#09 黒は白で光り輝く
私は、空が黒く澄んでいて、しっかりと暗さのある時間帯の彼の部屋に、初めています。
私の瞳というものは、外が暗くても、明るい部屋のなかでは常に、黒い彼が映えて見えるのです。
私には、黒い人が彼一人しかいない、馴染みのある彼の部屋にいるときだけが、安心出来る時間となっていました。
私がそう思った理由はもうひとつあり、彼が彼の部屋にいないのに、他の黒い人が代わりにいるなんてシチュエーションはないから、安心出来るというのもあります。
私には、一人暮らしの彼の部屋が唯一、彼に深くまで入り込める、黒さのない場所なのかもしれません。
私が心を許した数少ない人として、気付けば彼に、黒の溢れる世界の街中にいるときの不安などを、投げ掛けていました。
私が求めていたものとほとんど変わらない言葉である、絶対にこの手を離さないという言葉を、彼は私の黒目を見つめてしっかりと言ってくれている気がしました。
私の身体を通された声や表情には全て、黒いベールという名の修正が掛かってしまっていました。
私には、彼のオーラが白っぽいか黒っぽいかも分からず、本音を読み取る術はありませんでした。
私の心に通じるように、彼の気持ちがしっかりとした黒い輪郭を伴ったものとして、目に見えたら嬉しいのになと思っています。
私は彼のことをしっかりと捉えようと、視線を思い切り刺していくと、彼の黒いシルエットの周りに、うっすらとキラキラが見えてきました。
私は最近になって、他の黒には現れない、彼の黒の周りにしか現れないキラキラが見えるようになってきました。
私の特別な存在に彼が変わってきていて、全部の黒の中で一番特別な存在だというサインなのでしょうか。