#1-5 エルフの姫? 【キャラデザイン-挿絵あり】
そのエルフの少女は《ピュティ・ドリアドネ》と名乗った。
「アキラ、助かりました、あのまま野垂れ死ぬかと思いましたよ、この恩はけして忘れません!」
「まぁ、こっちも街へ行くついでだったからな、気にしなくていいよ」
とピュティをおぶって森の中を進んでいた、体勢的に支えてる手がこれでもかてというぐらいピュティの尻肉に食い込んでいく。
そしてその大きな乳房は、ぴったりと俺の背中にくっつき、衣服越しでもその感触が判る。
『マスター、これはいわゆるラッキースケベという状況なのでは?』
たしかにラッキーだが、これは不本意で、彼女の要請を求められたらわけだから、なんらやましいことはない!
・・・ところで、アリスはどゆうつもりなのか、木に張り付くコアラのように俺の胸元に張り付いている。
これが最新のAIジョークてやつか?アリスは重さがないから別にいいが、客観的に見たらいま俺は面白い絵図になってるはずだ。
ちなみにこのちびっこは俺の体内ナノマシンが網膜に投影してる擬似映像なので、俺以外誰にも見えない、アリスとの会話は人前では独り言みたいになるので、特に気をつけないといけない。
「ところでアキラは耳無しみたいですが、どこから来たのですか?」
「あー、えーと」
ピュティが尋ねてきた、無論この世界で旅してく上での基本情報はマリアからは習ってはいる、だがどこから来たと質問されると・・・困る。
素直に5万年前から来ましたて流石に怪しすぎるよな。
「その・・・遠い所からだ、辺鄙で地図にもない場所さ」
「そうなんですか?あまり耳無し族の方でも見かけない独特な服装だったので、今度アキラの里の話聞かせてください」
日本人特有の当たり障りない返答したつもりなのだが、どうやらピュティの興味を惹いてしまったようだ。
「ところで、ピュティ何故あんなところのキノコを食べたんだ?」
とりあえず話題を変えるために、気になってたことを聞いてみた。
「その・・・魔法の研究で触媒に使う魔鉱石探しに森に来てたんですが、お昼用にもってきた食事が森の動物荒らされてしまって・・・、途方に暮れてたところにいい匂いのキノコが生えてたので、つい・・・」
それでよくわからないキノコを食べたと・・・、この娘もしかし天然なのか?
しかし魔法に魔鉱石ねぇ・・・ほんとに世界が変わったんだなと、しみじみ。
『マスター、アンドロイドたちが魔鉱石と呼ばれるものですが、おそらくは堆積ナノマシンの結晶体のことだと思われます、一定の環境下でナノマシン濃度が高くなるとなんらかの外的原因で固形化し、クリスタル状になるとされています、演算素子であるナノマシンの結晶体は効率よく魔法関連を扱うのに適してる模様です』
と、俺の心を察してかすかさず張り付いてたアリスが説明と、参考画像を表示してきた。
画像に色とりどりの綺麗な水晶が表示される、とりあえず流し見で画像ウィンドを閉じた。
「そっかそっかー、魔鉱石か、てことはピュティは魔法使いなのか?」
「は、はい!魔法使いです!・・・まだ、修行の身ですがぁ・・・」
とりあえず知ったかぶりで俺は会話を続けた。
どうやら魔法使いと言われて嬉しいのか、キラキラ目を輝かせて力強く肯定したものの、恥ずかしそうに修行の身だと注釈をつけてきた、なんか可愛いぞ。
「で、でもいつかは最上位魔法を自在に操り、全ての《魔竜》を従わせ、大陸にその名を轟かせ、魔法使いの最上位名誉称号《七色の使徒》冠したいと思ってます!いや絶対しなきゃ駄目なんです!!そしたらですね・・・!」
「お、おう、そっか・・・」
どうやら語らせると長いタイプらしい、そんな魔法使いのピュティであった。
しかしピュティには悪いが、俺の意識は背中に当たる胸と、動くたびに手に伝わる尻肉の食い込みからの心理攻撃で、自分の平常心を保つことで精一杯なのだ・・・、こんな旅の序盤で自分が間違いを起こしてしまったら、妹の舞を探すどころじゃなくなる、耐えろ!耐えるんだ俺。
ふと胸元に張り付いてコアラに目をやると
『・・・ニヤッ』
このAIめっ・・・!
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と森をしばらく歩きながらピュティの語る夢の話を聞き流し、ようやく森を抜けて、大きな平原に出た。
その平原は所々畑があったり、柵で牛を放牧してるのがわかる、道も森を抜けたせいかそこそこ舗道されてる人がよく通るであろう道になってた、そして遠くの先に肉眼でも見える石の城壁、おそらくその壁の向こうが街なのだろう。
「あっ、アキラ!街が見えてきました、あそこ!あそこです」
「あぁ、見えて来たな」
と、すこし嬉しそうに言うピュティだった。
ピュティをおぶってたせいもあり、日が大分傾き予定より遅く着いたがようやく、文明らし文明圏に到達したて感じだ。
『マスター、衛星からの情報を、家の規模と配置の並びから推定人口は600弱、周辺の畑の規模から主要産業は農業と推察します、ただ馬車の往来は多そうですので、おそらく行商でしょう、流通の中継地点としての都市機能も果たしてる様です』
アリスから耳打ちで語られる情報、田舎だと思ってたがそこそこ都会?なのかな。
「ところでピュティ、街に着いたら君をどこにつれていけばいいんだ?」
「えーと・・・あ、そうだ、アキラはこの街初めてらしいけど、どこか泊まるアテはあるの?」
「いや、銭無しだから、まず持ち物を路銀に替えなきゃならないんだ」
そう、まずこの世界を回るには最低限でもこの世界のお金は必要だ、幸いマリアの支給された旅の餞別に貴金属類を一式を用意してくれてた、この貴金属類でとりあえずお金の心配はしてはいないが、まず質屋ぽいとこがあるのかどうかがネックだった。
「じゃ・・・こう、しましょ?宿が決まってないならひとまず私の屋敷に来ませんか?ここまでつれてきたアキラにお礼をさせてください!」
それは願ってもない提案だった、質屋を探して情報を探すにも、まず身を寄せれる場所は大事だ、それにこの世界の情報もこの際だから聞けるだろう、ここはピュティの好意に甘えよう。
「いいのか?実のところ人里にくる初めてでな、正直野宿も考えてたが、ピュティがもし迷惑でないてなら・・・世話になろうかな」
「ううん、全然迷惑じゃないよ、それにうちの家訓には【恩人には礼を尽くせ』て言葉があるの、だから恩人のアキラにはお礼がしたいのよ」
「恩に着るぜ、ピュティ」
とりあえず俺は、地上生活初日の寝所の確保は出来て一安心だった。
「でもよかったです、アキラがいい人そうで、もしかしたら私の命を狙う暗殺者かもて最初思ってたけど、でも考えすぎだったみたい、こうしてちゃんと私を街まで連れてきてくれてたわけだし」
「また大げさな、暗殺者て、え?」
何故にピュティの口から暗殺者て単語が出てくる?そう俺が疑問に思ってたところで街の城門に差し掛かった。
人や馬車の往来が多くなり、普通に入れそうだなと思っていたのだが。
「止まれ!そこの耳無し!」
「・・・っ」
ビクっ。やばっ。
「見かけない耳無しの衣装だな、怪しい奴だ、どこから来た」
と城門を警備してた衛兵に呼び止められた、耳無し、きっと俺のことだろう。
マズイ・・・ピュティみたいにごまかしがきかなそうな気配・・・。
「・・・・・・・・・・・・えっと、その」
「なんだ貴様?言えないのか?!」
きっと5万年前から来ました古代人です、では納得してくれないだろう、あまりにも怪しいから声を掛けてきた兵士以外にも、すこし離れた他の兵士もこっちに注目し始めた。
何々、この服そんなおかしい?いかにも旅人ですてアピールしてる思うんだが、あれか?エルフ的にはあやしいのか?。
「えっとですね・・・」
『マスター、必要でしたら支給された銃剣で応戦を提案します、衛星からの周辺情報を鑑みても想定戦力5~6人といったところです、システムアシストで応戦は可能です』
「おまえは黙ってろ・・・」
アリスはそう腰にぶら下げてる折りたたみ式の銃剣を使うことを提案してきた、たしかにアリスのシステムアシストがあれば、体に打たれた適応ナノマシンに作用して自分でもありえない運動能力で、この場で衛兵を張り倒すぐらいはできるのかもしれないが、来て早々に問題起こしたくないのと、せっかく住居を一晩貸してくれるピュティを投げ捨てて逃げるには惜しい、よってその案は却下だ。
しかしどうしたもんか・・・言葉でどうにかやり過ごすことはできないだろうか・・・。
「後ろにいるお前も、顔を見せろ!」
とおぶってたピュティにも兵士は声を掛けたが。
「お、お疲れ様です・・・衛兵さん・・・」
「なっ・・・ッ!」
バツ悪そうなピュティの返事に、兵士は驚いてた。
「その衛兵さん・・・入っていいかしら?」
「は、はい!どうぞお入りください!」
「ありがとう、あとこのことは伯・・・領主様には内緒でお願い!」
「・・・ッ、はい、わかりました・・・」
ピンチから一転して、ピュティ一声で一気に状況は逆転した、兵士が急に敬礼をし元の衛兵の詰め所へと帰っていった。
これは・・・一体・・・
「ピュティ・・・君は一体・・・」
いま俺がおぶってるこのエルフの少女は一体何者なんだ・・・?
そう疑問に思いつつも城門を潜ろうと進もうかと思った矢先のとこに、先ほど衛兵が戻った詰め所らしきとこから一人の騎士が駆け寄ってきた。
その騎士らしき女性は、ポニーテイルを揺らし、先ほど塞き止められた衛兵と違い胸元を強調するようなの軽装の鎧を纏い、短いスカートとでかい胸元をを揺らし、全力でこっちに走ってきた。
『―――さまぁぁぁぁ!!!!』
その騎士は、こっちに向かって来ながら大きく呼びかけてる、んん?
「ひ―め―さ―まぁぁぁぁ!どこ行ってたんですかぁぁぁ!!」
「・・・ッ」
ひめさま?姫?
『 マスター、《姫》 皇室、または将軍家、大名など身分の高い人物の息女に用いられる敬称の意かと思います』
いやさすがにそれは知ってるから・・・。
アリスはここぞとばかりに、姫の説明注釈を表示したが、それは判るので画面をそっ閉じ。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ひめぇさまぁ・・・はぁはぁ!どこ行ってたんですか!」
全力疾走で走ってきたその女騎士は、俺の前、もといピュティの前でぜぇぜぇ息荒くしてた。
「・・・だ、大丈夫?ティファ?」
「姫様、どこへ行ってたんですかはぁ・・・ぜぇ・・・!いつも街の外へ出かけるときは私に一声掛けてはぁ・・・はぁ・・・ぜぇぜぇ・・・」
ティファと呼ばれた女騎士がピュティに文句を言ってるが、息キレ切れで声にならない様だった。
「ご、ごめんなさい」
しゅんと叱られた子供が隠れるように俺の背中で顔を隠すピュティ、背中にピュティの胸がぎゅっとされてちょっと幸せな気分になってしまいそうだが、なんとか平常心を・・・。
そして姫と呼ばれるピュティ、さっきの兵士にこの女騎士の慌て様でいろいろ察した・・・。
野生のキノコ齧るエルフのお姫様て・・・。
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