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ラヴ・レター  作者: くわとろプロジェクト
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第5話 どっちがひどいのやら

久しぶりに里菜と電話で話している。一週間の入院を終え一旦家に戻って来ている。

この期間僕は仕事で時間が取れずに一回も病院に行くことができなかった。ほんと申し訳ないと思う。

「ごめんな、里菜。手が離せない業務が続いていて結局行けなかった。埋め合わせはするから」

「うん、良いよ。今回は検査も含め、今後のためだもん。基樹も忙しいしあまり気にしないで。でも、埋め合わせはしてもらうよw」

「おいおい、やっぱりそうなるのか」

うん、里菜と話していると胸の奥が熱くなってくるよ。

「でも辛くなりそうな時は基樹の手紙読んでたよ。いつも遠くで見守ってくれてるのが嬉しい。こうやって電話でも直接話しているともっと嬉しくなるし、ありがとう、基樹」

大したことは書けなかった手紙だけど里菜の力になれているのなら僕もほっとする。

「再来週の日曜にはそっちに行けるからもう少し待ってて」

「うん、待ってる。また空港まで迎えに行くよ。あたしは運転しちゃダメって言われたからお父さんと一緒に来るね」

ここからの二週間は長く感じることだろう。同じ時間が過ぎるだけなのにきっと・・・。


あの日から毎日電話で話していたのだが、再入院が決まったらしい。

いよいよ本格的な治療に入るようだ。詳しくは直接聞くつもりだ。

目の前でお袋を見てきた経験からなんとなくわかる。治療の凄まじさ、キツさ、終わりを感じられない果てしない苦痛。

なるべく里菜のそばにいてやりたい、可能な限り。


今回の休みは会社の了承を得て長めに取ることができた。

空港に降り立つとすでに里菜たちが待っててくれた。

「久しぶり。元気そうじゃん里菜。お父さんお久しぶりです」

合流した後そのまま里菜の実家へ。一人暮らししていた部屋は引き払ったらしく段ボールに入ったままの荷物がたくさん重ねてある。

「こんなに荷物あったのか?」

「そうだよ、女の子はたくさん荷物があるのですw」

再入院は二日後。それまではある程度自由に過ごせる。

「基樹、ドライブ行こう!少し遠くまで行きたいな。しばらく帰ってこれないし」

その言葉に里菜のお母さんが反応した。

「そうね、基樹さんお願いできます?今日は泊まって明日帰ってきてもいいんじゃないかしら?」

「はい、それはいいですが・・・。どこにも予約なんてしてませんよ」

「それなら準備オッケーでーす。お父さんのお友達が経営している海沿いのホテル取ってまーす」

あらら、そうなのか。

「わかった、じゃあそこに行ってみるか」

「うん」

親御さんに改めてよろしくとお願いされた。


僕も久しぶりなドライブ。道中二人でいつものように笑い合いながら目的地を目指す。

これからのことなど考えないように現在を楽しもうと約束した。

途中海岸を歩きたいと里菜が言い出すものだからシーズン外な海水浴場でしばらく海を眺めていた。

「ねえ、基樹、私のこと重荷になってない?ただでさえ遠距離なのにあたしが病気しちゃって」

「そんなこと思ってないよ、本当に。俺は里菜の目の前にいるでしょ?いつも一番近くにいたつもりだよ。これからもそう。重荷に感じてたらここにはいないよ」

隣を歩く里菜の手をしっかり握りしめる。

「そういうと思ってましたー。基樹は絶対優しい言葉をかけてくれると確信してたよ」

こら、人を試すようなことしやがってw

里菜の頭をコツンと軽くグーパンチ。

「ひどーい、女に手を上げるなんてサイテーな彼氏だな〜」

「どっちがひどいのやら」

ホテルにつき準備されていた食事をとり夜を明かした。

いよいよ今日が入院する日か。今日も里菜よりも先に目が覚めてしまった。

こちらを午前中のうちに出発しないと遅くなっちゃうな。

一番不安なのは里菜だろうに、僕の前では気丈に振舞うんだよな。

窓から見える海を見つめていた。どうか、里菜を・・・。

祈りなんか信じていない僕だけどこの時ばかりは神様を信じてみたくなった。


多少時間はずれてしまったが、予定されていた通り病室に入ることができた。

「消灯までいるからな」

とベッドの横に座り込む。里菜の親御さんはひとまず帰宅してもらった。明日またここで合流する予定だ。

そこへ一人の看護師が入ってきた。

「あ、穂乃美。またお世話になるね。基樹、前に言ってた中学の同級生の穂乃美です」

「よろしく、穂乃美さん。里菜がお世話になってます。基樹って言います」

聞くところによると、中学時代はさほど一緒に遊んでいた訳ではないらしい。友達の友達のような位置付けだったようだ。進学先も違っていて疎遠になっていたが、たまたまここの病院に里菜が入ってきたものだから昔話に花が咲いたそうだ。

なるほどね、ガールズトークってやつですか?

「基樹さん、よろしくお願いします。あなたのことは里菜からいろいろ伺ってますよ。とても優しい彼氏さんだとかw」

「笑いながら言われてもな〜。おい、里菜、変なこと話してないだろうな?」

「え〜、変なことってなにかな〜?わかんな〜いw」

二人におちょくられとるわ、女子が複数で組むとすごいよねw


病院での生活もこれなら多少は気が紛れるかもしれんね。少し安心できる。

しばらく3人で話していたが穂乃美さんは次の病室へ移動して行った。

そのあとも二人でいろんな話をした。

少しでもできるだけ里菜と時間を共有したかった。

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