夜の学校を探索する
雪音の所に夕凪とミハルは居た、ミハルの傍にはキトの姿がある
夕凪とミハルはまだ親友と呼べるほど距離が近いわけではないが、夕凪にとって気を使われない相手と一緒にいる時間は楽しくもある
あの後、ハクはまたどこかへ出かけてしまい、キトはムギに似ているミハルのそばに居たいらしい
キト「学校って面白いところやな~」
雪音とキトは学校での黒い霊力の収集について話をしていた
雪音「そういえば学校での怪談って聞いたことある?」
夕凪とミハルに聞く
ミハル「誰もいない音楽室でピアノが鳴っていたとか、誰も居ないはずの放送室で勝手にONになっていたとか・・・」
夕凪「プールの中に大きな人を見たことあります!」
雪音とミハルはそれは怪談の域を超えているかもと思ってしまう
雪音「キトさ~ん、その辺り一度見てきて欲しいな~」
キト「はいはーい」
雪音「ピアノはちよっと興味あるな・・・本物なら、幽霊の奏でるピアノの演奏会・・・面白い余興になりそうだし・・・買い取るか・・・」
雪音は1人の世界に入ってしまう
◇
その夜キトは1人学校の中を探索していた
夜、誰も居ない放送室、見渡しても黒い霊力も無く
特別変わったところは無いように見えた
しかし、よーく見ると何かがある
勝手にONになるのもあながち嘘ではないようだ
部屋に入ると非常に細い1本の糸が天井から垂れ下がっていた
糸を引っ張ってみる
引っ張っても引っ張っても糸が出てくるだけだ
糸が非常に長い
引っ張り続けているとようやく何かが見えてきた
天井から顔のようなものが現れ、キトは目が合ったように思った
その瞬間、キトは糸を持つ手を離した、すると長かった糸と共に勢いよく天井へと消えていった
魂がどこかに引っかかっり藻掻いていたのが悪さをしたのだろう
部屋を後にする
◇
音楽室に到着した
例のピアノがある、そこに禍々しい気配は無い
むしろ様々な思いが絡み合っている
キトは椅子に座り、ピアノを弾いていく
ピアノを弾く度に絡み合った思いが解れていく
残り1つの思いだけが残っている
キトはそれに触れると、その光景が浮かぶ
小さな子供が泣きながら母親からピアノを習っている
子供が少し大きくなり演奏会でピアノを弾いている、観覧席には母親の姿が目に留まっている
中学へ入る直前に母親が病で亡くなり泣いている姿
中学に入ると一心不乱にピアノに向かって練習する姿
コンクールで賞を取り、学校のみんなに演奏する姿
思いはそこまでで終わっていた
後ろに並ぶトロフィーの内の1人なんだろう
その魂と同調するかのようにピアノを弾く
演奏が終わるころには消えていた
静かに教室を離れた
◇
生物室の前に来ると何やら騒々しい
扉を開けると、小動物たちや鶏が追いかけっこをしておりバタバタしていた
とりあえず、五月蠅いのですべてセツの居る場所へ移す
標本の類には魂が乗り移ろうとしている、たまに標本が動きかけることもある
そのうち諦めて消えていくだろう
特に何もなかったので部屋から出る
◇
屋上に登ってみた
月明かりに人影のような者がユラユラしている
これも特に禍々しい物は感じない
おそらく学校を見守っている誰かの思いなんだろう
屋上から下を見渡すとプールが見えた
たしかになにか大きな者がプールの中を跳ね返りながら移動している
キトは屋上の手すりに登り、一気にプールへと飛び降りた
音も立てずにプールへ降り立つ
黒い霊力は上流地域から谷なのどの川を伝い下流の地域へと降りてくる
川などでも流れの止まった場所は黒い霊力で淀んでいる
下流の地域のプールでは同じような現象が起きる
キトは石を使い黒い霊力を吸い上げていく
大きな者の正体は魚の群れと同じで魂の集合体だ
この中で泳げば足を取られる子も居るだろう
キトは竹筒の水筒を取り出す、中にはこの世のものではない水が入っている
この水は現世の水と交わることはない
水筒の口をプールに付けると魂達が集まってくる
竹筒の水筒にすべての魂が収まると、キトは水筒を胸に仕舞った
黒い霊力を回収できて満足なキト
ピアノだけは雪音に話さないでおこうと思い
運動場や部活の更衣室などを見渡していた
すると、運動場の端、いや、外の方から嫌な気配と匂いが流れてきた
匂いはあきらかに血の匂いだ
姿を確認するために学校の屋上に登る
学校の屋上に居る霊に影響を及ぼしているのか一層ユラユラしている
学校の敷地外の道路に一瞬だけ確認ができた
鹿だ、しかも首から上が人間の頭部が付いている
背中には少女らしき姿が確認できる
おそらく出血しているのだろう
キト「あの姿、気配からして紅の血の一族か・・・」
鹿の脚力を利用して、家に飛び乗り、どこかへ飛んで行った
キトにとって関係の無い人間など何人死のうが気にもならない
追いかける気は特になかったが、夕凪やミハルに危害が及ぶようなら容赦なく排除する
キトとりあえず戻ってみんなに話そうと思い学校を後にした