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1 プロローグ

「ねえ、あなたこれから転生しますーって言われた人間が神様に何を願うかわかる?」

「いいえ」

「もっとも多い願い事は、金・力・ハーレムよ。金・力・ハーレム!」

「はあ」


 わたしの目の前に現れた神様らしき女性と最初にした会話がこれでした。




「人間は死んでも己の欲から逃れられないの!?」

「ご、ごめんなさい」


 わたしが願ったわけでもないのに思わず謝ってしまいます。


「まあいいわ。気付いていると思うけど、あなたは死んでいます」


 やっぱり。

 白い空間で目が覚めて、目の前に女神様っぽい人がいたから、そんな気はしていました。


「ですが特別に、ある問題の解決を条件に生き返らせてあげましょう」

「ある問題?」

「魔王が人間の国を侵略しようとしているので、阻止してください」


 定番ですが、気がかりを口にします。


「あの、わたしただの子供なので魔王を倒すとかは……」


 小柄で非力な自分にそんなことができるとはとても思えません。


「もちろんあなたには冒険の助けになる『贈り物』を差し上げます」

「えっ、いいんですか。でもさっき……」


 さっきの話があるので、ラノベみたいなチートはもらえないと思ってました。


「チートはあげませんよ? 今までの転生者はそれで失敗しましたから」

「失敗って……」

「――あのダメ人間たちの話が聞きたいの……?」


 目の光が消えた女神様が小首をかしげます。

 何か大変な苦労があったのか、その目の下にはうっすらとクマがありました。

 わたしはガタガタ震えながら「いいえ……」となんとか声を絞り出します。


「チートはダメにしても、何もなしに冒険はできませんからね。……はい、どうぞ」


 女神様が何かをわたしの手の上にのせます。

 よく見ると数字がいっぱい書いてあるサイコロでした。


「このダイスを振って、あなたに与えるものをランダムで決めます。これなら平等でしょう?」


 ハズレを引いたときのことを考えると、わたしには何が平等なのかわかりませんが、おとなしくうなずきます。

 祈るようにダイスを手の中で転がしてから床に落とします。




「あなたの『贈り物』は従者ですね」


 ダイスの目を確認した女神様はタブレットのようなものを操作しています。

 できればチートとか伝説の装備がほしかったです……。

 あっでも、ドラゴンとかが従者だったらすごく頼もしいです。


「では次に、従者のステータスを決めるので、どんどんダイスを振ってくださいね」


 女神様に言われるまま、ダイスを振ります。


「最初は種族ですね。……あら、こんな種族いたかしら?」

「あの……」

「あなたは気にせず、どんどんダイスを振ってくださいね」


 首をかしげている女神様を不安そうに見ていると、次をうながされます。

 女神様はしばらくわたしがダイスを振るのを見守っていましたが。

 ……やがて顔から色がなくなっていきました。



 女神様がおもむろに床に転がったダイスを拾い上げます。



 ――バキバキバキッ!



 握った手を開くと、握り潰したダイスがパラパラと床に落ちました。



「……ごめんなさい、ダイスの出目がちょーーっと片寄ってるみたいだから、ダイスを交換するわね?」

「はい……」


 女神様が差し出した新しいダイスを、震えながら受け取ります。


 ううっ、おうちに帰りたい……。


 ――あ、ダメです。


 ここに来る前にわたしの家は隕石の衝突で消滅しています。

 死ぬ直前に見たのは空に降りそそぐ多数の隕石でした。


「最初からですか」

「決まった分はもういいので、残りの項目を埋めましょう」


 わたしは結果がどうなっているのかわからないダイスを振り続けました。

 ……そして。




「はいクソゲー!」


 女神様がタブレットを放り投げました。


「なんなの人間って、ありえないでしょ!」

「あの、どうなったんでしょうか」


 足がガクガクと震えてきましたが、とりあえず聞きます。


「見なさい、これを」


 女神様が放り投げたタブレットを拾うと、わたしに見せます。

 画面に映る文字は日本語じゃないようで読めませんでしたが、数字は同じらしく、9がいっぱい並んでいました。


「全項目カンストだなんて、あなたのダイス運どうなってるの!?」

「わたしに言われても…」


 わたしは女神様に言われた通りにダイスを振っただけです。


「……もういいわ、とにかくあなたを異世界に送りましょう」


 女神様はタブレットの操作を再開します。


「あとはこれから送る世界に今決めたステータスに近い個体がいないか確認して、いなければわたしが創造することになるわ」

「どうして最初から創造しないんですか?」

「アレ、疲れるのよ」


 話をする間も手はせわしなく動いています。


「でもまあ、こんなフザケたステータスの個体がいるはず…」


 ぴたり、と手が止まって、女神様の表情が変わります。


「これは……」

「あの、どうしたんですか」


 難しい顔でタブレットを見つめる女神様の顔をうかがおうとすると、女神様がバッと顔を上げてわたしを見ます……満面の笑みで。


「――まっ、面白そうだからよしとしましょう♪」

「えっ」


 わたしの足元に魔法陣が浮かぶと、女神様が笑顔で手を振ります。



「好感度もカンストしてるけど、うっかり殺されないようにがんばってね♪」


 えっちょっ――。

 待って、と言う前にわたしの意識はそこで途絶えました。

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