Aチーム ジェットコースターのウワサ②
汽車看板の入り口から、コースター内部へと入る。
既に、電気も通っていないので、真っ暗闇。
照明の一つないのは想定通りであった。
すぐさま、【グルグル君】を取り出し、先を照らしてみた。
わずかな斜度のあるスロープのような通路となっているようだ。
特に、地面には破片の類は落ちていないようなので、このまま進むことができそうである。
「さて、ここからはゆっくり進もう。俺は、前方確認、薺は上方確認、麗子様は後方確認、生生は下方確認な」
「了解ですー」
「わかりましたわ」
「暗い方が落ち着くけど、やっぱ嫌だょ……」
前方を照らして、先の通路を見ると少し左側に折れて続いている。
ゆっくりと進み、通路の端まで進んでいって、先を照らした。
暗闇とは異なる黒の色がまず見て取れた。それとくすんだ赤色のシート。
ボロボロになっている安全バーは、上に上がっている。
先頭の車両は、汽車のデザインに違わず、煙突がついていた。
これが、曰くありのジェットコースターか。
数にして十の車両は、しっかりと連結されており、朽ちることなく健在していた。
2人1組で乗って、計20人の乗客を絶叫せしめたことだろう。
今は、もう電気も通じておらず、動く姿を見ることはないのだろうけれど。
「うーん、上には照明機械っぽいのがあります」
「後ろなんて見ても何もありませんわ」
「床には、何もないょ」
特に見当たらずに、先を照らしながら、先頭車両部分まで歩いていく。
ジェットコースターを挟んで向かいには、ジェットコースターを動かす為の作業室があった。
人が1人か2人は入れる程度の四角いボックスのような場所には、未だに運転を行うための機械が残されているのが通目でも見て取れる。現状、電気も灯っていないことも考えると、動かすことなどは出来るはずもないが、調べるだけ調べるとしよう。
「おっと、っとと」
「部長っ危ないですわっ!」
ジェットコースターを足場にすると、僅かにぐらつき、転倒しかける……のを麗子様が引っ張ってくれて、事なきを得た。
「しっかりして下さいまし!」
「す、すまんすまん」
「やーい、やーい怒られたー」
「……転べば良かったんだょ」
別段、怒っているわけではなくて、心配してくれているのだろうと、素直に謝罪した。
薺と生生は、ペナルティ1と心のメモに書いておく。
しかし、ジェットコースターは外観からみた限り、しっかりと線路の上に乗っていたと思ったが、やけに車体がグラついた。
どこかの部分が線路から外れでもしているのか、単なる老朽化で内部はボロボロにでもなっているのかもしれないな。
改めて、ジェットコースターを挟んだ向かい側へと到着したため、先ほどの作業室を調べるとしよう。
四角いボックスの扉は、普通に開閉式のドアになっていた。ノブを回してみると、鍵はかかっておらずにすんなりと開く。
ジェットコースターの操作盤。【start】【stop】などの文字の羅列とボタンや何も移されていない画面に、メモリの点いたような計測機械が付いていた。
無論、電源などは生きておらず、ランプの点灯などはしていない。
操作することができない操作盤に触れるなど、無意味であるだろうが、ウワサとの関連を考えるとやるべきはことはただ一つ。
おもむろに、【start】ボタンを押した。
「ニッキー部長、動きませんね」
「当たり前ですわ」
「馬鹿がいるょ」
生生、ペナルティ2な。ウワサの内容として、作業員がおらずに、勝手にコースターを動かしたことが引き金となって起こった悲惨な事故である。
これが、オカルト的にトリガーとなっている可能性が高いと思えたのだが・・・。
作業室を出て、後は調べるべき場所はないかと光で照らして探してみる。
出口に続くであろう僅かに下りの傾斜がある道とコースター内部へと続く暗闇は、前方と後方にある。
内部の状態がどうなっているのか不明だが、ジェットコースターなのだから、前方は急な勾配になっているかもしれない。
大体は、上に上がって、下に下がるという感じだろうしな。
「もう早く出ょ……ぅ!」
生生が息を呑むように声を抑えた。変わりに、別の音が僅かに聞こえ始めた。
びちゃり。びちゃ。びちゃり。びちゃ。
水の滴る音か、水を啜る音か。
「うわぁぁぁ!何か居るょ!」
「うわっショウジョ―君、落ち着いて!」
「二人とも、静かになさいっ!」
生生が慌てて、手を振り回すのを薺が抑えて、麗子様は喧騒に対して文句を言う。
突然の音程度で、パニックになるほどには、ホラーの苦手な生生の挙動はいつも通り。
程よい悲鳴は、オカルトの良いスパイスになるとはいえ、光は上へ下へと二転三転して、音の在処を調べるのには、鬱陶しかった。
「みんな静かにしろ」
ぴちゃ、ぴちゃ。ぴちゃり。
音の鳴り方がは少しづつ変わる。
それは、水が水の上を落ちる音だと思っていたが、少し異なっていた。
「あっちだな」
ぴちゃ、ぴちゃ、ぴちゃ。ぴちゃり。
水たまりを何かが歩いている音。
ジェットコースターの最後方。始点ではなく終点部分から、何かがこちらへとやってきている。
「ニッキー部長!」
「確認はお任せしますわ!」
「うぅ!怖いょ!死ぬょ!」
部員達が、背後に隠れてしまった。
折角の機会だからと、確認作業を任せてくれるとは粋な計らいである。
良い部員を持ったな。
「さて、さて」
「ちょ、待って下さいよ」
「急に歩かないで下さいましっ!」
「ま、待ってょ!置いてかないでょ!」
音の主がやってくる前に、音の方へと近づいていくと、部員達も着いてきた。
ぴちゃ。ぴちゃ。ぴちゃ。
水音という名の足音が近づく。
ジェットコースターの終点。ぽっかりと空洞のように空いた暗闇を光で照らして、それを迎えた。
頭は半分失っていた。右手の肘から先もなく。
左手には、だらりと下がった右手を掴む。
眼下は窪み、瞳もなくて。器用に、左足一つで立っている。
ツギハギだらけの服を着る。それはそれは、見事なまでに。
生き物の風体を晒してはいなかった。
真っ赤な血が身体中から滴り落ちて、線路をどこまでも赤く染めていく。
「ごほん」
「ひっ」
「きっっ!!」
「っっっーー!??!」
一つ咳払い、声を抑え、声を出し始め、息を呑み。
オカルトに遭遇した際の礼儀としてまずは一つ。
「「「「きゃぁぁぁぁーーーーーー!!!」」」」
最初のウワサの邂逅を、大きな悲鳴で迎えた。