クロと桃花の出会い(改)
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清水桃花(21)は短期大学在学中、飲食店で始めたバイトでコミュ力に自信を付け、持ち前のコミュ力を生かし卒業後は営業職でB社に就職、入社してしばらくして早くも転勤の辞令が来た、離職者が出たらしくそこの穴埋め人事だ
転勤先の評判はあまりよくなかった、特に最近は女子社員の離職率が高いこと社内で噂になっていた
転勤と同時に引越しさせられ初めは大忙しだった
仕事は前任者が居ないため、上司から引き継いだ
大口のN社だけは慎重に対応するように念を押された
その他は仕事の内容に変化もなく、顧客が変わっただけで慣れた感じではあった
転勤後10日目、昨日はあまり寝れなかった、アパートの階下の住人が大音量で騒いでいたからだ
朝からダルイ、最悪の体調だと思い出社する
こういう時は悪い事が重なる、納品したN社は大口の取引先で不備があり、呼び出された
謝罪に訪問すると幸いにも社長の反応は非常にやさしかった
さらに2週間後、相変わらずアパートの騒音が酷い、いつ起きるか分からない騒音はテロに近い
体調が最悪なところに、またもやN社で不備があり再び謝罪する、上司から調査の指示があり、この日から残業が始まる、残業と騒音で疲労が蓄積されていた
さらに1週間後、また同じことが起きた、今回ばかりは今までやさしかった社長とは違い
「どれだけ損害が出たと思っているのだ、今後の取引を考える」と怒鳴られた
上司に報告すると、損害が出た分については責任をもって償えと言われた
この日以来、上司からの圧力により精神的、肉体的に追い詰められていった
ある日、いつものように夜遅く1人で残業をしていると上司が近寄ってきた
上司「今日N社の社長から連絡があって、今までの損害は許してあげようと、ただし、明日、場を設けたから、後は桃花君次第だ、くれぐれも失礼の無いようにお願いするよ」
上司は口元がやけにニヤついている
嵌められたのだ、退職した前任もN社の担当だった、退職後は次の担当が決まるまで上司が引き継ぐ、会社では当たり前の光景だが、ここでは違った、すべて上司が証拠隠滅していたのだ、すべて仕組まれていたのだ
上司「しかし、なんだ、あの社長にはもったいない気もするな」
上司が襲いかかってきた・・・
目の前には頭部から血を流し絶命している上司がいた・・・血だまりが大きくなっていく・・・
手に持っていた血まみれの壺を落とし崩れた
桃花はなぜこうなったのか、すべてにおいて後悔をしていた
疲れと寝不足で意識は朦朧としていた、しかし、そこには居るはずのない第3者の声が頭に聞こえてきてた
「殺してやる、殺してやる、殺してやる・・・・」
上司にも家族がいるだろう、いや、なにより自分の親、特に母親が思い浮かんだ、ここまで育ててくれた親になんて親不孝なことをしてしまったのだろうか・・・もう後には戻れない
「お父さん、お母さん、お姉ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・」
その場に泣き崩れ、これは夢であって欲しいと切に願った
その瞬間、ふっと目が覚めた、夢だったのだ
前日取引先と上司に怒られたのが影響したのか酷い悪夢だ
しかし、状況はあまり変わらない、むしろ夢と同じようなことが起きそうで怖かった
起きようと思うと、体が異様に重くて怠い、時計を見ると朝の5時だった
このまま眠りたいが、この体の怠さではいつもの時間に起きれる自身がなかった
重い体を起こし、なんとか冷蔵庫から飲み物を出し一口飲む、必死の思いで身支度をしアパートを出る
アパートの外はものすごい異臭がしていた、異臭に気付いた住人が何人か外に出てきていた
1階真下の部屋付近で数人集まっていた、なにがあったのか聞こうと声を掛けようとしたが、なぜかまったく声が出ない
自分の異変に気が付きその場は足早に離れた
このままでは電車にも乗れない、近くの公園へ行き、誰もいない場所で必死に声を出そうとするが全く声が出ない、会社へは行けない、むしろ声が出ないなんて上司に分かればさらに怒られそうだし、悪夢の出来事が頭の中を駆け巡る、このまま会社へ行っても嫌な予感しかしない、どうしたらよいか分からずベンチにうつ向いたまま座っていた。
◇
雪音の朝は早い、今まで1人だと思っていたがクロが近くに居ると思うと、なんとなく安心感もあって足取りも軽い、人の多い場所はクロも嫌うだろうと思い、できるだけ人のない公園の道を選んで通勤していた
するといつもは人の居ないベンチに誰か腰かけている、一瞬女性の悪霊かと思う程の嫌な雰囲気を漂わせている、いやむしろ人としての感じが事態がおかしい、自〇でもされたら誰も居ない公園で疑われるの面倒だ
声を掛ける?それとも引き返そうか?、悩んでいると
クロはその女性に近寄り、ベンチに登り、すりーっと体を押し付けるように女性の体を通り抜けた
桃花はベンチに座り気が失うほど思考を巡らせていた、もはや思考することさえも停止させたいと
すると誰かの気配を感じた、ふと見ると向こうから眼鏡を掛けた女性が歩いてきた、そしてその女性が近づいた瞬間、猫の声が聞こえたような気がした、ふと顔を上げ周囲を見渡しても猫の姿はどこにもない
不思議とさっきまで重かった体が嘘のように軽い、そして声も出せる気がした
思わず近くに居た女性に「ありがとうございます。」とお礼を言っていた
雪音はびっくりした、今にも自〇しそうな人が急に元気になって声を掛けてきたのだ
「ああ、ん、まぁ、よく分からないけど、どういたしまして・・・」
雪音にはクロがなにをしたのかは見えてはいない、しかし、桃花には不思議とこの人が飼っていた猫なんかなと閃いた、クロは傍で手を毛づくろいしている。
「ところでさっき猫の声がしたように思ったのですが・・・」
「いいえ、気のせいかもしてません・・・」
「なんか顔色悪いけど具合でも悪いの?」
「具合と言うか・・・」
桃花その場で泣き出した、雪音も朝から困った事になったなと思いつつも同じくベンチに腰掛けとりあえず話を聞くことにした
桃花は今までの出来事を雪音に話しをした
その間クロは桃花の膝の上に乗って顎を手の上に乗せ落ち着いている
桃花は今日初めてあった雪音にすべてをぶちまけた、見ず知らずの人にこういう相談をしたのははじめてだった、そしてなぜかこの人に聞いて欲しい、不思議とそういう気分になっていたのだ
全てを聞いた雪音は
「その会社って、たしか・・・」
雪音にはなにか心当たりがあるのか、しばらく考えた後に
「まだ若いんだから、その会社とも縁を切りなさいよ、辞めたほうが良いよ」
「やっぱしそうですよね・・・そう思いますよね・・・なんだか今まで悩んでいたことをすべて話したら少し楽になりました」
そういうと桃花の中で何かが吹っ切れた様子にクロも満足そうな感じであった。
なにかあったら相談してねと桃花と連絡先を交換した、都会へ出てきてからの1人暮らしで相談する相手もいなくて寂しかったのだろう、とても喜んでいた、去り際も何度もお辞儀をしていた。
桃花の住んでいたアパートは問題がありそうだ、亡くなった住人の怨念か、そこに住む人の悪い気が影響したのか、悪い霊気が集まっていた桃花に影響を及ぼしていた、その会社の上司達もなにかしらの影響は受けるだろう
その予想は当たっていた、1階の住人は前任者であった、そしてその悪い気は桃花を通じて、上司達にもすでに纏わり付いていた、その後会社を辞めた桃花には知る由もなかった。
雪音は事務所についてからどこかに電話を掛ける
「小園さんの関連会社にたしかN社ってあったよね」
雪音はN社とB社の間で行われていた行為について関連会社のトップである小園にすべてを告発した
N社の社長が変わるのも時間の問題だろうと同時B社の方も自然と解決するだろう
「あ、それとB社の清水桃花って子、そのままじゃ居ずらいだろうからこっちで預かるからよろしく」
電話を切った後、なぜ自分らしくない事をここまで桃花の為に行ったのか少し疑問にも思いつつ
「ま、いっか」
すでに終わったことなので考えることを辞めた
◇
さっきと同じ時に公園のベンチに1人の品の良いご老人が座っていた、その傍にはサングラスを掛けた大柄な男が1人
そこへ別の男がなにやら細長い高価そうな鞄を持ってやってきた
男はご老人膝を付き鞄を差し出した
男「例の事件の刀を警察から回収してきました」
鞄のカギを外し蓋を開けると、すでに血を拭き取られた日本刀があった
「刀の時代が終わり、血を吸えなくなった呪物がこうも騒がしいとは、よぼど強い念が込められているのであろう」
「これでしばらくは大人しくなるだろう、例の山の社に保管しておいてくれ、くれぐれも人の手に触れないよう厳重にな」
「はい、わかりました」
男が立ち去り、ご老人は腰を上げ
「さて、帰るとしようかね」と顔を上げると左目には見たことのない爬虫類の目のような模様の黒く赤い石が埋め込まれていた