第3話 本当にあったんだ!
しばらくすると、キクノさん、レナードさんが帰宅してきた。レナードさんは、帰るなり何時ものように抱き着いてきた。そして、ほっぺたにスリスリする。あたしは抱き着かれながら、照れた顔で二人の友人に目をやった。二人は、茫然としていた。
「レ、レナードさん、今日は友人がきています」
レナードさんは二人に気が付いた。あたしから離れると今度は二人の方へ。
「おおー、キミたちがコトコの友人の」っと言いながら両手を広げて近づいて行く。
ビクリッ! っとする二人。キクノさんが両手を腰にやり、仁王立ちで間に立ちはだかった。
「ダメだったかな?」
「二人とも怯えてるじゃない」
「済まなかったね。いつもの調子で振舞っちゃって」
レナードさんは、いい笑顔を二人に向けウィンクで誤魔化した。
「さあ、みんな奥へ行きましょう」
クリスティちゃんは、お盆を持って立っていた。
「あれ、お茶のカップ、下げてくれたの? あたしがやるのに」
あたしは、クリスティちゃんからお盆を受け取ろうと、前に回ろうとした。そのタイミングでクリスティちゃんが振り向いた。交錯したあたしたちは、接触し床に倒れ込んでしまった。ガチャリンとカップの割れる音がした。
「あててて、ごめん、クリスティちゃん大丈夫だった?」
起き上がり、顔を上げるとクリスティちゃんの腕が赤く染まっていた。ぽたぽたと赤いものが床に滴った。
「ク、クリスティちゃん……」あたしは、茫然としていた。
マリアちゃんが駆け寄った。
「クリスティ、見せて!」
クリスティちゃんは傷口から顔を背け、腕を差し出した。
「結構ひどいな」
あたしの頭は真っ白になっていた。オロオロしていたと思う。
「早く治療しないと!」レナードさんが動きだした。
「大丈夫です。ぼくがやります」
そう言うとマリアちゃんは、手のひらを傷口にかざした。マリアちゃんの表情が鋭くなった。魔法陣が一つ、二つ、三つっと三重に展開する。そして、眩い光を発生した。歯車の様に回転する魔法陣、見る見る傷口が閉じられた。
あたしの体温は急上昇した。そう、興奮していた。キクノさん、レナードさんの視線は一点に留まっていた。クリスティちゃんは、マリアちゃんに「いつもありがとう」っとほほ笑んだ。
「…………」
「ま、魔法みちゃった! 魔法は本当にあったんだーーー!」あたしは、拳を上方につきあげていた。
「なにやってるんだよ、コトコ」
みんな呆れた顔で、あたしを見ていた。
その後みんなで、お風呂に入った。レナードさん以外。レナードさんは、しょんぼりしていた。
「マリアちゃん、魔法使えたんだね」
あたしは、クリスティちゃんの腕をガン見し、肌をナデナデしながら話した。
「少々使えるだけだよ」
マリアちゃんは、ゆったりと湯船に浸かりながら言った。
「空飛んだり出来るの?」
「そんなのは、エルフとか魔法を探求してる人だね」
「あたしにも使えるの?」
マリアちゃんは、身を起こすとあたしの方を見た。
「まず魔力が必要!」あたしは、頭を縦に振った。
「魔力は多かれ少なかれ誰にでもあるんだけど、魔力が少ないと魔法は使えない。魔力量は家柄と言うか血筋かな。そして、素質」
「なるほどー」
「また、魔法のスペルを勉強しなければいけない。その上、魔力量が下がらないように、日々のトレーニングが必要」
「えっ! なんか筋トレみたいだなー」
「それいい例えかも、トレーニングがけっこう辛いから、だから衰退してるんだよ。科学や技術の方が便利で楽だからね」
「やってみたい!」あたしは、キラキラした目でマリアちゃんに訴えた。
「ちょっと待って、今から魔力を測定するから」そう言うとマリアちゃんは、あたしの額に手をあてた。
「うんーん!? 微妙だなあ」
「えっ! 使えるかも知れないの?」
「頑張れば少しは使えるかも」
「おおー! 教えてよ!」
「じゃあ、休み時間とか隙間時間に教えるよ」