さくなればいいんじゃない?」
「あ、ほんとだ! 思いつかなかった。アハハハハ……。でも、それだと味気ないなあ」
「あたし途中からしか見てないので対戦やって見せてよ」
マリアちゃんと、ヒナちゃんは対戦を始めた。ヒメ先輩の時と違ってガチバトルだった。
「おいおい、こんなのでいいんですか?」
「いいんだよ、遊びだからな」
「あれ? ヒナちゃんもなかなか上手だね」
「こういう形式の試合もあるんですよ」
「そうなんだ。ひなちゃんは色々と物知りだね」
「この辺りはお父様の影響が大きいですね」
両者決着がつかないまま、タイムアップになったようだ。
「ヒナちゃん、なかなかやるね」っとマリアちゃん。
「マリアお姉様も。こんなに強い人と対戦したのは初めてです」
「ふふふ」っと、二人とも不敵な笑い声をあげていた。
ちょっと雲行きが怪しかったので、空気を変えるためにあたしは話し始めた。
「よーし! あたしも参戦してみようかな」
ギュウウウウウン! っと、あたしは小さくなってみた。
「わーすごい! 小さい! 可愛い! ドールみたいだ! しかも服装まで変わってる」
「そして、脱ぎ散らかした服とアクセサリーが……」っとマリアちゃん。
「ごめん椅子にかけといて。買ってもらった服は小さくできないから、こうなっちゃうんだよ。あっ、いま気が付いたんだけど、これはこのメンバーだからできる技だよ。知らない人の前では出来ないなあ」
「あっ、ほんとだね」
クリスティちゃんも交え、四人で対戦を行った。フィールドは大乱闘状態になった。ハチャメチャで楽しかった。
3戦ぼど対戦した。みんな疲れたのでドールは終了することにした。
「ふはぁー。楽しかったね」
「この大乱闘方式は楽しいね。また今度やろう」
お茶とお菓子で休憩することにした。しばらくするとマリアちゃんが話しだした。
「コトコ。ヒナちゃんにもコトコの特技を見せてあげなよ」
「えー! まあいいかヒナちゃんも前に一度見てるからなあ。しかもヒナちゃんは妹だしね」
「コトコちゃん、顔ゆるみまくってるよぉお」クリスティちゃんが冷静に忠告してくれた。
あたしは、ゆるんだ顔を引き締めた。
「よーし、あたしの特技見せちゃうよ!」
集中、集中、全集中……。あたしの手のひらから魔法陣が出た。
「はーい、ここに消しゴム投げてみて」
「わあー! 消しゴムを防いだ! 凄い! って、あほかー! 誰がコトコのショボい魔法を見たいんじゃー!」
「マリアちゃん、怖いよキャラ変わってるよ」
「コトコのせいだろ!」
「マリアちゃんに教えてもらった魔法の成果を見せたかったんだよ」
「わかった。わかったから本気のやつお願い」
「わかったよ。よし、じゃあヒナちゃんの未来の姿を見せよう」
そう言うとあたしは17歳の姿になった。
「わっ、綺麗! しかも理想のプロポーション!」
「これがヒナちゃんの17歳の姿です」
「本当ですか? こんな風になれるんですか?」
「たぶんそうなるんだと思うよ。あたしあまり難しいことは分からないんだけど、この体はヒナちゃんを参考にしてあるんだよ。だからあたしとヒナちゃんはソックリなんだよ。で、その体を成長した姿なんだからそうなるんじゃないのかな?」
「なるほどね」一同は頷いた。
「なんか夢が広がりました! 私今見たお姉様みたいになるように頑張ります!」
月曜日、授業が終わりチャイムがなると。
「コトコ、今日は企画研究クラブだっけ?」っと、マリアちゃんが聞いてきた。
「うん、そうだけど?」
この展開は発明クラブへ出てほしいときのマリアちゃんだ。っと、あたしは思った。
しかしマリアちゃんは「そっか」それだけだった。
マリアちゃんとクリスティちゃんは、あたしより先に教室をでた。
あたしはエレナ先生から頼まれたプリントの回収をすまし、職員室でプリントを提出してから企画研究クラブの方へ向かった。
すると、先の方の通路を横切るマリアちゃんがみえた。あれれ、マリアちゃんだ。
発明クラブに行ったはずなのに、一体どこへ行くんだろう。へんだなあ。ロースクールのあたしたちはあっちに行く用事はないぞ。しかも、特に目立った施設は無かったはず。
あたしは、少し考えこんで追跡することにした。考え込んでる間に、マリアちゃんとの差が開いてしまった。マリアちゃんが角を曲がった。あたしが角を曲がると……。
あれれ、マリアちゃんの姿が見当たらない。行き止まりなのに……。
ちょっとまて、マリアちゃんのことだから。窓からってことも……。窓に駆け寄り外を見た。マリアちゃんの姿は見当たらなかった。
イチョウの葉はまばらになり、その木々の間から光がチラチラと輝いた。もう、こんな季節なんだなあ。この世界にも四季があるんだな、ほんと前世とよく似た世界だよ。
「しかし、マリアちゃんは何処へいったんだろ? まあ、いいっか」
あたしは企画研究クラブへ向かった。