猫島へ行く(改)
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変更後は(改)を付けております
雪音はいつものようにパソコンに向かい倉庫内の調べ物をしていた
地下2階の事務所の他は倉庫になっている、倉庫の中身は心霊関係の物が保管されている、雪音はそのリストを眺めていた
・牙狼の首飾り
日本狼の牙と翡翠で作られた首飾り、絶滅種のため希少価値があると思われたが値が付かなかった。
《 説 明 》--合戦でのお守りとして作られた首飾りであったが持つ者を選ぶ、選ばれし者は鋭敏な感覚を身に着けることができる、しかし、選ばれない者はすべて絶命している、共通点は首に狼に噛まれたような傷が残っている
「刀で切りあいしている時代なら価値はあったのかもしれないが、現代ではリスクが大きすぎて誰も使わないだろうね」
誰もいないオフィスだが、近くにはクロが居た、猫の時と修正が似ているのか、雪音が使っていた座布団で寝ている、お気に入りのようだ
・熊殺の剣
切るための剣ではなく血を吸わせるような作りとなっている呪いのアイテム、使い手にも影響がでる
《 説 明 》--家族を熊に殺されたハンターが熊を殺した弾と鋼で刀身を作り、殺した熊の皮を煮詰めた油を上塗りした呪われた剣、鉛の量から計算され50頭は下らない、ハンターは熊殺しの際に手傷を負い、この剣がハンターの血を吸ったことで、ハンターは謎の死を遂げる、それ以来、この剣に血もしくはそれに準ずる供物を捧げると相手は呪い殺される、しかし使った側にもなんらかの呪いを受ける
「そもそも、殺したい相手の血を手に入れること自体難しいのでは・・・」
・邪眼の猫目石
昔昔、高位の呪術師が義眼に居れていたとされる、金に困った宗教家が売りに出したもの
石の効果は不明、過去に試した者がいるがなにも起きなかった
しかし、石は通常の猫目石と違い真ん中にもう1つ猫目の形をした模様が横に入っている
石としての希少価値は高い。
「石に関する物を調べていても似たような例はないか」
机に脚を乗せ、椅子の背もたれで伸びをしていると携帯に電話がかかってきた
猫時まで診療所に勤める医師から石に関することで相談したいことがあるらしい
「医師が石?」
思わずクスリと笑いそうになったがそんな事が笑いのポイントになるなんて、もしかしてオジサン化してきたのではと思うとすぐに冷静になった
夕凪の石の秘密のヒントになるかと思いすぐさま出発にとりかかる
調べてみると朝から出れば日帰りで帰れる距離でもある、善は急げだ
お昼前に港に着く
「これなら13時出発の船に乗れそうだな」
港から島までは船で30分ほどで到着する
そういえば海に来るなんて何年ぶりのことだろう、久しぶりの潮の香りを思いっきり肺に吸い込んだ
近くの売店へ行きおにぎりで軽く食事を済ませた
13時、定刻、船に乗船し出発した
船に乗ると島民らしきおばあさんが声を掛けてきた
「娘さんは島には観光に来られたのですか?」
こういう所にくると必ずと言って身上を聞きにくる人がいる
「いえいえ、島の診療所の越野先生に用事があってちょっと仕事で向かうところです」
「そうでしたか、越野先生は島でも有名な猫好きでね、島の猫たちご飯代も先生が一番寄付してくれているのよ」
とりとめの無い身の上話などを混ぜながら得られた情報からは
1週間前に台風の影響で高波が来てからフナ虫が大量発生しているくらいしか気になる点はなかった
島に着き船を降りると猫たちが港で歓迎してくれていた
同じく下船した観光客たちの女性は猫達の写真を必死に撮っていた
たしかにフナ虫は多いかしれないが大量にいるとは感じなかった
おばあさんは診療所の場所を教えてくれた、歩いて行ける距離である
雪音は猫が大好きだ、猫たちもそれをなぜか感じ雪音に寄って来たり、後ろを付いてきたりしていて非常にかわいい
人間が遠い過去に忘れてきた交信手段を猫達は持っているのかもしれないとつくづく思う
診療所までの間、道や民家の壁にフナ虫が目に付く、そこに住んでいない人間でも気になるくらいだ、たしかに普段から見慣れているはずの住民が言うくらいだから多いのかもしれない
診療所に着くと、最後の患者さんが帰るところだった。
「すいません、Z社製薬の宮地雪音と申しますが、越野先生は・・・」
と受付で声をかけると同時に越野先生が姿を現した、60歳近いであろう見た目だったが実際はもっと年齢がいってそうだ
「遠いところご苦労さんだね、君が雪音さんかね、噂は耳にしているよ、さぁさぁ、こっちの部屋に来たまえ」
「失礼します」
今先生は噂と言ったね、どんな噂が飛び交っているのやら、あの爺どもは初対面の人に一体何を吹き込んでいるのやら・・・
「そこのソファニーかけてくれたまえ、島なので無いもないけど、お茶で良いかね?」
「はい、ありがとうございます」
「ところで雪音さんは、猫は好きかね?」
「はい、昔猫を飼っていたもので、猫は大好きです」
「そうかね、それは良かった、僕も猫が好きでね、なんでこんな辺鄙な島に来たのかよく聞かれるんだけど、”猫が好き”ただそれだけの理由でここに居るんだよ」
「そうでしたか、この島の猫たちは人にすごく友好的で可愛いですね」
「ははは、気に入ってくれて嬉しいよ」
「とりあえず、お茶を入れたのでソファーに座って本題に入ろうか」
「ここに来るまでの間に、気が付いたと思うが、1週間前からフナ虫が多くてね、家の中にまで入ってくる始末だ」
「私はね、海岸を散歩して、漂着する珍しい物を集めるのが趣味でね、ここに並べてあるものもコレクションの1部なんだよ」
「ちょうど高波の後に同じく散歩していたら、奇妙な物を拾ってね」
その奇妙な像は木彫りで出来ており、姿は胴体らしい部分の上部のみで途中から折れているように見えた、おそらく下になにかがあったのだろう、頭部には目、鼻、口はあるが配置とバランスがおかしい、頭部は陥没していて脳の部分に何かを置くような場所があり、突き出た口の部分と穴が繋がっている、まるで漏斗のような作りだ、背中にはなにかが折れた跡がある、この感じだと翼でもついていたのだろうか
「それと同じく海岸で拾ったこの石なのだが」
丸い透明な石の外観は自然によって作られた可能性より人工的に作られた可能性の方が高いように思えた
越野はその石を窓際の太陽の光が当たる書類棚の上に置いた
太陽の光によってできた透明な石の影が真っ赤に光っている
「おお、これは珍しいですね、偏光石の類でしょうか?」
「うん、たしかにそういう石に含まれるイオンの関係でそういう特性があるのかもしれない、しかし、それだけじゃないんだ」
越野は書類棚に置かれた透明な石を持ち上げる
持ち上げられた石はまるでレンズの様に床にその光を拡大させた
「なかなかちょっと分かりずらいんですけどね、そこに影がありますよね、最初は石の傷かと思っていたのですが、なにかが居るんですよ」
「なにか・・・とは?」
雪音は返事をしながらその石の傷と思われる影となっている部分を見つめる
「この石が来てからなんだか見られているような気がしてね、ある時、日の光でが床に投影されたときに何かが動いたような気がして、ジッと見つめているとその時に確かに人の目のような物が一瞬こちらを覗いたのが見えたんです」
「そ、そうなんです・・・」
話を聞いた後、雪音は影の部分が気になって仕方がない
「それで、この石を引き取って欲しいと?」
「なんだか持っていても気味が悪いし、だからと言って海に捨てると、なんだかバチが当たるというか祟られるというか、とにかくこの石がある事で落ち着かなくてね」
「そういう事でしたらわかりました、この石には引き取られてもらいます、その像はどうします?」
「これは私のコレクションとしてここに置いておくよ、価値はないだろうけど、こういう歴史の感じる物が好きなのでね」
「了解しました」
雪音は石をカバンに入れ、お茶を飲み帰る支度をする
「あ、そうそう、この島の山の中腹に古い社があって、猫が港に居ないときはその神社に集まっているからもっと猫達と触れ合いたいなら行ってみるとよいよ、この島はそこ位しか見どころはないけどね」
「ここからだと歩いて10分くらいで着くはずだ、ここから民家の間を登っていけば道路にでるから、そこをしばらく進むと左に石碑が見えるからそこを登っていくと良いよ」
「わかりました、あとこの物を拾った場所も教えてもらってもよいですか、一応そこにも見てみたいと思います。」
雪音はこの石を拾った場所も教えてもらい診療所を後にする
まだ帰りの船の時間はある
ここからだと神社の方が近そうなのでそちらへ向かうことにした
言われた通り民家の間を抜け、道路を歩いていくと古びた石碑を見つけた
その階段を登っていくと早速、猫達が出迎えてくれた
猫たちは雪音の足をスリスリしながらまとわりついてくる
階段の上まで登ったところでベンチに腰を掛けた、周りを大きな太い木々で囲まれ、非常に歴史を感じる神社である、大きく深呼吸をしる、空気がとても澄んでいおり、ここだけ別の空間に来たような錯覚を感じるくらいだ
雪音は猫たちのおやつを取り出す
「次来るときはもっと持ってくるからね」
周囲にはだれも居ない、だから特に気兼ねもなく猫達に話かけることができる
猫達のおやつをやり終わると、ご神体があるであろう社に向かい手を合わせる
手を合わせていると社の扉の奥に1匹の白い姿が見える
他の猫と違いどこか貫禄があり神々しくも思える座り方をしている
この猫たちのボス?それとも最長老なのか、こういう場所に悠々と居るということはそういう存在なんだろうと思った
それも含めて手を合わせ神社を後にした
海岸は岩場が多い、石を拾った場所が見えてきた少し砂利になっている、その場まで歩いていく
ここで拾ったらしい
比較的綺麗な海岸だが海からの漂流物があちこちに落ちている、だがこれといって特に何も無い
毎日散歩に来ているのなら何か変わったことがあれば気が付くのかもしれないが、雪音には特になにかが変わっているようには見えなかった
その日、猫島を後にする