試作機テスト その4
薄暗かった森の中を突き進むミクの視界が明るくなってくる
「距離50m、..3...2..1...」
走るのに慣れてきたミクの最後の歩幅は8メートル近くまで伸びていた
男が視界に入ってきた時には勢いがあり過ぎて山道を飛び越えてしまいそうな勢いだったが
なんとか着地したモノの地面をエグリながらなんとか止まることができた
「力加減が難しいなぁ・・・」
「17.28秒、世界記録デス」
「え?」
ディスプレイに数値が表示される
「距離284m、歩数54、平均歩幅5.3m、1歩辺リ0.32秒、平地予想11.52秒」
「うわー、こりゃ本格的に人間辞めないといけない数値ね」
「さてと」
ミクは男に視線を向ける
急に現れた自分の異様な姿に目の前の男はシャベルを構える
男の手に持っていた物は投げ出され白い布から飛び出た中身が地面に転がる
地面に転がった生首の目は繰りぬかれていた
それにミクは思わず目を背ける
「なんて酷い事を・・・」
目の前の男になぜこんな酷いことをするなどと問い詰める会話など必要はない
むしろ相手もそれを望んでいないのもすぐにわかった
男は変な奇声をあげながらすぐに襲ってきたからだ
「A2大丈夫?」
「オマカセクダサイ、戦闘モードニキリカエマス」
ECP-01の形状が変化していく
「コノ程度ノ攻撃ハ問題ゴザイマセン」
ミクはなにもしない、ただその場に立っているだけだが、男の攻撃をすべてECP-01が白い部分を変化させ防いでいる、男の打撃の数値がディスプレイに表示されていく
「なんかゲームの画面を見ているみたい」
男は普段からあまり鍛えていないのか初撃こそ200kgを超えたが十数回くらい叩くと次第に力も弱ってきていた
「15kg・・・もう終わりかな?」
ミクは腕を組み男に話しかける
その言葉に反応してか男は最後の力を振り絞りシャベルでミクに一撃を加える
しかし、手が痺れてきていたのか最後の一撃も弾かれたと同時にシャベルを手放し
その場で地面に手を付き息を切らしている
「うーん、A2、これからどうすればいいの?」ミクは問いかける
「サキニ回収した霊ノ解析ガ終了シテオリマス、使用シマスカ?」
「あ、なんだか面白そうね、やってみて」
「リョウカイシマシタ」
「強制シンクロヲ開始シマス」
そういうと男は頭を抱えながら苦しんでいる
「これって思った以上に大変だったから、強制なんてどんな苦痛なんだろうか・・・」
「目ノ前ノ人間ハ実験体トシテ認識シテオリマス、ソレニヨリ人ニヨル死ヲ迎エテモ問題アリマセン、魂ハ回収イタシマス」
「シンクロ完了イタシマシタ」
「なんとか生きているようね」
男はよだれを垂らしながらうつ伏せで倒れている
「捕獲シタ霊ヲ開放シマス」
すると先ほど捕獲した下半身が蛇の様な霊がディスプレイニ表示される
男にはシンクロしたことで霊が認識できるようになっているらしい
「やめろ、やめてくれー」
悲鳴のような声で叫んでいる
霊は男に近づき、男の顔に手を添え、訴えかける
「お前の目、支配の目、憎い、その目が憎い」
男の動きは止まった
「なにが起きたの?」
「心拍数低下、麻痺トナリマシタ、6秒後ニ心停止トナリマス」
「5.4.3.2.1..心停止ヲ確認、約10分後ニ脳死トナリマス、コノママ放置シ魂ヲ回収シマス」
「ここで10分、この人が死ぬまで待機しないといけないの?」
「答エハNoデス」
そういうとECP-01は小さな自走型のロボットを輩出する
「後デ回収ヲ、オ願イシマス」
「了解、さてと、皆どこにいるの?」
「ええっとね、木の上を飛んでたら家を発見したのでそちらに向かってます、場所は...A2お願い」
ミクのディスプレイに場所が表示される
「うーん、ここって・・・」
転がっている生首を見て、想像する
「あまり行きたくないな・・・」
「ですよね・・・」
「でも仲間が居る可能性もあるので一応調べた方が良いかなと思って・・・」
「了解、こっちが一段落したら向かいます」
生首をそのまま転がしておくのも忍びないと思い男の持っていたシャベルで埋葬しようか、全部集めた方が良いのか悩んでいた