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砂礫の庭  作者: 昨壁弱人
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序章

「手術成功、これで彼は再び起き上がれるだろう」

「しかし、先生、勝手に手術しちゃっていいのですか?」

「お前はバカか?一番最良な状態で彼を生き返らせるのだぞ!俺はもうこの子の面倒見るのは御免だ」

「でも、、、」

「安心しろ家族のほうは俺が何とかする」

……




 目が覚めたら知らない真っ白な景色を目の当たりにした。記憶の片隅に成人男性の会話があった。自分がなぜここにいるのかがよくわからない。久しぶりに目を覚ました気がした。確かいつものように通学の途中、公園を通ろうとしたところまでは覚えている。しかし、その先は夢を見たばかりだが、内容を忘れたような感覚がある。とにかく、ここから降りて飯を食いたい。

 そう言えば首がいやに硬い、包帯巻きまくってるから?にしても違和感があるのだが、、、

なんか怖いから、看護師さんを呼ぶ事にした。



 ベットにある呼び出しボタンを押した瞬間部屋の出入り口にあるランプが赤く光った。しか

し、いくら時間経っても、誰も来なかった。仕方なく彼は軽度のめまいをしながら起き上がった。

 部屋から出ると、彼はエントランスに行き、そこにも誰もいなかった。入口の自動ドアも閉まったままで動かない。ドアに貼ってある紙は外にあって何書いてるのかわからない。ただ、テープで透明ドアにくっついているところを見ると、「院長より」って書いてあるのが見えた。彼は一旦自分の部屋に戻ると、ドアの開けるスピードがなぜか遅く、それを深く考えようとしなかった。机にあった財布を手に取り、中には強烈な金属の匂いがする硬貨と某遊園地の年間パスが入ってた。病院のエントランスから出れないため、彼は窓から出た。


 歩いて一分もかからない所に、商店街があった。どうやら自分の家から学校や駅の逆方向の位置にある。目的地の大体の方向さえ分かれば、彼は目的地につけることができる。小学2年生の時に旅行先で車で十五分かかるショッピングパークで両親とはぐれて、夜にもかかわらず二時間かけて、自分の歩いてきた経路を辿ってホテルまでついた経験もあった。そう彼が思い返してる内に家の見えるところまでついた。そしてベランダに居たのは、笑顔で家族と接している「自分」であった。




 勇気を振り絞って家の前に立ち、ベルを鳴らした。

 すると、「自分」が迎いに来たのである。しばらくすると家族全員が来て、彼を見た。

「阿貴、、、」

「え?」

「アキなの?」

 戸惑いを表にした両親を押しのけ、妹が自分に手をつかみ近くの公園まで逃げた。そこで妹から自分の身に起きた現状や経緯を教えてくれた。

 自分はどうやら電柱の下敷きになったらしい。



 このあたり一帯の治安はあまり良くない、職業名にヤのつく方々の事務所が歩いていけるところにあるし、その上に縄張り争い(?)の最前線らしい。

 そんな中、休日で筆記用具買いに行くときに、暗殺に会った車が全速力でこっちに向かって走り、ぶつかった。

 ライトにぶつかったため、道路の住居側の壁に打たれてまた路地の真ん中で伏せてた自分だが、自分をぶつけた車が電柱にぶつかって大破。勢いがすごかったため車のドアの下敷きになった挙げ句、車にぶつけられた電柱も自分の方に倒れた。結果としては車のドアが頑丈で死にはしなかったが、首が変な方に曲がり脳も大きなダメージを覆い、植物人間の状態になったのである。


 それで4年後にある商品が発売された。生体記憶コピーアンドロイド通称 OMCA(Organism Memory Copy Android)これは万全な状態を保てた脳に直接触れることなく記憶をコピーし、アンドロイドに保存する事により、もとの人間のように行動する機械である。しかも追加記憶もできるからちゃんと新しい物も覚えられる。

 しかし、これと同時に医学も進歩していき、治せなかった病気も治すことが可能になり。自分のような維持に費用かかる植物状態の患者を早く退院させるために、医者が勝手に手術して直してしまうケースが増え、直した患者に適切な処置や説明を行わず勝手に放り出して、家庭崩壊になる事が増えた。

 機械が医者を多く代用する時代にあたって、夜逃げする医者も増えている。このような事件があまりにも多く、社会問題としても取り上げられているらしい。現代の医者たちは、腕のあるもの達は低い賃金で国内で働くか、医療機器が完備できない発展途上国で働く道しかない。医者に厳しい社会になった今、患者を見捨てて逃げる人は多くいるが、自分を担当していた先生はどうやら、ちゃんと生きられるようにしてくれたらしい。


「最初、お母さんがお兄ちゃんが治ったって言って、あれを連れてきた。お母さんとお父さん二人ともまるで本当のお兄ちゃんがかえてきたように当たり前のようにに暮らしてたよ。

 でもおかしい、アキがベットで寝たきりでまだ死んだわけでもないのに、まるでなかったことにするのだよ?…」

「俺は仕方ないと思う、きっとお医者さんがなにか絶望的なことが言っただろう。とにかくも

う一人自分と会ってみたい。案内してくれないか?いくら長く住んでてもここは変わりすぎだ。」

「わかった。」


自宅に戻り、自分の父と母は何もしゃべらなかった。隣にいるのはもう一人の自分。

「名前教えてくれないか。OMCA は名前あるやんな」

「君と同じだ。阿貴。分かりずらいから君から吽現と呼んでくれ」

「そうだな」

「君と僕の部屋で話そう。そうしたほうがよっぽど話しやすいだろ」

「その必要はない。僕はただ…」

「待った、僕は君のこと知ってる何言おうか分かってる。父と母は任せな」

「ありがとう、妹もよろしく」

「共存という選択肢はないのか」

「僕はもう過去の人間だ。それに僕の今の状況君にも十分わかるだろう?」

「そうだな、話はこれぐらいでいいのかな、辛かっただろう、もうゆっくり休みな」

「ありがとう。もし来世ってものがあるのであれば、また君とゆっくり話したいな」




 阿貴はそれを言い残し、家から去った。


 何かに呼びかけられてただろう、ボンヤリとしたその声を聞いて彼は振り向かなかった。

 

 そして、川沿いのベンチに座り、ゆっくり青と赤のグラデーションを堪能した。

 

 「川」が流れる音が静かにあたりを響かせ、男性は二度と目を覚めなかった。


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