白い猫(改)
少しずつですが書き直しています
書き直しの部分は(改)となっております
雪音は事務所で石を眺めていた
常時この石の中にある何者かが動いているのなら価値はあるかもしれない
しかし、そういう気配は感じない
雪音には霊感と呼べるものが無いからかもしれない
だからこういう物に囲まれても怖い思いをする事もなく平常心で居られるのだろう
とりあえず、ライトを当てながらその光の影を録画してみよう、なにかが分かるかもしれない
雪音は石を光に当て24時間監視することにした
これでもし何かが映れば価値が上がるかもしれない
いや、待てよ、もし映ったのが恐怖の対象ならやはりだれも買おうと思う人はいないか・・・
どちらにせよ何かが映し出されなければ話にならない
そう考えていた
次日録画した映像をチェックする、僅かな動きが無いか調べる作業はなかなか大変だ
お昼を過ぎた位には目を真っ赤にさせた雪音が居た
すると夕凪から電話がかかってきた、そういえばもう学校が終わったくらいの時間か
雪音が電話に出ると、篤からの声がまた聞こえたらしい
この石に事もあるし、そういえば夕凪には霊感があるようなのでこの石を見てもらうのも手か、そう思った雪音は夕凪を迎えに行った
夕凪が事務所の扉を入って瞬間、それと目を合わせてしまった
「うわああぁっ!」
「え?なにか見えるの?」
「あれ?見えてなのですか?・・・そうなんですか・・・、前もって言ってくださいよ、驚くじゃないですか・・・」
「あ、ごめんごめん」
見えないということはつくづく幸せな事なんだなと実感する
石から地面の間に裂け目が生じそこから誰かが覗いている
たしかに一瞬はぎょっとするが敵意は無さそうだ
夕凪が石のある方を凝視していると雪音はその場所にいき手を振りながらかざしている
雪音には裂け目に触れても影響がないのだろう
「とりあえず、こっちに座って話でもしようか」
雪音は声をかける
裂け目からの視線はこちらを追いかけている、その目を気にしながらソファーに座る
「これは一体どういう状況なのでしょうか?」
夕凪は尋ねた、雪音は一連の出来事を夕凪に話をした
その話を聞いている間も裂け目から除く視線は気になったが、よくよく観察すると恨みや妬みなど一切感じない、むしろ視線さえ気にしなければ初めて見たときに驚き以外はなにもない
恰好や大きさからして子供なのは間違いないが少女なのか少年なのかまでははっきりしない
雪音から経緯を聞いている途中で急激な眠気に襲われる
特に先日から夜更かしをして寝不足と言うわけでもなもないのに、この急激な眠気は異常である
しかし、頭が付いていかない、雪音の声が遠くなっていく
眠くて前のめりになりそうな瞬間、肩を掴まれ後ろに倒されていく
当然、後ろにはソファーがあり背もたれがあり、後ろに倒れることはないのだが
背もたれにぶつかることなくスリ抜けそのまま後ろに倒れた
地面に倒れたような感覚の後、その場に立ち上がる
ほんの一瞬の出来事であったが、目の前の景色が変わっていた
目の前には全く身に覚えのない場所に来ていたからだ
周囲は森に囲まているがどこか神聖な場所に感じた
目の前にはなにかを祭っているのか小さな祭壇がある
祭壇の中央には何かが祭られているが、白い布で隠されていて見えることはない
その周囲には木の実などが備えられている
祭壇を観察していると、人の声が聞こえてくる
誰かがこっちに向かってきているのだ
夕凪は周囲の茂みに隠れた
夕凪と同じくらいか少し年上くらいの、若い女性たちが祭壇の前に姿を現す
女性たちの中には1匹の白い猫も一緒に混じっていた
女性たちは祭壇の前になにかお祈りのようなことをしている
その間、白い猫は横で大人しく座っていたのだが、夕凪の姿に気が付いたのか近寄ってきた
夕凪は頭に指で角を立てるようにしてこっちに来ないでとアピールするが、そんなことは猫には通用しない
猫は夕凪にスリスリするとスカートの裾を口で引っ張る
「あ、ダメダメ」
思わず声を出した後に立ち上がってしまった
意味のないことかもしれないが両手で口を塞ぎその場に立ち尽くす
しかし、目の前にいる女性たちには気づく様子はない
ゆっくりと女性たちに近づき目の前に立ったり手を振ってみても、女性たちはお祈りを続けている
やっぱこの人たちは気づいていないんだと少し安心した
祭壇の脇で眺めている、夕凪の脇には白猫が座る
やがて、お祈りは終わり女性たちは帰っていく、他の女性たちが階段を下りていく中
1人の女性がこちらに近づいてくる、猫を迎えにきたのだろうか
女性は膝まづき夕凪に話しかける
「どなたか存じませんがどうか私たちをお守りください」
「そ、そんな、やめてください」
夕凪が手を振りながら声をかけるが、どうやら声は届いてないようだ
この女性に自分の姿がどのように映っているのか、はたまた感じているのかは夕凪にはわからない
しかし、この女性にはそういった能力があるのだけは理解ができた
恐らくとなりで白猫が寄り添っていたことで恐怖の対象からは外れたに違いない
白猫もこちらを見ていた
女性が白猫を連れて帰ろうと階段を降り始めたときに、階段下から男の人が叫びながら走ってきた
「来たぞ!海賊だ!海賊が来たぞ!」
女性の足が止まった
男が女性の前に立ち止まる
「アキ、そこのご神体を持って逃げてくれ」
「シゲさんは?」
「おれは皆と戦う」
「私も一緒に戦います」
海岸添いの村の方から悲鳴と怒号が聞こえてくる
階段の下から村人たちも逃げてくる
「とにかく頼んだぞ」
シゲは念を押す感じでアキの肩を強く握り村の方へ走っていく
アキはご神体を手に持って逃げる、ここも直に海賊共がやってくるだろう
村が一望できる場所まで走っていった
白猫もアキを追いかけようとしながらもこちらを見ている、どうやら一緒に来るように言っているようだ
村が一望できる茂みに身を隠し村の様子を伺う
村人たちは海賊と激しい戦いを繰り広げている
村人たちの命が一人、また一人と消えていく
そんな中アキは村から少し離れた岩場で戦いをしているシゲの姿を見つける
どうやら1人囮になって海賊たちを数人引き付けているのだろう
すでに4-5人の海賊たちが横たわっているが、今戦っている海賊の1人はどうやら手練れらしい
シゲは徐々に追い詰められていく
アキはシゲに向かって走り出す、白猫もそれを追いかける
白猫はアキを追い越し、シゲを襲っている海賊の背後から足にかみついた
海賊が怯んだ時と同じくしてアキもご神体の石を取り出し海賊へと投げつけた
それに気づいた海賊が石を刀で弾くもそれと同時にシゲの一撃が海賊の体を貫く
刀で弾かれた石は海へと沈んでいく、
アキはシゲに抱き付く、ほんの一時二人はお互いの無事を確認したのも束の間
「まだ村の連中を助けないと」
とシゲは村の方へ走り出す
ご神体を投げつけた事への謝罪なのかアキは夕凪むかってお辞儀をした後
海賊の持っていた武器を拾いシゲを追いかけていった
海に落ちた石を気にする白猫、夕凪に何かを託すような感じ見つめながらアキたちを追いかけていった
夕凪も追いかけようと数歩、走り出したが急に日が陰り夕方となる
あまりの一瞬の出来事であったが急に空の色が変わった事で時が経過したことは感じ取れた
気配を感じ振り返ると白猫が石を見守るかのように座っている
やがて白猫は日が沈むと同時に夕凪に気づかれることなくどこかへ帰っていった