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魔女と歩む魔法の世界  作者: 天野夜夢桜
6/18

★魔女同士の戦い★

性格が反転してしまったエルマを治すべく動いているレンに対して、本性を現し始めた時の魔女レイは自分の目的に向かって動き出していた。そしてその動きはレンたちにも危害を加えるようになっていった!今回はそんな時の魔女と戦っていく物語。

 異世界に来てから3ヶ月が経過……。俺の帰還への道のりはまだまだ遠く一回も帰ってない、というか帰れない!

そして反転になったエルマの性格もまだ戻せてない。

どちらも早いとこ何とかしないととは思っている――がなかなか思うように進まない。


「あぁあああ! 駄目だ~ 全然進展がないなんて」

「まぁまぁ、そう焦らないでゆっくり行きましょう、レンさん」


あぁ、エルマ…優しんだけどさぁ~ 俺は今のでまた罪悪感が出てきた。

何でかって? それはエルマらしくなくなったのは俺のせいだから。

今、まぁまぁって言ったの、エルマなんだぜ。

その上膝枕をしてもらってるしまつだし。


うわぁああ、何だかエルマがこうなるよう仕向けたみたいで最悪だぁ。

ごめんよ、エルマ。まさかこうなるなんて、あの時お前を放置しなければ。

だけど後悔してももう遅いし、俺ができる償いは元に戻してやること。

だから俺は諦めないぞぉおおお!

俺は心のなかでそう叫んだ。


………そろそろ起きるか、目的も果たさないといけないし。

実のところ現在魔法薬生成のための材料の一つ、『魔力の水』というものを取りに森の泉がある場所に来ていた。だがここまでたどり着く頃には疲れていたので休憩をしていた。

ちなみに俺が膝枕をしてもらっているのは断じて俺が希望したわけではない! エルマがやってくれると言ったのだ。

はぁ、早いとこ元に戻してあげないと。

でも今は素材集めに集中しなくては。 なんでも泉には巨大な魔物がいるみたいだし真剣にやらないとな。では立ち上がりますか。


「エルマ、膝枕ありがとうな、結構気持ちよかったぞ」

「はい♪ 喜んでもらえてよかったです」


あぁ、頬赤らめて嬉しそうに………。

まぁ可愛いエルマが見れたということで、罪悪感を薄めよう。

あれ? そういえばレイちゃんの姿が見えないようだが、さっきまで居たのに……。

どこに行っちゃったんだ?


レンがエルマの膝枕でイチャイチャしている隙に私はこの世界のこと……いや、正確にはこの世界で私の力がどこまで使えるか実験していた。

私の力は時を支配する能力、その能力がどこまで使えるか把握したかった。

そして実験した結果理解できた。


私は元々時間停止、加速、減速、時間を巻き戻す、時間を進めるといったものが使えていた。

でも水無月レイとしてこの世界に来た結果、使える力は限られていた。

巻き戻しと進める、それに時間停止の能力だけしか使えなかった。

何が理由かまでは分からなかったが、おそらく何かしらの結界が張られているのか、あるいは世界を渡る際に魔力が削れた感覚があったからそのせいかもしれない。

どちらにせよ、不便なことにはかわりない。しかもさっき使える能力の中で時間停止があったけど、それも制限されてるようだ。

何がって? と思うけど、結構制限されてるのよ。


私の時間停止は魔力が続く限り停止出来るというのが本来の能力だ。

だがしかし、今は魔力があっても十五秒しか止められない。

まったく不便だわ。まぁ完全に封じられたわけではないからよしとしますか。

それより………。


「あの少年と小娘は何時までイチャついてるのかしら!」

「何あれ? こっちは娘とイチャつきたいのを我慢してるのに!」

「私への当てつけかしら! あぁ~! イライラするっ!」

「そうだっ! いいこと思いついた♪ これなら少しはストレス発散できるかしら」


 レイちゃんが帰ってくるのを待ち始めてから既に十分経過、戻ってこない。

レイちゃんのことだからそのうちひょっこり戻ってくるとは思うけど、それでも心配だ。探しに行こうかとも考えたが、もし入れ違いになったらマズイ。

やはりもう少し待っているか。


………………あっ! やっぱり暫く待ってて正解だった!

森の木々から白髪の女性が出てきた。


「レイちゃん! 心配したよぉ」

「………………。」


あれ? 返事が帰ってこない、というかレイちゃんじゃない。

よく見ると違う女性だな。

確かに白髪という部分だけは同じだが、身長や顔つきが違かった。

目は少し鋭い感じで、顔は大人びた童顔だった。

似ているけど別人……いったい誰だ? というかレイちゃん帰ってこないぞ!?

俺はそんな事を考えながらこちらに向かって歩いてくる女性を見ていた。


しかし次の瞬間、俺もそうだが隣で一緒に女性を見ていたエルマも驚いたことがおきた!

ずっと見ていた女性が突然消えた! それどころかいつの間にか隣にいるのだ!

しかもエルマめがけて黒色の魔法弾を放ちながら!


「危ないエルマっ!」

「えっ?」


エルマは気づくのが少し遅く三メートル先まで吹っ飛ばされてしまった!


「かはっ!」

「エルマぁああああ!」


吹っ飛ばされた彼女はそのまま気を失ったのか、ピクリとも動かなくなってしまった。

俺はエルマがこのまま死んでしまうのではと不安になったのと同時に目の前にいる白髪の女性の方も気になった。

何故襲ってきたのか? 何故一瞬でこちらの横までこれたのか?

そして一番気になったのはレイちゃんに少し似ているということだった。

だから少しどなり口調で質問をぶつけた!


「いきなり何だよ! 何で攻撃してくるんだよ! しかも一瞬で移動してきて、お前は何者だ!

「質問は一つずつにしなさい、答えられないわ」

「……………………。」

「そんなに睨まないでよ、怖いわぁ」

「早く答えろっ!」

「いいわよ、まず攻撃した理由……なんとなくよ」

「はっ? なんとなくって何だよ」

「はい、次の質問の回答ね」

「おいっ! 話を勝手に進めるな!」

「二つ目の質問の回答は私が時間を止めてその間に近づいたから」

「時間を止めたって……どうやって――」

「はい次の回答ね」

「だから話を進めるなぁあああああ!」

「私が何者か……。そうね、時を操る魔女でもあるし、ドラゴンを産み出した研究者でもあるわね。そうそう……そのドラゴン、私の可愛い娘だから私は母親でもあるのかしらね~」


さっきからこの女の人、ニタニタしながら話してくる。しかも俺の言葉を無視して。

いやまぁ、俺の質問を全部答えてはくれたのだが、何故かムカつく。

それにいきなりエルマを攻撃するなんて、段々怒りの感情の方か強くなり

恐怖がなくなってきた。


「あら? そんな怖い顔しちゃって、どうしたの♪」


女の人が俺をさらに挑発するように言葉を発した。

俺はまんまと挑発にのり、完全にキレた!


「俺が怖い顔になってるのはお前に対して究極に怒りを感じてるからだよ!」

「えぇ~? 私は貴方の質問に答えただけじゃない」

「あぁ、確かに答えただけだ、だがお前はその前になんとなくでエルマを吹っ飛ばした! 何もしてないエルマを!」

「何もしてないですって!? 何を言ってるの? 私をあんな目にあわせて!」

「あんな目に? なんのことだ?」

「………っ! 何でもないわよ! そんな事より、いいの? そんなに隙だらけで」

「な、なに!?」


白髪の女性は『隙だらけで』と言い終わった瞬間に素早く俺の腹に一発おもいパンチをくらわせてきた!


「ごはっ!」


結構おもい一撃だったのか意識が遠のいていく………。


「あれ? もう気絶しちゃった? はぁ~ 威勢だけはよかったんだけどね、体の方はまだ未熟な子供と言うことね」

「とりあえずそこの木のところに置いておくか、そこに転がっている小娘も一緒にね」

「よいしょっと! はぁ はぁ……結構重いわね」

「よっこらせ、さてと! 一旦この場を後にして子供の姿まで戻してからまた来ますか」

「それじゃあまたね、生意気な子供達」


う~ん……腹いてぇ~

どのくらい時間がたったのか分からないが辺りが薄暗くなっていた。

頭がぼやぁ~とする。え~と~ 何があったっけ? 頭を整理するか。

素材集めに来て、レイちゃんがいなくなって、そのあといきなり白髪の女性に攻撃されてエルマが……あっ! エルマ大丈夫だったのかな!

俺は不安になり周りをキョロキョロと見た。

すると意外にも俺のすぐ横で震えてるエルマを発見した。


「なんだぁ、心配したぞエルマ~ 大丈夫だったか?」


ポンっ! というような感じで後ろからエルマの肩を軽く叩いた。

そしてその瞬間、エルマが今どのくらい怯えてるのか理解した。


「きゃああああ! もうやめてぇ! こ、殺さないでっ!」


エルマが今までに見せたことない恐怖の表情を浮かべて怖がってしまった。

エルマ、そんなになるほど怖かったんだな。

まぁ多分、反転人格になってるのも原因だろうが……。

こんな時どうすればいいのだろう、わからない。

ただ単に大丈夫と言ってもダメだろうし、どうしたものか。

こんな時レイちゃんが居れば何かアドバイスしてくれるのになぁ。

いや、他人だよりではダメか。でもどうするか………。

俺はまた悩みまくった、そして頭を抱えていた。


だがしばらく悩んでいると、いつの間にか帰ってきてたレイちゃんが俺の横でむぎゅ~と誰かに抱きつくような仕草をしていた。

何をしているんだろうとしばらく思っていたが、レイちゃんをずっと見ててやっとわかった。

『エルマにこれをやって落ち着かせて』そう俺に言ってるのだと。

わかったよレイちゃん、やってみるよ。

人生はじめて女の子(なのかな?)にハグしてやるよ。

それ! ぎゅううううっと!

さて、エルマの反応はどうだ?


「………………!?」


うわぁ、目がめっちゃ開いてるぅ~ 顔赤くなっているぅ~ その表情からすごく驚いてることがよく伺えるぅ。

まずい、このままだとただの変態だ! 何か言わないと。


「あ~ エルマ、もうあいつはいないよ……だから安心してくれ」


やべぇ、緊張して少し棒読みになってしまった。

隣にいるレイちゃんが少しあきれた顔をしている。

エルマは……何故か余計に顔が赤くなっているぅ~ どうするの、この状況。


「エルマ~ その、なんだ……悪かったな、急に抱きついて」

「い、いえ……大丈夫です………少しびっくりしちゃっただけです」


………前のエルマは絶対こんな反応はしないな。

でもよかった、抱きついたことによって変態扱いにならなくて。

レイちゃんやったよ! 君が対応方法を教えてくれたおかげでエルマを慰めることができたよ!

俺は心のそこから安堵したのと、レイちゃんに感謝した。


レンさんが私の合図に気づき、エルマさんをはぐして慰めた後、私は二人とまた別れて暗い森を歩いていた。

最初は勿論止められた、暗い森を歩くのは魔物が出てくるので危険だからやめた方がいいと。

でもその反対を押しきり、今一人で森を歩いている。

当然、何時もいるハムスター達もいない。

では何故反対を押しきり一人で来たのか、それは私の目的に向かって前進するためだ。


目的……それは私の五歳の娘を守るための力を得ること。

その為ならなんだってやる! 娘を守れるなら他の人だって利用する!

なんなら人殺しをしたって手に入れて見せる!


……ふぅ~ 少し興奮してしまったわね。無意識に脳の時間を進めて思考だけを大人にしていたわ。

さてと、回想はここまでにして早いとこ用事を済ませてしまいますか。

あぁ~ でもその前にいつの間にか魔物に囲まれているから始末しないとね♪


「丁度、この体でどのくらい殺れるのか実験してみたかったし」

「遊んであげるわよ、ゴミどもが!」

「エンド・オブ・ザ・タイム!(時間よ止まれ!)」


ふふ、私の前ではどんな者でも動けなくなる。

ただし、時間を止められているから自分の動きが止められているという事は認識できないけどね。

そして動けない隙にいくらでも攻撃ができる、さぁてまずは斬撃よ!


ザシュっ!


「ふふふ、いい切れ味ね♪ さてと、今度は魔弾で攻撃よ」


こう手のひらに闇を集めて敵に向かって放出!


ドカンっ!


「いい起爆音ね♪ それじゃあ時止めを解除してみますか」

「あっ! でもその前にここから少し離れないと! 返り血がかかっちゃうからね」


トコトコトコっと!


さて、このくらい離れればいいかな。では解除!


ザシュっ! ブシャっ! グシャっ!


う~ん……まぁこうなるわよね~

時間を止めている間に攻撃され、その後時間停止を解除されれば当然今まで攻撃された分が一気にくる。結果こんな地獄絵図が生まれる。

もっとも複数体いなければこんな四方八方から血が噴き出すなんて光景はできないけど。

まぁ問題はないでしょ。誰もみてな………いや、どうやら見られてしまったようね。

はぁ~ 面倒くさいわね。よりによってあの子に見られるなんて。

ふぅ~ まぁいいわ。

今見た部分の記憶を消してしまえば問題ない。

さてと、始めますか……記憶を消すための戦いを。


レンさんがレイさんの事をあまりにも心配していたので捜索役を志願して森にやって来たはいいけど、少し怖い。


「はぁ……やっぱり志願しない方がよかったかな~」


バギっ!


「ひゃああああああ!」


な、何!? 今の音は?! まさか魔物?

でも周囲を見ても誰もいないし………。


「遊んであげるわよ、ゴミどもが!」


え? 今の声、レイさん?

でもどこにいるの?

もう一度周りを見回しても誰もいない……。


ザシュっ! ブシャっ! グシャっ!


今度は誰かが戦っているような音がする。

もう一度耳を澄ませて聞いてみようかしら。


グチャっ! グチャ………。


どうやらこっちの方から聞こえるみたい。

ちょっと怖いけど行ってみますか。


森の木々の間を足音を立てないように移動して、音の発生源のある場所まで残り二メートルくらい。慎重に、慎重に……。


あと一メートル、ここら辺から覗いてみましょう。


「…………ひっ!?」


音の発生源の場所、そこはまさに地獄絵図だった。

二十匹くらいの無残に惨殺された魔物の死体があり、その隣にはレイさんが青白く光る剣を握って立っていた。

それも殺人鬼の笑顔と言えるくらいな顔をしながら。


レ、レイさん? こんなところで何してるのだろう?

それに、まるで殺しを楽しんでるみたいな笑顔になってるし。

怖い……。怖いよ…レンさん………。

体が震えてくる、腰が抜けてしまうほど足がガクガク震える。

は、早く……早くここから逃げないと。もしかしたら殺される。

でもうまく立てない、震えてて足が思うように動かせない。

早く逃げないと! そうじゃないとすぐに追いつかれちゃう!


カサ…カサ…カサ……。


どんどん近づいてくる!

立って! 私の足! 立って! お願い!


カサカサカサカサ!


ち、近づいてくるもうダメ! 殺される!


「………………。」


あれ? おかしい……どうして足音が突然消えたのかしら?

恐怖のあまり目を閉じてしまったけど、少し開けてレイさんがいた方を確認してみましょう。

そぉ~と、ゆっくりと。


…………レイさんがいない?

もしかして私の恐怖心が生み出した幻影?


はぁ~ よかったぁ~ もうダメかと思った。

「私はどうやら自分が作り出したレイさんの幻覚に脅えていただけみたいね」


「はぁ、よかった~ それじゃあ帰りますか」


心の底から安心した、今さっきまで見ていたレイさんは自分の恐怖心から生まれた幻覚だと思ったからだ。

だけど、帰る為に後ろを振り向いた瞬間、これは幻覚ではなかったことに気づいた。

何故なら後ろを振り向くと、狂気の笑みを浮かべたレイさんの顔がすぐ目の前にあったからだ。


「エルマさん、どうしたのぉ~」

「きゃあああああああああああっ!」


私は驚きと恐怖によりそのまま意識を失った。


「あれれ? 記憶を消しに近くまで来たからてっきり戦闘になると思ったけど、どうやら気絶してくれたみたいね」

「でも複雑だわ。時間を止めて普通に近くまで来ただけなのにこんなに驚かれるなんて」

「ちょっと顔に自信なくなっちゃうじゃない」

「でもまあいいわ、手間が省けたしね」

「さてと、ではエルマに時戻しの魔法をかけて記憶を消しますか」

「タイム・オブ・リターン!(時よ戻れ!)」

「ふぅ、これで私の正体を見た記憶は消えたはず」

「これで一安心ね」

「でもこれからどうしようかしら? とりあえずエルマを抱えてレンの元に帰りますか」

「それじゃあ、よいしょ――」


ガシっ!


な、なに!? エルマが私の腕を力強く掴んでくる!

目が覚めたのかしら?

でも普通目が覚めるだけでこんなに掴んでくるだろうか?

まるでお前を逃がさないといわんばかりに力強く掴むことなんてあるのだろうか?

と、とにかくこの手を振り払わないと! 結構強い力で掴まれてるのかすごく痛い!


「は、話してくださいエルマさん! い、痛いっ!」

「…………。」


ギュウウウウウウ!


い、痛いっ! 間違いない! 私に対して攻撃してる!

しかも記憶は消したから、またばれないようにいつも通りの口調に変えてるのに!


「痛い痛いっ! やめてくださいエルマさん! 腕が痛いよ!」

「……い……こぶ……。」

「えっ? 何て言ったの?」

「良い子ぶってんじゃねえ、この悪女が!」

「なっ!?」


今のエルマの口調、性格反転前のエルマと同じ口調だわ!

しかも悪女って、私の正体がばれてる!?

ということはつまり、記憶は消えておらず性格だけ前の状態に戻ったということ。

しまった、こんな結果は予想外だった!

これじゃあ私にとっては最悪の状況じゃない!

でも待って、もう少し様子を見てみましょう。腕が折られないか心配だけど。


「あ、悪女って、何のことですか!?」

「とぼけるな! レン君は誤魔化せてもこの魔導士エルマは騙せないわ!」


何てことなの、このエルマという女侮れなかった。

仕方がない、もう本性を出して戦うしかない。

そうしないとこの女の馬鹿力で腕をへし折られる!


「タイム・オブ・リターン!(時よ戻れ!)」

「なに? レイの体がどんどん成長していく!?」

「貴女が悪いのよ、知らなくてもいいことを知ってしまった貴女が」

「ついに本性を現したな、この女狐っ!」

「女狐は酷いわね。私はただ愛する娘を守る為に行動しているだけなのに」

「その行動により私やレン君を巻き込むな! 家にまで押しかけてきやがって!あの時も私たちを利用するために近づいて来たんでしょ?」

「あの時はどちらかというとただこの世界について聞きたかっただけよ、それなのにあんなに外に放置して、正直あの時の精神状態は子供だったから辛かったわ」

「フンっ! でも結果お前は腹黒い魔女だったのだからあの時の対応は間違いなかったな」

「はぁ、酷いことを言いたい放題言って、私が貴女達に協力したことだってあったのに」

「お前が何時協力したって言うんだよ!」

「もういいわよ、それよりこの手を放してくれないかしら?腕が折れそうで痛いのだけど」

「放すわけないでしょ! これからお前をとっちめるっていうのに」

「私と戦う……そういうことでいいのね?」

「当たり前よ! お前のような奴は粛正してやる!」

「よかった、私もそのつもりだったから安心して貴女と戦えるわ」

「エンド・オブ・ザ・タイム(時間よ止まれ)」

「…………。」


フフフ、これでエルマの動きが止まりうるさい口も止まったわ。

さてと、どうしてくれようかしら? そうねぇ、まずはみぞおちに一発くらわせますか。


「少し強めの一撃を、おりゃ!」


ゴスっ!


「とりあえず一発だけにしてあげる、時間停止解除!」

「ぐふっ! おえええええ」


な、なに? 行き成りみぞおち辺りから殴られたような衝撃が。

しかもいつの間にか腕を払われてるし。


「どうしたのエルマさん? 急にお腹を押さえてうずくまって、お腹でも急に痛くなったのかしら♪」


こ、こいつ……すました顔でわざとらしいこと言って。

的確にみぞおちを殴ったくせに、でもどうやって?

予備動作とか全然してなかったのに、それどころか攻撃されたときもあの女の拳は見えなかった。でも攻撃された事はまず間違いない。

そうでなければ吐くほど痛がったりはしない。


「随分トリッキーな攻撃をするんだな、予備動作も無しにお腹におもい一撃をくらわせてくるなんてね」

「あら? バレちゃった♪ でもどうやったかまでは分からないでしょ?」

「そうね、確かにどうやったかは分からないけど、そんなの見つければ問題ない」

「へぇ~ 随分強気ね。何時までその威勢が続くか楽しみだわ」

「エンド・オブ・ザ・タイム(時間よ止まれ)」


さてと、今度はどこに攻撃しようかしら?

腕、脚、それとも背中、いくらでも攻撃できる。

そしてどんな攻撃をされてもエルマは何をやられたか認識できない。

そうだ! さっきは少しおもい一撃をくらわせたから、今度は軽めの攻撃として頬をビンタしてみますか。


「せ~の!」


バシンっ!


「フフフ、キレイな赤い紅葉が出来たわね」

「それじゃあ時を解除しますか、それっ!」

「ぶへっ!? 痛っ!」


今度は頬を思いっきり叩かれた痛みが!

うぅ~ 頬っぺがじんじんするぅ。

きっと頬を思いっきり叩かれたんだろう、とても痛い。

でも叩こうとする素振りは見えなかった、いったいどうやって……。


ただ一つだけ気づいたことがある。攻撃をくらう瞬間にアイツが『エンド・オブ・ザ・タイム!』と言っているのだ。


何かの合図なのか、それとも呪文を唱えているのか。

もし呪文なら何の呪文なのか?

そこを解かないと勝てない。何か攻撃に対する対策を立てないとやられる!


「あれあれ、そんなに考え込んでどうしたの♪ そんなに隙だらけだと沢山攻撃されちゃうわよ」

「ダグルメア(闇の砲撃よ)」


ちっ、今度は闇系魔法を6発も放ってきた!

しかも追尾式の魔法だからこちらも魔法で相殺しないとやられる!


「セルティエル!(光の弾丸よ!)」


光魔法を六発、追尾式で放った! こうすることで互いにぶつかり合い魔法を相殺できる。


「ふ~ん、魔法で相殺して防御するなんて考えたじゃない」

「なるほど、いつも偉そうなことが言えているのも頷けるわね。頭の回転が意外と速い」

「それは挑発していると受け取っていいのか?」

「挑発ではなくこれでも褒めてるのだけど、まぁ敵から褒められても複雑かしらね」

「わかっているなら変なこと言うな! さっきから余裕そうな顔をされてるからすごくムカついてしょうがない!」

「酷い言いがかりね、そんな最悪な魔女様にはもっとお仕置きしてあげる」


来るか、あの謎の攻撃が……。知らない間にくらっているという攻撃をしてくるか。

ならばこちらだってそれに対応した魔法をくりだしてやる!


「……アル…イ………ルスト」

「今何か言ったかしら?」

「ふっ、別に何も言ってないさ! ただお前の次の攻撃は失敗するだろうな」

「失敗ですって? 何を訳の分からないことを」

「いいわよ、攻撃してあげる! 今までよりもおもい一撃で!」

「……………。」

「エンド・オブ・ザ・タイム!(時間よ止まれ!)」


エルマの時間はあっさり止められた。

てっきり何か時間を停止されない術を見つけ、余裕だぞ!

という意味であんな態度をとっていたと思っていたから少し拍子抜けね。

まぁそれならそれでいいわ、私がこれからする行動に支障はないのだから。

今からする行動、それは今までの攻撃よりも更におもい一撃をくらわせるということ。

その攻撃方法とはみぞおちに向かってさっきよりもおもいパンチをくらわせる!

本当は顔に膝蹴りも考えたけど、仮にも女の子だからそれは勘弁してあげるわ。


さて、では攻撃するわよ!


「くらいなさいっ! エルマぁ!」


私は拳をエルマのみぞおちめがけて思いっきり突き出した!

だがその時、私はエルマの反撃をくらってしまった!

予め準備していたのか、エルマの体の周りにはトラップ式の魔法陣があったようで、私はそれに気付かずに手で魔法陣に触れてしまった。

結果みるみるうちに炎が手を包み込み私の体を焼いた!


「何ですって!? あの余裕の態度はこういうことか!」


時間停止の対策……それは攻撃を何かしらの方法で封じればいい。

でも時間停止中は動けないからこんなトラップ式魔法を使って攻撃を封じたのね。

うぐぐ、完全に油断していた。まさか無敵である時間停止の力の前ではどんな能力も無意味に終わると思っていたからカウンターを予測してなかった。


「マズイ、早く何とかしないと死ぬ」


この状況を切り抜ける方法……それは!

「自分の体の時間を巻き戻す!

リターン・オブ・ザ・タイム!(時よ元に戻せ!)」


この呪文を体にかけることで怪我をする前の状態まで戻せる。

ただし、デメリットとしてはもう一度痛みに耐えないといけないというとこがある。

この呪文はあくまでも元の状態まで体の時間を巻き戻すという効果の為、今まで受けた攻撃も巻き戻しという形でもう一度受けることになるのだ。

つまり最終的には傷は治るけど、痛みをもう一度感じないといけないということになる。

まったく、我ながらこの呪文は何でこんなデメリットがあるのか不満でしょうがない!

でも今はそんなこと言ってる場合じゃない、やらなきゃ焼け死ぬだけなのだから。

エルマ、貴女の言う通り攻撃は失敗したわ。

でも次は攻撃を確実にあてる!


「そろそろ一分経つわね……時間停止が解除される」


まさかこんな形で攻撃が失敗するなんて……。


「はぁ…はぁ……はぁ」

「どうやらトラップにかかったようだなぁ。どう?


自慢の特殊攻撃をしようとして逆にトラップで攻撃をくらう気分は?」


「ははは、一回防いだくらいで調子に乗らないことね……。

もう容赦はしないわよ、ここからは本気でやる! 覚悟しなさいっ!」

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