#04 黒い彼氏たち
私は歩く黒や、立ち止まる黒と擦れ違いながら、待ち合わせ場所までの道のりを歩いています。
私はこれから、黒いながらも、一番白に近いと感じた彼との一般的なデートを、思う存分楽しむつもりです。
私には、全人類が黒い人にしか見えないという特殊な症状があるため、それが一般的なデートをいつも邪魔してきます。
私はずっとずっと、他の黒い人なのか彼なのかを、パッと判断することが出来ないままなので、会えた喜びの時間差は否めません。
私のことを心配する彼は、オレオレ詐欺のように、彼になりすましてくる腹黒男たちには気を付けろよと、よく私に耳が潰れるくらいしつこく言ってきます。
私は自分が無力だと感じる瞬間が多々あって、黒板に書かれたチョークの文字のように、そのネガティブな気持ち全部が消せたらいいのにと、いつもいつも思っています。
私はたまたま、盗難事件の現場に居合わせたことがあって、犯人の特徴を聞かれたのですが、黒以外の情報が入ってこなかったので、何も答えられませんでした。
私は触覚が平均より僅かに優れていると思っていますが、触覚がほんの少し優れているだけでは、初対面の黒い人の前では無力で、どうすることも出来ません。
私という人間を作る段階で、こうなることが分かっていたなら、触覚以外にどこか一つでも、黒くて太いハッキリとした特徴を作ってほしかったと、常に思っています。
私は一生懸命に気を張って、これから来る彼を迎い入れて、黒糖のような甘い気分を必死で追いかけようと思います。