第一章 クロノヘヤ
真暗だ…
ここは…
死後の世界?…
朦朧とした意識の中で微かな声がひびく。
女の子の笑い声?…
そう彼が思うと同時に頭がボーとし始めた。
4…34…?
なんの数字?
……あれ?
ここはどこだ!
突如眩い光が「見えた」後、
あたりが見えた。
自分は今、黒色の四角柱の狭い部屋にいる。ただ、手伸ばすと両面の壁を触れるには難しいく、体動かすには十分なスペースだ。
しかし、見渡していく内に違和感を感じた。自分は意識があるが、意識なくなる前と比べ視界に写っている今、何かがおかしい。そう、まるで身長伸びたように!
阿貴は自分の首元を触ってみた、彼は日常的に姿勢悪く生活していたため無意識に頭が左寄りになる。そして今触ってみるとまさにその通りであった。しかし、これだけの事でまだ確証得れない。彼は左手の傷があると確認したあと、今は体は無事か、内臓がいじられたかのどっちかだと思った。ただ目の前景色の違和感はやっぱり消えない。
ずっと立つのが疲れた彼は床に座った
体が浮いてる。
そして、体の真下の床の位置になにかかけらみたいなものがある。手を伸ばそうとすると、
手先から崩れていたような、溶け出したように見えた。
次第に声を上げる前に体がもうすでに何かに溶けた。必死に足掻こうにもその感覚は今まで体感したことがないものである。
足ある、手もある、首も回る。
でも動かしたあとは崩れた何かが変に動いた程度だ。
半日経った、頭が朦朧となっていて体の形もどんどん整って行くとき、
「誰かいますか?」
俺と同じ被害者か?!
「います!貴女はどこにいるのですか?」
「真っ暗な部屋?」
一緒だ…
「頭朦朧としません?私は阿貴です。」
「しますね、加藤 麗です。ちなみに女性なので部屋に入って来ないでください。」
入ろうにも入れないけどな…
「分かりました。」
そういったそば、二人の脳に直接スピーカーを大音量で当てたようなうるささで心臓の鼓動音が響いた。これと同時に私の意識が奪われた。
一方この頃、「プラネタリウム」にて…
白衣を着たオールバックメガネの中年男性が黒い手袋をつけて、腕を大きく動かして踊っていた。
ただ服が擦れる音が響くプラネタリウムで、
自動ドアが開く音が混じった。
「おはようございます、バールさん。今日も早いですね。」
缶コーヒーを片手に持ちながら、インド系の青年が中年男性の方に歩いた。
「ここゴミ箱ないから、飲み終わってから来いっていつも言ってるじゃねぇか。作業中に倒したらめんどくさいだろ?」
「いやー大丈夫ですって、こぼしたら片付けばいいじゃないですか〜」
「お前、こないだこぼしたときに逃げて、あと全部俺が片付けただろうが!」
そう言いながら中年男性が青年の缶コーヒーを一気に飲み干した。
「テメェわざと飲ませただろ」
「いえ、私の好みはバールさんの苦手なんですから。」
中年男性は格好こそ大人だが、コーヒーの酸味がどうも苦手である。
「いいからさっさと今日のノロマ達成するぞ。」
二人の大人がプラネタリウムの中で踊り始めた。
「そう言えば他の皆さんはまだ来てないようですが、今日はサーバーの調達ですか?」
「まあそんなとこだ。」
「もう何個目ですか?最近プログラムよりそっちのほうが本業みたいになってきてますよ?」
「いいから速く手動かせ!お前の担当してるそのサーバーのプログラミングまだできてないだろ。」
「はいはーい」
夜となり二人の男がプラネタリウムに入ってきた。
「バール先生、今日のサーバー3つです。」
「いや、伊田君俺は2つって言ったやんな?森野、君が付き添っててどうしてこうなった?」
伊田くんはこのプラネタリウムの中での下っ端であり、いつもサーバー集めに使われて、今回はサーバーの量を(わざと)増やして自分もプログラミングを参加できるように仕向けたのだ。
「バールさん…伊田くんの足が速くて、とても私が監視できるようなやつではありません。」
「そうだったな、
おい伊田君!!いいこと教えてやる。テメェそんなにサーバー弄りたいなら叶えてやろう!」
「よっしゃーーー!やっと調達から開放だ!」
「誰がそんなこと言ったかボケ、今日てめぇは残業じゃ!」
サーバーは弄りたいが残業はしたくない伊田が言い返す前に、
「明日も調達お願いしますよ。(ニコ)」
「伊田君、シダさんもうヤバイ笑顔になってるから素直に言うこと聞け…」
(シダさんのあの笑顔はヤバイ…)っと思った伊田 斗人は今晩残業決定となった。
「あああああああぁぁぁぁぁぁーー」
四角柱の部屋を響く苦痛にまみれた低い絶叫が阿貴を起こした。いつの間にか体がもとに戻った。
さっきの声は男性だ、念の為加藤さん起きてるか聞いてみようか。
「加藤さんー、起きてますか?」
「……」パン!
「えっ?」
その後手を叩く音が聞こえ続けた。
音が響いてくれてるおかげでどこからなのかが分かった。どうやら部屋の隅に小さい穴があり、そこからだ。しかし、入るには小さ過ぎた。
彼は自分の体が溶けてまた戻ることを思い出し、もとに戻るならやって見る価値はある。とにかく加藤さんが心配だから、彼は腕を大きく振りかぶって穴に手を叩きつけた。
その時、不思議に痛みなく、見事に手が砂のように崩れ、穴に入り込んだ。体の左半分が崩れ、右半分を実体化の維持がなんとできるようになった。左目からまるで水道管の中を辿っているように見えて、たどり着いたのは自分の部屋と似たような黒色の六面体の部屋だ。その部屋の中心に女性の体が宙に浮かびながら体が霧のように広がっている。女性は苦しそうな顔で眠っているが、顔は整っていた。そう彼が見とれてるうちに、やがて女性の全体が砂となり跡形もなく床に落ちた。
焦った彼は感覚が狂いそうになり急いで体を自分の部屋に戻した。不思議と体を構成する砂は手足を伸ばすような感覚で動かすことができる。思えば意識が朦朧としているときに、体が溶けていた。
「あああああぁぁ……」
またあの声だ。
声は、穴を前にすると、対角の右側の壁から響いてきている。そこを触れるとまるで糸が平行に並ばせた壁みたいな感触だ。
そして、阿貴が糸を動かそうとしたとき…
青い湖、
茶色いベンチ、
黄色の砂場、
赤いレンガの道。
これらを囲み緩やかな風に揺らされてる緑の草原の中に、
黒い髪をキラキラとさせた小さい女の子が
こっちを見て立っていた。