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ラヴ・レター  作者: くわとろプロジェクト
12/17

第12話 あたしが作ってたアルバム持ってきて

「再発してるんだって」

今回の検査結果を聞いてきた里菜が僕に言う。

まさかと思っていたことが現実になってしまった。これじゃ、お袋の時と一緒じゃないか。そんなバカな。

「これまで何か変わったことがあったのか?いきなり再発だなんて」

「う〜ん、ちょっとダルい時があったけどそれ以外は特になかったよ」

そうか、そうなのか。気づいてやれなかったのか。

「今後はどうするんだ?」

僕も一緒に結果を聞きに行ければよかったんだが、都合をつけることができなかったことが悔やまれる。

でもそんなことはどうでもいい。これからが大事なんだ。

「お父さんたちとも話し合ったんだけどもう一度入院して治療に専念しようと思ってる。ここでしっかり治して基樹と暮らしていきたいの」

やっぱりそうなるか。一瞬目眩がしたがしっかりしろ、俺。

「わかった、そうだな。ここで完治させよう」

せっかくこれからと言う時にこうなるとは思っていなかった。

いや、どこかで不安もあったのは違いないが。まさか、ここで。


再入院当日には僕もつきそう。説明も聞きたかったし。

主治医の先生は変更なく、担当してくれるそうだ。

「以前の手術で腫瘍は摘出しておりますが、別のところで発症しております。現段階ではまだ小さく、放射線治療と薬の投与で進めていきます。ただ、今回の薬が強くなりますので身体への負担も増えてくるかと思われます」

副作用が強く出るらしいと。今後の進行度によっては手術もあり得るということだった。

一旦大部屋に入ることになった。前回は個室での治療だったので話し相手には困りそうにないが。

「基樹、ごめんね、またこんなことになっちゃって。でもあたし、もう弱音なんかはかないよ」

「うん、それでいい。一番は病気を治すことだからな」

しっかりお互いに手を握り合う。今、この瞬間の温もりを感じるために。


早速翌日から治療が進んでいく。

説明にあったように副作用が現れてくる。女性にはショックだろう。

「あーあ、基樹どうしよう、髪の毛がどんどん抜けちゃうよ。薬が入ってくるとすごくキツイんだよね」

こうなるであろうと考えていた。そこで買ってきたニット帽を里菜に渡す。

「はい、これを被っていれば目立たないだろ」

「ありがとう、買わないとなーって思ってたんだ。さすがに経験者はちがうねw」

治療後の身体は重く感じるはずなのにそう見えないようにしてるのがわかる。

「経験者って言ってもな、だいぶ前の話だからな」

たぶん里菜のことだから、夜になるといろいろ考えているんだろう。よくない方向へのことも、そうでないことも。

「基樹、今度病院にくる時に、あたしが作ってたアルバム持ってきて。あれを見たいの。寝る前とか見たくなるの」

「うん、わかった、持ってくるよ。二冊あったけど、両方持ってくるよ」

いつの間にかアルバムも二冊目に突入していた。


治療日数が増えてくると少しずつ里菜に変化が起こる。だいぶ痩せてきてる。

本人はダイエットになるからとバカなこと言ってるが。そんなわけあるか。

目眩や吐き気に襲われるのも増えてくる。

今回は穂乃美さんが担当ではなかったが、時間が取れた時に様子を見にきてくれた。

「里菜、なにかあったらすぐに言ってね」

「うん、穂乃美ありがとう。でもこんなに薬が強いって思わなかった。結構キツイね」

「そうね、一番強い薬だから。でも、病状も落ち着いてくれば少しずつ弱くなっていくわよ」

穂乃美さんとしても友人のこう言う姿は見たくないだろう、いくら仕事とはいえ。

「ねえ、基樹、穂乃美って可愛いでしょ。学生の時はあまり話さなかったけど、可愛いって人気だったのよ」

「人気者だったか、納得だね。今じゃ白衣の天使かw」

「基樹、鼻の下のびてるわよ!」

なんだよ、それ。里菜から振ってきた話だろうが。


ある日、里菜の親父さんから連絡がきた。

会いに行って話をしてみる。

「基樹くん、すまない、いきなり。里菜のことなんだが・・・。先生が言うにはあまり状況はよくないらしい。薬で押さえ込むのも難しいと」

「いえ、僕は構いません。押さえ込むのが難しいとなると、手術ってことですか」

「そうだ、手術をと。前回とは違う場所らしいが」

また目の前が真っ黒になりそうなのを耐えていた。再手術だとしたら。

「やはりそうなりますか。今回の入院でそこが怖かったです。病気の進行も早いのではないかと思って」

「私も妻も基樹くんと同じことを考えていた。娘がこれ以上切られていく姿を見ていられるかと思うんだが、そうしないと今以上に里菜が・・・。本当に悔しい。里菜と君に申し訳ない」

「いえ、お父さん方は何も悪くないじゃないですか。また一緒に里菜を説得しましょう」

「ありがとう、本当にありがとう」

後日里菜と話をすると言うことでまとまったが。

本当にこれでいいのか、もっと別の方法もあるのではないか、自問するが答えは見つからない。

帰宅してベッドに倒れ込む。なんでこんなことになる。手で顔を覆うが間から涙が流れてくる。

こんなことがあっていいのか。僕は悪魔に心臓を掴まれているような感覚になっていた。

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