#1-6 帰り道 【キャラデザイン-挿絵あり】
そのティファと呼ばれたエルフの騎士に事の経緯を話し、ピュティの屋敷につれてって貰うことに。
「で、アキラ紹介するわ、彼女は私の 元・近衛騎士《ティファ・バロニクス》」
「はっ!自分は《神聖ガラドニカ王国》に仕える近衛騎士であります!訳あって今は姫様の近衛騎士から外れて、この街の領主様に仕えてますが、心はいつも姫様に仕えてるつもりです!」
屋敷まで案内されながら、道中でピュティに紹介されたそのピンク髪のエルフの騎士は、胸元を大きく露にしてる軽装の鎧をガシャガシャと軋ませて、ビシっと敬礼をした。
そんな敬礼してる騎士を俺の視界内では、アリスがよちよちと樹を登るナマケモノみたいに、今度はティファの乳房を掴んで張り付いてる。
『H・・・すこし垂れ気味です、65点』
このAIはピュティたちが見えないのをいいことに、言いたい放題なうえしかも評価が辛辣、というかアリスは物に触れられるのか?またナノマシンで測定したとかそんな感じだろうか。
「お、おう、よろしくティファ・・・さん」
とりあえずアリスの乳房レビューをスルーしとく。
「さん付けは不要だ、スキに呼んでくれて構わない」
「そうか、じゃ・・・ティファ」
「うむ、よろしくアキラ」
そう言うとティファはにっこりと笑った、美しい・・・。
「それはそうと、姫様~!」
「うっ・・・ご、ごめんなさい、でもこれも全部研究のためなの!これも全部は《七色の使徒》の称号のためっ!」
今度はティファは背中でしがみついてるピュティを険しい表情で咎めたが。
「はぁ・・・ピュティ様またその様なことを」
「むぅ・・・」
「ピュティ様《七色の使徒》の称号まだ諦めてなかったのですか、そんなお伽話のような存在なんていませんよ、ましてやそれになろうなど・・・」
「絶対居るし!私は絶対なるもん!ティファのあんぽんたん!もう知らない!」
「はぁ、まったく・・・」
ピュティはまるでサンタクロースは居ないことを受け入れられない子供の様な拗ね方をした。
どうやらこれにはティファも溜息しかでない。
「それはそうとアキラ、倒れてたピュティ様を助けて頂きありがとうございます!このご恩は・・・けして忘れません!」
「大げさな、ただここまでピュティを負ぶってきただけだから、そんな大層なことはしてないよ」
ピュティがまだ拗ねてるせいか、話題変えのためにティファは俺に話しかけた。
「しかし、アキラは珍しい召し物を纏ってるな、どこの耳無し里の出身だろうか?」
「ハハッ、遠い場所から来たから多分わからないよ」
強引になんとか話をはぐらかすことにした、
ピュティ同様、ティファもこの旅人衣装が珍しいらしい、それもそのはず、さっきから街の中を歩いる住人たちが主に俺を注目してた。
白の幾何学模様のストライプデザインがされてる黒いショートマントの旅人衣装だ、たしかにこのファンタジー世界じゃ珍しいデザインなのかもしれないな・・・。
そんなに目立つなら、いっそう・・・このマント捨てるべきなのではと思ったが。
『マスター、警告します、その軍用斥候マントですが、対刃対爆にも優れ《光学迷彩》機能が搭載されてます、当該装備を保持することを強く推奨します』
と、俺の感情をナノマシンで読み取ったのか、いまだにティファに張り付いてるアリスが警告してきた、というわけでわざわざ警告するぐらいだから、このマントは貴重品、捨てるのやめとこう。
「それよりいろいろ教えてくれ、そうださっきでも道中でもピュティがちょくちょく話題に出してたけど《七色の使徒》てなんだ?」
率直にずっと聞き流してた単語を二人に聞いてみた、なんとなく凄い存在だとは思ううが、今後の情報収集のためにもある程度の基本情報は知っときたい。
「珍しい、アキラは《使徒の童話》知らないのか?」
「あぁ、生憎凄く遠いとこから来たからな、知らないことばかりだ」
「なら私が説明してあげる、遡ること神話の時代《終末戦争》を生き延びた《魔竜》が大陸全土を跋扈してた遠い昔の時代に現れた大魔法使いの英雄譚・・・」
ピュティーは拗ねモードを即座に解除し、目を輝かせて使徒の話題に食いついてき、早口でその使徒にまつわる童話を解説をし始める。
あ、あー、あれだなピュティはスキな話題には、とことん語りたいオタクタイプなんだな。
ピュティは森で語ってる時以上に早口で、どうやら踏んではいけない話題をどうやら俺は踏んでしまったみたいだ、チラっとティファに視線を配ったのだが。
「ふふっ」
苦笑してた、この際だからピュティの話題に付き合ってくださいというお願い的な苦笑。
一方でティファの体にぶら下がるのを飽きたアリスは、興味深そうにピュティの童話解説を俺と併走しながら聞いてた、いや・・・どちかと記録か?
やれやれとそう思いながら、ピュティの一方的な童話の解説に相槌を打ちながら、俺たち3人はピュティの屋敷を目指してた。
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「お?あれがピュティの屋敷か?」
結構歩いたとこの、街の中心部に大きな立派な白い屋敷があり、明らかに周りと違って作りが豪華だった、柵に囲まれたその屋敷は大きな庭園に水の噴水まである。
それは、いかにも貴族の屋敷て感じだったのだが・・・ピュティから意外なことを口にした。
「あ、あのねアキラ、違うの・・・あそこは私の屋敷じゃないのよ、あそこは私の伯父、領主様の屋敷なの」
「え?」
「ピュティ様、アキラ殿すこし待ってください」
そういうとティファは、白い屋敷の門番をしてた衛兵何人かと何か話して、そのまま屋敷の中に入ってた、5分ぐらいだったろうか、ティファはすぐ戻ってきた。
「ゴホン、アキラこっちだ」
そう言ってティファがさらに案内する、そのまま俺たちはその白い屋敷を通り過ぎる。
てっきりこの屋敷が目的地だと思ってたが、違うらしい。
「・・・」
急にあんなにさっきまで喋ってた、ピュティが黙ってる。
「そうか、アキラはこの大陸が初めてか、ピュティ様の事情を知らないのも無理はないか・・・」
「それは、どゆうこと?」
「・・・」
どうやら、ティファはピュティを気にかけているらしい。
言いにくいことらしいから、俺も特にそれ以上は追求しないで黙っていた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
そんな感じで、街の中を案内されながら、少しまた歩いた、その間は俺たちはみんな黙ってた。
アリスは急に黙った俺たちを怪訝そうに眺めてる、AIには気マズイて概念は理解できてるのだろうか?
そんなアリスを尻目に、そしてさらに街の奥へ、恐らく目指してた屋敷が見えてきた。
「ついたわ、ここよ」
その屋敷の前でピュティが口を開いた。
「ここ・・・」
それは地味で所々ボロボロな古屋敷だった、本来は立派な屋敷だったのであったのだろうが、外観は手入れが行き届かずどこか寂れた雰囲気だった、そして門番らしき衛兵も立っていない。
「ちょっと待ってくれ人を呼んでくる」
そしてまたティファが一人で屋敷に入っていく、しばらくするとガサゴソと音を立てて、2名のメイド服を着たエルフたちが慌てて出てきた。
「ピュティ様!」
「どこ行ってたんですかぁぁ!」
出てきたエルフのメイドたちは、また例に漏れず胸元を大きく開いてるデザインのメイド服だった。
ピュティといい、ティファといい、このメイドたちといい、街のすれ違った女性たちの間じゃこのスタイルはトレンドらしい。
「ジッ――――」
気付いたらアリスがまたじっとメイド二人を見つめてる。
『GとIです』
二人を交互に指差し言い放った。
GとI・・・でかい・・・。
「耳無しの方、後は私たちが承ります」
「お、おう、頼んだ」
「アキラ、また後でね、それまで屋敷ですこしくつろいでて」
そう言ってエルフメイド二人がピュティを担いで屋敷の中へ連れて行った。
ようやく、一息ついた感じだ。
「ふぅ・・・どうなることかと思ったが、すんなり街に来れてよかった」
『今後はどうなさいますか?マスター』
「そうだな、とりあえず基本は情報収集からだな、情報を集めて他AIを探すわけなんだが・・・今日は初日でなんか疲れたな」
『未知の遭遇、お疲れ様ですマスター』
そういえば、俺は一つ疑問に思った。
「いまさらだがアリス、ピュティたちとの会話が普通に成り立ってるのでやっぱお前が何かしてるからなのか?」
『察しがいいですねマスター、その通りです』
「いやぁ、いきなり異種族のピュティたちと普通に会話できてたのに違和感はあったが」
『システム《マリア》は周辺観察を数千年も行なってましたので、文法から単語の言語解析はおおよそ完了してますので、マスターの会話をアンドロイドたちと会話可能の様に、自動的に処理を行なってます』
「そっか、ありがとうな」
『もっと褒めていいですよ』
アリスは服のスカート裾を掴んでからかう様にお辞儀してきた。
「アキラ、どうしたのだ?誰と喋ってるんだ?」
「ん?ティファか、なんでもないよ、ただの独り言だ」
ピュティが連れられて入れ替わりで出てきたティファが声をかけてきた、どうやらアリスとの会話してたのを見られてしまった、傍からみたら一人でブツブツ喋ってる変なやつて思われてそう。
「そ、そうか、ではアキラこちらへ、屋敷を案内します」
「わかった、案内頼む」
ティファに案内され、俺はそのボロ屋敷(謎)にお邪魔することにした。
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