#12 黒の壁
僕は彼女の友達がいたから、今日の待ち合わせの時に、彼女と出会うことが出来た。
僕ではなくても感じることだと思うが、彼女の友達はオーラが全然他の人と違うから、すぐに分かる。
僕はその友達がいれば、また彼女とすぐに会うことが出来ると思っていた。
僕の想像通りには進まず、彼女の友達は急な仕事があると言って帰ってしまった。
僕は離ればなれになった彼女と、早いうちに合流したいと思っている。
僕は彼女に会いたいのに、目が悪いこともあって、彼女の黒い服の特徴も覚えておらず、特徴がほぼ頭にない。
僕のこの症状は、対象とする人物の髪型さえも、ぼやけてしまうほどで、頭が真っ白になった。
僕のなかの絶望感が高まるにつれて、見つかる予感が、段々と薄れてゆく。
僕は今日初めて、彼女と一緒に夜を明かすことになっていたのに、どんどん時間は過ぎてゆく。
僕の彼女は、周りの声を耳の中で、全て同じものに変えてしまうという特性があり、少し怖いという理由で、スマホは持っていないのだ。
僕の彼女が午前中で見つかればいいが、見つかっていない時間の分だけ、一緒に過ごす時間は短くなる。
僕と彼女が、再会して向き合うことが出来たなら、この症状を打ち明けて、もっと深くなりたいと思っている。
僕以上に苦しいはずなのに、いつも優しい笑顔を見せている彼女を誇らしく感じ、もっと大好きになった。