仲間(改)
雪音はオークションが終わりアイテムの整理中だ
オークションでは絵に人気がある
ただの落書きにしか見えない絵になんの価値があるのか疑問を持つ人も多い
昔の絵は念が強い、特に高額で何度も人の手に渡ると絵に込められる念も強くなっていく
実は絵の価値というより念の強さによる価値が高い
今回高値で売れた時計と椅子の絵は、額にも高価な石が嵌められている
部屋の中央に絵を飾り、絵と同じ椅子と時計を用意し部屋に配置をする
まるで鏡のように
時間が来る前に椅子に座り、絵の時間が来ると1分だけ絵の世界へと入ることができ
1分後には元の世界へ戻る、すると現実世界の1分位時間を止められるというものだ
額の石の霊力は24時間で回復するので絵の時間と上記の行動を守らないといけない
1日1分だけ寿命が延びることになる
そして売れなかったのは解体前の古い家の神棚から回収された小さな木箱である
いつからか人の住んでいない相当古い家から回収されたものらしい
やはり胡散臭くて誰も手を挙げなかった、しかし、一人の品の良いご老人は「うーん、うーん」と唸っていた、最後には自分にはやはり無理だと
胡散臭くもあるが、もしかしたらと思い取っておくことにした
あれから夕凪は雪音の事務所を暇なときには訪れていた
ここには興味深い物がたくさんあるからだ
雪音は先日のオークションで売れ残ったなにやら胡散臭い物を見てもらうことにした
雪音「夕凪ちゃん、これどう思う?」
夕凪「うーん、なんだか今までに感じたことの無い、なにかを不思議な気配を感じます・・・、嫌な感じはしないかな・・・」
初めて見たものだがなんだか懐かしい感じもした
雪音「どうせ売れ残りだし、よかったらこれどうぞ」
雪音は夕凪に無理やり押し付けた
夕凪「は、はい・・・」
夕凪がそれを手にした瞬間、普通ではありえないなにか暖かい物を感じた
木箱は封をされていて中を開けることができない
仕掛けでもあるのかと木箱を手に隅々まで見つめるがやはり中を開けることはできないようだ
木箱に気を取られ背後になに者かがすでに存在していたことに気が付かなかった
何者かは雪音にも見えていたようだ、雪音はその存在に目を奪われている
雪音にとってまるで自分の理想を具現化したかのような超絶好みの男性がそこに立っていたからだ
「君かね僕を呼んだのは」雪音はその場でへなへなと崩れ落ちる
雪音「あ、あなたは・・・?」
「僕はね、人からは神・・・なんて呼ばれてるかな」ニコリ
雪音は卒倒しそうになった
だめだ、眩しすぎて直視できない、この人が神と言うなら一生、死ぬまで信仰する!と固く決意する
ただ夕凪には雪音の行動の意味が分からなかった
夕凪には目の前に同じ位の年恰好の少女が居た
「お、お主変わった石をもっておるな」
「わらわがここに来れたのはその石のおかげじゃな」
夕凪にはこういう風に聞こえていた
雪音はなぜあんな風になっているのだろう
「わっはっはっは、神という存在は見る者の願望の鏡でもあり想像の姿でもある」
「そこの女には吾輩は超絶好みの男性に見えているのだろう」
本当に?神様なのだろうか夕凪はもし悪魔というのが存在するなら人の心を惑わすのではと少し疑った
「疑うのも無理はないじゃろう、いきなり私は神だなどと言われても信じる者もいないじゃろうて」
「いずれ分かるであろう」
「まあ、それはさておき、これではまともに話もできそうにないので、こちらの姿を見せるとしよう」
そうすると神様は雪音にも夕凪が見えている姿と同じになる
雪音「う、なぜちっびっこに・・・」
「神の姿に決まりはない、これはこっちの少女が思い描く姿だからな」
雪音「神ってやっぱ公家みたいなしゃべりなんだ・・・」
夕凪「ごめんなさい・・・私の想像が乏しくて・・・」
雪音「いやいやいや夕凪ちゃんは悪くないよ」
「我を呼んだ用はなんじゃ?」
「金か、名誉か、渇望するものはなんじゃ?」
2人共別に用はなかった
雪音「特に用事はなかったんだけど・・・」
「お主は男が望みか」ニヤリ
雪音「いや、違う、断じて違う」妙に慌てている
「そっちの少女はなにか望みはあるのか?」
夕凪「私はお友達が欲しい・・・かな」
「ほほう」
夕凪「霊の見える体質なので、友達からは気味悪がられて・・・」
「なるほどな、じゃがそれは難しいのう、しかし、己が欲望のためだけに金が欲しいなどと要求したら神罰を与えるところだったぞ、とりあえずは及第点じゃな」
神罰と聞いて2人は少し驚く
「当り前じゃ、人ごときが神に対して要求するなどもっての他、だから人が嫌いなんじゃよ、要求ばかりしてくる」
「人の居ない静かな場所を見つけ寝ておったら、いつの間に壊されてしまったからな」
「そやつらには神の怒りを見せてやらないといかんな」
「神の怒りとは?」
「ふふふ、よくぞ聞いた、お金儲けをしようとしてもすべて裏目に出て神に対して反省するまでとことん貧乏に追い込んでやる」
「神は神でも、もしかしてびんぼ・・・」と言いかけたところで睨まれたので雪音はやめた
「ここはあまり人の気配がないな、場所としても及第点じゃの、しかも使い獣も居るし、なかなか気が利いておる」
クロを見ていた
雪音「クロは使い獣なんですか?」
「そうじゃな、夕凪だったかそなたの持つ石が神への使い獣として選んだためにそのような姿になったのじゃ」
雪音「この石は一体なんのですか?」
「この石は導きの石といってな、この石の光は灯台のようなものじゃよ、神にはこの光が見えておる、神が答えれば道に入ることができよう」
雪音「夕凪の言っている霊道のようなものかな・・・」
「神への道は昔人がすでに探し出して、社など大きな建物を建てて抑えてしまっておる、それ以外のその辺りにあるのはただの念の塊であろう、しかし中には禍々しいものが混じっておるから、うかつに入るのは危険じゃ辞めておけ」
「それにしても夕凪といったな、そなたの着ている服はかわいいのう」
夕凪「神様よかったら着てみます?」
「よいよい、姿は、ほれこの通りじゃ」
神様はクルンと回ると夕凪の学生服を着ていた
「下が少しスースーするが、なかなかの物じゃ気に入ったぞ」
「よかろう、友達が欲しいというそなたの思いは我が干渉せずともその内叶うじゃろう」
「それと、ふむふむ、なるほどなるほど」
「使い獣として夕凪の傍に居るがよい」
すると猫島でご神体によって顕現した白銀の猫が現れる
「どうやらこやつは夕凪の傍で使えたいらしい、かわいがってあげるのじゃぞ」
白銀の猫はその姿を小さな炎を変え夕凪の肩の上に乗っかった
「名前を付けてあげてはどうかな?」雪音は提案をする
「じゃあ、クロがいるからシロなんてどうかな」
小さな炎を夕凪の周りをクルクル回っている
「気に入ったようだね」
「じゃあシロよろしくね」
「さてわらわはしばらくここに住むことにしよう、雪音とやら神棚を作ってくれんか」
雪音「げ?ここに住むのですか?」
すると神様は男の姿になり
「ここで一緒にいるのは不満かい?」と雪音に声をかけると
雪音は首を横に振りながら「一生、いやずっとここに居てください、神棚も特別立派なものを用意します!」
神様と夕凪は顔を合わせ笑っていた
503の患者からナースコールが鳴る
「玉木さん、どうなされました?」
玉木「背中が・・・、胸が・・・」
「すぐに向かいます」
「先生、503の玉木さんの容体が急変です。」
当直の先生にすぐに連絡をし503号へと向かう
ベットの上で苦しむ玉木
「玉木さん大丈夫ですよ、今先生が来ましたから」
玉木の苦しみ用は尋常ではない
「っがああっぐうううっかあああばあっばばばああああ」
その瞬間
玉木は皮だけ残しベッドの中に消えていく・・・
そしてベッドが徐々に血で赤く染まる
周りで悲鳴のような叫び声が響く
先生はなにもできずただ、ただ、その場に茫然と立ち尽くす・・・
先生!
先生!
越野先生!
椅子に座ったままうたた寝していた
今まで大学病院で勤めていた越野は昔の悪夢だ
この事があってから越野はへき地の診療所を転々とし、猫島で最期を医者勤めとなるだろう
説明の付かない現象を目の当たりにしてからは、いつしか海岸に流れ着いた奇妙な物を集めるようになっていた
先日のあの2人の子達と当時知り合えていたら、人は助からずともなにか原因が分かったのかもしれないな・・・
椅子に座り、窓の外の澄んだ空を見ながら・・・