第37話 空中遊泳
転生したら人工知能AI幼女になっていた。って話です。 こちらは続編、第2部となっております。
<a href="https://ncode.syosetu.com/n9155ge/">こちらが前作になります</a>
エデュランが呪文を呟くと、風があたしたちの周囲を巡る。エルフの浮遊魔法には詠唱が必要なんだな。しかも、風魔法の応用ぽい。なるほど、あたしが使ってるのは別の浮遊魔法なんだね。
「コトコ、浮遊魔法を実行するんだ」
「うん」
フワリと体が浮き上がる。
「水面に水平に浮く感覚で、バランスを取るんだ。手を広げるのもいい」
あたしは言われたとおりにする。確かに安定している。
「移動し、角度を変えていくぞ」
「うん、わかった」
エデュランの風と手が、あたしを支えてくれる。
安心感があるから飛行が楽しくなってくる。徐々に速度が上がり、高度も上がる。
「支えを緩めていくぞ、自分で進む方向を決めていくんだ」
「了解!」
あたしは、右に左に方向転換を試す。飛行感覚に段々慣れてくる。楽しい。
マリアちゃん、クリスティちゃん、ヒナちゃんの近くを飛行する。みんなが見上げて手をふる。
「ふふふ」
「楽しそうだな」
っと、エデュランがコチラを見て話しかけてくる。
「確かに、空を飛ぶのは楽しいね。自由になった感覚がするよ」
あ! あれ? なんでエデュランの顔がみえるのかな? 自分の周囲に目をやる。何の支えもない。焦ってバランスを崩す。
「あわわぁあ」
下の方から悲鳴が聴こえる。
「コトコ水平!」っと、エデュランのアドバイスが入る。
「はっ、はい!」
何とかバランスを取り戻す。
「もう、大丈夫そうだな」
それから、しばらく慣れるために飛行を続けた。下へ降りると皆が駆け寄ってきた。
「お姉様」っと、ヒナちゃんが飛びついてくる。
「飛行完璧じゃあないか」っと、マリアちゃん。
「コトコちゃん、凄いねぇ。次は攻撃系のまほうだねぇ」っと、クリスティちゃんがおっとり言う。
「お姉様、一度休息を」っと、ヒナちゃん。
「そっかあ、そうだねぇ」っと、クリスティちゃん。
「時間が心配だから、一気にやっちゃうよ」
ヒナちゃんが心配そうにコチラを見る。
「ヒナちゃん、コトコは一度休むとダラけるから一気にやらせとこう」っとマリアちゃんが言う。
そう言われると休みたくなるから不思議だ。
でも、今回はほんとに時間がないから心を鬼にして頑張る。
あたしには、心のトレーニングが一番必要かも知れない。
空中で話を聞いていたエデュランも降りてきた。そして、あたし向けて言った。
「では、座学の成果を見せてもらおう」
攻撃魔法のライブラリから、炎の魔法を検索。手のひらに炎を出すイメージでスタンバイ。
やはりコチラは詠唱が必要だ。大丈夫かな。
「アグニュウス!」っと発音する。
一瞬燃え上がったが、煙だけが残る。
クラッカーが鳴ったようなイメージだった。
「発音だな」
「やっぱり、発音かあ」
あれ? ……急にいつもの言葉の発音が心配に成ってきた。
「あのー、あたしっていっもの言葉の発音どうなの?」
みんなが目線を反らす。急に恥ずかしくなってくる。
AIか、異世界の補正的な何かで、バッチリ翻訳してると思っていたのに……。
その後何度か炎の魔法を試した。
少しづつマシにはなるが、今は無理だと判断する。そして、他の属性を試す。
風ダメ。水ダメ。とうとう最後……、土魔法。
土魔法がダメだと後は光や闇など難しくなる。
土魔法で何とか。発音は「ツブテ」ツブテ? 何これ? 日本語? まあ、やってみよう。
「ツブテ!」手からこぶし大の岩石が発生する。ポトリと落ちる。
「おおーーー」っと歓声が上がる。何これ簡単。 これだよ。「ツブテ! ツブテ! ツブテ!」
でも、あれ? 飛ばない。
「飛ばすには、飛行魔法と混合させるんだ」
っと、エデュランのアドバイスが入る。
なに、飛行魔法と混合だと……、そ、そんなことができるとは。さっそくあたしは、発生した石に浮力と加速を与えるようイメージを加える。こぶし大のつぶてが飛ぶ。
みんなから様々な歓声が上がる。あたしは、勢いに乗って土魔法を繰り出す。
「ツブテ! ツブテ! ツブテ!」
硬さ、スピード、命中率を上げていく。
「プルルルル・・・」
音に惑わされ土魔法のコントロールが乱れる。
みんなが音の方向を見る。
鳴っていたのは、ヒナちゃんの端末だった。
ヒナちゃんは、みんなに見守られ端末のスイッチを押した。
「はい、お父様! はい……、はい……、わかりました。みなさんにそうお伝えします」
ヒナちゃんが端末を閉じた。全員がヒナちゃんの言葉を待つ。
「お父様から連絡がありました。魔物の繭の方に動きがあったそうです。調査団の見解では、数時間から1日ほどで目覚めるそうです。みなさん準備を急いでくださいと言うことです」
「早ければ1時間程で目覚めるかも。ってことだぞ」っと、マリアちゃんが言った。
「では、準備を整え出発しよう。そして、いつ目覚めても対応できるよう、仮眠や休息は繭の側で取ろう」
「えっ! でもまだ魔法が……」
「コトコ、休んだほうがいい。飛行魔法と土魔法があればいいだろう。ヒッポちゃんを倒すわけではないのだろ?」
「コトコちゃんには、ハンマーも防具もあるんだよお。大丈夫だよお」っと、クリスティちゃん。
「そうだぞ。それより、お風呂に入った方がいいと思うぞ」っと、言ってマリアちゃんの視線はあたしを上から下へ、下から上へと往復した。
あたしも見える範囲を自分でチェックした。状況は悪化していた。確かに酷い有様だ。
「そ、そうだね……。分かりました。では、お風呂に入って着替えます」
あたしは、お風呂に入って丹念に体を洗い清めると、服を着るため17才モードに変身した。
そして、古の魔女の装備に着替えた。
古の魔女の装備はまるで新品のように、美しく、清潔で、いい匂いまでした。たぶん、なにものからも汚されない。効果が付与されているのだろう。この耳と尻尾さえ無ければ完璧だったのに……。
隣では、マリアちゃんも正装に身を包んでいた。
「おお、マリアちゃん奇麗だよ」
「ほんとです。綺麗です」
褒めてもなにも出ないぞ。
クリスティちゃんは、マリアちゃんの横でなぜか誇らしげだ。
「では、マリアさん、クリスティさん、ヒナさん、参りますか!」
「コトコ、それはなんの真似なんだ?」
「さあ、なんとなくです」
お楽しみ頂けたら幸いです。まだ続きます。気に入ったら次話もよろしくお願いします。




