#1-7 彼女の理由 【キャラデザイン-挿絵あり】
まず、ボロ屋敷と評価した事を前言撤回しよう。
ティファに屋敷の大きなドアを通されて、最初に目に付いたのは2階まで吹き抜けの豪華な大ホールだ。
床は綺麗な白い大理石が敷き詰められて、高い天井には巨大な水晶を飾った装飾のような物体がいくつも吊り下がってる、飾られた水晶から光が発しられこの屋敷のホールを照らしてた。
他に中央の2本の2階までの階段が左右に配置され、壁側アンティークのような椅子が等間隔で両側に配置され、美術品が飾られており、いずれも綺麗に手入れがなされてた。
「・・・」
先ほど見たボロボロな外観の屋敷と違って、内部はちゃんと豪華な屋敷だったことに俺は思わず呆然と立ち尽くしてた。
「アキラ?どうしたのだ?」
「えっと・・・いや、なんか想像してたのと違って・・・」
ティファはなるほどなと納得した顔している。
「だろうな、この屋敷を見る者、大体はアキラと同じ感想だろうな」
「さっきといい、この屋敷といい、ピュティて一体なに者なんだ・・・姫様じゃないのか?」
「ふむ、旅人であるアキラが知りたいというなら教えよう、私の知ってる事でよければこちらへ」
そう言って俺はホールの横にある客室に通された。
「お、おう」
ところでアリスはどこに行ったんだ?さきほどから姿が見えない。
まさか迷子、なわけないか・・・まぁ、アリスならそのうち顔だしてくるだろう。
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客室もホールと同じく白を基調とした綺麗に整理整頓されてた、ふと客室の大きな窓から見える外から日の光が大分傾いてた、そろそろ夕方も近い。
ピュティを運んでたら結構時間経ってたんだな。
「さて、どこから話そう」
「任せるよ」
客室に入り、俺はティファと席を向かい合って座ってた
ティファはどこから話そうかすこし悩み暫く沈黙、頭の整理をしてたのだろう数分ぐらい目を瞑って、そしてゆっくりと語り出した。
「まず、この《神聖ガラドニカ王国》の地は古くより《鋼蜘蛛》が度々出現しては王都近隣の街に多大な災害をもたらしてたんだ」
「・・・ふむ」
「あぁ・・・《鋼蜘蛛》というのはこの地に住み着いてる《魔竜》の名だ、一度身を顕したら四本の脚で大地を蹂躙し、爆炎の魔法であたり一帯を焼き尽くす、この国に住んでる者なら誰もが知ってる」
「・・・ッ」
《魔竜》・・・。
マリアに教えられた情報が正しければ、人類がこの星を脱出したときにそのまま放置した大型兵器をAIたちが動かしてるわけだが、たしかマリアやアリスと同じ高度なAIが搭載されてると聞いたが、AIがどうしてこの国を荒らしまわってるんだ?
これだけの情報だけじゃまだ深く考察はできない、とりあえずティファの話の続きを待った。
「それでだ、いまから10年前、よく覚えてる・・・ピュティ様が10歳の誕生日の日に《鋼蜘蛛》が王都のすぐそこまで迫ってた」
「まってくれ、何故王都に来るまで誰も気付かなかった?」
「やつらは気づけば、すぐ傍に顕現する、そゆうものだ』
「・・・」
「もちろんすぐに王都で討伐隊を編成し《鋼蜘蛛》の討伐に向かったのだが、その時討伐隊を率いたのがピュティ様の父《ギルシュバード・ドリアドネ》大公なのだ」
「その後、どう・・・なったんだ?」
「その・・・王都の精鋭を掻き集めて編成した討伐隊は辛くも《鋼蜘蛛》を退かせることには成功した、だが死傷者を多く出し前線で指揮をしてたギルシュバード大公様もこの戦いで亡くなられた・・・」
ティファは目を伏せがちで語る。
あの喋りたがりのオタク気質なピュティにこんな過去があったなんて・・・だがこの話でこの屋敷の外観がボロイ理由がまだ見えてこない。
「だで、問題はここからなんだ」
「ん?」
「この《神聖ガラドニカ王国》は《フリージン・アストレア》女王陛下と4人の大公との間に5人の姫を授かってる」
「ん?・・・女王と大公4人の間に5人姫授かったてことは・・・一妻多夫てことか?」
「ん?何かおかしいだろうか?」
「あ、なんでもない気にしないでくれ」
この世界じゃ王族は逆ハーレムだったんだな・・・。
「では続ける、東の《ギルシュバード・ドリアドネ》大公を筆頭に、
西の《バルロス・カーライル》大公、
南の《キドラゲイル・ジュラ》大公、
北の《ガイレン・フィーオ》大公、
四大公を軸の家臣たちがこの国の地方統治を行なってる」
「ふむ」
「当時《ドリアドネ家》の家臣や兵士たちは王都随一の精鋭揃いでとても優秀で強かったわけなんだが・・・」
「あっ・・・」
「察してると思うが、《鋼蜘蛛》の撃退で亡くなったほとんどの兵士や家臣は《ドリアドネ家》の者たちなのだ、《ドリアドネ家》の家臣であり高位の魔術師や剣士で有名な大貴族様たち何人もがこの戦いに参加してた・・・」
「・・・」
「さらにギルシュバード様も亡くなられて、もやはや《ドアリドネ家》を支えられる者たちがいなくなり、齢10歳で家を継いだピュティ様に、王宮では味方が居なかったのだ・・・」
「なるほどね・・・」
なにやら素人でも判る、陰謀渦巻くキナ臭い話だな・・・。
そもそも《鋼蜘蛛》が王都まで接近するまで誰も気付かないわけがない、きっと誰かが・・・。
「女王陛下と四大公の間に生まれた姫様たちは次期女王候補として、20歳を越えた時点で王宮で裁定が始まり、次期女王の指定がされるわけなんだが・・・」
「・・・ほう」
「もはや《ドリアドネ家》はなんの力も持たないわけで、それでもピュティ様は女王陛下の実子なため女王候補の資格がある・・・つまりその・・・」
「暗殺か」
「その・・・不慮の事故を考慮して、かつて家臣でありギルシュバード様と深い親交もあったこの地の《ボロミア・カーティラ》伯爵を頼りに、数年前からこちらで女王候補の裁定が終わるまでピュティ様には伯爵の庇護で匿って頂いてる」
たしかに、こゆう王権争いに限らずどの歴史でも骨肉の争いでは確実に弱い立場のやつはすぐに排除されるわけだ。
だからか・・・ピュティは最初俺を暗殺者て勘違いしてたて謝ってきたのは。
「ピュティの母親・・・女王はピュティに何もしてやらないのか?」
「女王陛下は基本公平でなければならない、どちらかに肩入れはしてはならないと歴代王国にある不成文の掟がそうさせてるのだ」
「だからか、他の大公の派閥に目を付けられない様この屋敷はわざと外観がボロボロなのは、誰とも王権争う意思がないという白旗を出してるてことだな」
「不本意だがそうゆうことだ・・・」
そう合点した俺の言葉に、ティファは目を伏せてる、その目はどこか悔しそうだった。
そして視線を夕方に差し掛かった窓に映し、語る。
「元々私は、《ドリアドネ家》に仕える近衛騎士の一人だったが、王宮ではピュティ様の力になれない、だからピュティ様と数名を連れてこの街のボロミア伯爵に頼った」
「・・・」
「幸いボロミア伯爵はなかなかの明君で、厄介者である我等 近衛騎士を形式上カーティラの騎士として編入してくれ、ピュティ様をもいつも気にかけて頂いてる」
「ピュティて立場的に大変なんだな・・・」
ピュティの身の上話を一通り聞いてると、両親を亡くし、親戚から厄介者扱いでたらい回しにされ、妹の難病が発症してから一層疫病神として扱かわれた俺たち兄妹とダブって見えてしまう。
「ピュティ様が《七色の使徒》の最高称号を獲得してドリアドネ家の再建をするためとはいえ、度々問題行動を起こすため私も頭を痛めてます、まったく」
ティファは苦笑しながら茜色に染まる窓の外を遠く眺めながら、なんともいえない表情で呟き囁く。
ピュティがやたら《七色の使徒》て称号にこだわるのはそゆうことだったのか。
コンコン・・・
「失礼します、遅くなりましたがお茶お持ちに参りました」
会話を終わりを見計らってたかのように、先ほどピュティを支えて連れて行ったメイドの一人が、トレイに赤い鮮やかな液体が注がれてるポットと綺麗な装飾がされたティーカップを2個乗せて入ってきた。
「こちらを」
メイドは俺たち二人の前にカップを置き、ポットから赤い液体が注がれる、カップから湯気が立ち上り、とてもいい香りの臭いが漂う、恐らく紅茶系の感じだろう。
「あっそうだ、アキラ、彼女を紹介しよう」
一口紅茶を飲んだティファは何か思い出したように、メイドの紹介をした。
「彼女は《レズリー・デュイット》元・近衛騎士で・・・」
「レズリーです、現在騎士位は返上し、ただの一般メイドとして現在ピュティ様の世話係りを承っております」
そう言ってレズリーは軽く会釈する。
「ティファ、ピュティ様に解毒薬の飲ませましたが、何かあると困るのでピュティ様の側で待機しててください、ボロミア伯爵も後でピュティ様の見舞いでお見えになりますので、私たちは早めに晩餐会の支度の準備をします」
「あぁ判った、アキラもすこしくつろいでくれ、レズリーもあとでアキラを・・・」
「えぇ・・・寝室への案内お任せください」
バタン・・・
そう言ってティファは客室を出た、残された俺とレズリー、気まずい・・・。
「アキラ様、この度ピュティア様お連れ帰り頂誠にありがとうございます」
淡々と改めてレズリーから謝辞を述べられた、どこか冷淡な口調だが先ほど慌てて飛び出してピュティ介抱してるのを見てたから、レズリーはあまり必要以上感情を出したくないタイプなんだなと理解はした。
「いや別にいいよ、助けを求められたから助けただけだよ、困ってる娘がいたら助けるのが当たり前だろ?」
「・・・そうですね、でもありがとうございます」
再度お礼を言われたとき、心なしかレズリーの顔が少し緩んだ気がするが、夕方で差し掛かってる光がそう錯覚させたのだろうか?
「アキラ様、それはそうと・・・」
レズリーは俺に向き合い、メイドの長いスカートを摘み上げふともギリギリまで捲り上げた。
「《ドアリドネ家》ピュティ様専属メイド《レズリー・デュイット》の目が黒いうちは、【間違い】を起こさぬ様お願い申し上げます」
そう言って、レズリーその白いガーターベルトに包まれた柔肌の脚を俺に見せてきた。
「あぁ・・・何もしないよ・・・」
そのメイドの長くレースに包まれた白い脚に似合わない、2つもの【蛇】巻き憑いてた。
いや、正確には蛇に見えたそれは、剣をいくつもの関節にわけ脚に禍々しい形で蛇のように巻きつけていた、所謂【蛇腹剣】がレズリーの脚に装備されてたのだ。
どうやら元・近衛騎士てのは本当らしい・・・。
蛇腹剣・・・ちょっとかっこいい。
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