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Aチーム ジェットコースターのウワサ

 

 二チームに分かれるといったものの、入り口側から進む道が一緒であった。

分かれる場所まではA・Bチーム共に共通ルートを行くしかないではないか。


「分かれて進むとかいってー、分かれられない件についてー」


「恥ずかしいから、それ以上はやめて」


 ここぞとばかりに、薺が弄ってくる。ぐぬぬ。


 入り口前の噴水広場からは、ドーム型の屋根が掛かっている真っ直ぐな道しかなかった。道の両端には、元々はお店と思われる建物が隙間なく建っている。

 海外のとある街並みを模したとされている街並みは、レンガ造りと木を組み合わせてできた建物であったようだ。


 今は無残にも、ガラス片やら木片やらが散乱しているものの、レンガ造りの建物は丈夫な為か原形はしっかりと残っていた。


「雑草ってたくましいよな」


「歩きにくいぃ」


「私がおんぶしてあげゆぅ!」


「嫌だょ!」


 石畳であったであろう場所は、名も知らぬ雑草が大量に繁殖していて、まるで獣道の様相である。

 生生が愚痴を漏らすのをお国が空く反応するが、すげなく躱されていた。


 山間に近い場所に建てられたテーマパーク故に、猪程度ならば出てくるかもしれない。そのような危険を感じつつも、特に何もなく、ドーム屋根の道を抜けた。


「結構、広いですねー」 


「野球とかできそうだよね」


 薺とキノコの感想通り、学校の運動場かくやと思われるほどには、一際、大きく開けた場所へと到着する。

 

 案内板の文字を解読するに、所謂、パレード広場と呼ばれた場所であった。

テーマパークのトリを飾るのが、パレード。絢爛豪華な衣装やらマスコットキャラクター達が歌ったり、踊ったり、スケートしたり、空を飛ぶアレである。


 一体、どのようなものだったのかは、今はもう分からない。

パレードであれば、動画にでも残っていると思っていたが、残念ながら映像はなかった。


「見事に、朽ちてるわねん」


「私有地だけど管理されていないみたいですわね」


 入り口からボロボロであったのだから、当然と言えば、当然なのだろう。

  

 来園者が歩き疲れた時に、少しの間、休憩ができるようにと据えられた机やベンチの一つ一つは、風化してボロボロだった。

 幾夜もテーマパークを照らしてきた街路灯は、もう光を灯すこともない。

 

「じゃあ、ここから分かれて行動だね」


「ああ、各チーム出発だ!」


 パレード広場を直進していくと、ドリームキャッスルのあるワールドへ。

 直進せずに、左手側へと進んでいけば、アトラクションの点在するワールドへ。


 楽し気な掛け声と共に、坂城率いるBチームは、左手側へと繰り出していく。


「それで、ニッキー部長。私たちは、ジェットコースターのウワサを検証するんですよね?」


「ああ、そうだぞ」


「でもでも、ジェットコースターのアトラクションがあるのは左側の道じゃないんですかぁ?」


 薺の言う通り、ジェットコースターは、Bチームの向かった場所にもある。

 裏野ドリームランドへと車で向かっていた時にも見えていた。

 

「薺、資料は読め。俺たちが行くのはあそこだ」


 パレード広場に面して、右手側。

そこには、四階建てで横幅も広い洋風の建物があった。


 建物の右側は【Welcom】左側には【EXIT】

 

 右側の通路を進んでいくと、奥にはさらに入り口が見える。

 その入り口の上付近には、汽笛列車が描かれた看板が提げられていた。


「室内型のジェットコースターだ」


「た、建物の中とか危ないょ!僕は、外で待ってるょ!」


「はいはい、行きますわよ」


 麗子様が生生を牽引していく後を着いていく。


「あそこが噂の出どころなんですか?」


「ジェットコースターのウワサっていっても色々あったんだがな」


 曰く、ジェットコースターで起こった事故について。

【事故があった】とは聞くのに、どんな事故だったのかは、誰に聞いても答え違うんだ。

 

 裏野ドリームランドのウワサはここ最近一気に広まったといっていい。

まるで、誰かが意図的に流しだしたようだが、曖昧さだけは妙に際立っていた。


 事故=閉園で繋がる様なことであれば、大体は記録が残っているものだと考え、そのあたりは重点的に調べ尽くした。

 

 裏野ドリームランド内のジェットコースターでの事故は、死亡事故としての記録が残っていた。室内型ジェットコースターの点検員の死亡。


 裏野ドリームランドを入場して一番初めに客を引き入れるためのアトラクションとして、海外の夜行列車をモチーフにしたジェットコースターが作られた。

 四階建ての建物は、その夜行列車の駅を模して造られており、コースターも同様である。夜を走る列車は、暗闇の中を疾走していくことをコンセプトとされていた。

 目に見えない演出、音や振動よる刺激を絶叫系に取り入れたものであり、それなりに人気を博したようだ。


 事故の詳細について。

 開園前、室内型ジェットコースター内の内装点検を作業員が行っていたのだが、その作業員が中に居るのを知らずにジェットコースターを動かした。

 内部の作業員は、夜行列車さながらに疾走しているコースターに轢かれて、バラバラになったそうだ。


「ひゃー!それはスプラッタですね」


「スタッフの事故だったわけだが、死亡事故ということでアトラクションの運転は禁止になった。しかし、再開はされたらしい」


 コースター自体の不具合ではない事故であった為か、遺族には十分な謝罪を行い、同意を経て、運転を再開した。実際に人が死んだということで、忌避されるものでもあるが、逆にそれを付加価値として楽しむ人間も居る。

 

 全く、そういう人間の気はしれないな。

  

「鏡見ろ、ですわ」


「そうぃうのは、同じぃ穴の貉って言うんだょ」


 あー、あー、何も聞こえない。聞こえない。


 というわけで、ごそごそとリュックの中から手回し式の懐中電灯を【グルグルくん】を取り出した。


「二個あるから、麗子様一つ持っててくれ」


「自前のペンライトがありますわ」


「私も持ってますー」


 二人して人の目に光を当てるのは、やめような。


「じゃあ、生生に貸してやろう」


「こ、こんなとこにぃ本当に入るの気が触れてるとしか思えなぃょ」


 内部に明かりなどは全くないといっていいだろう。

もしも、明かりがない状況になった場合、何かが出た時、下手したら詰むぞ、と。

 

「うぅ、持っておくょ!」


 生生は、懐中電灯【グルグルくん】を手に入れた。


【welcom】ゲートを潜り抜けて、Aチームの皆で汽車看板の入り口の前に立った。


 さて、ここからは何かが起きてくれるかもしれないのだ。

 気を引き締めて行こう。


 

 




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