#1-3 旅立ちの日 【キャラデザイン-挿絵あり】
用意された生活用の部屋で,着替えをしながら晶は黙って、マリアの語るこれまでの世界の話と現在の世界の話を聞いてた。
『というわけになります』
「・・・」
俺は唖然としてた、マリアから語られる人類の争いは病的で、俺と妹が寝てる間に数十度も世界戦争が起き、長期に渡る争いに疲弊した人類は極少数を残してこの星を去ったのだ。
残された一部の人類にとって代わり、生体アンドロイド『エルフ』がこの星を謳歌していたのだ。
「・・・」
『・・・・・・・どうなさいました?』
「いや・・・なんかその話聞いてると眩暈というかカルチャーショックというか・・・ハハッ・・・救えないな」
もういろいろ乾いた笑いしかでない。
『また現在大気には、ナノマシン散布によるテラーフォーミングと度重なる地殻兵器、月の破損により重力変化によって地軸もズレ、2045年から来ました晶様が知っている地球とは根本的に、世界環境は激変してます』
「知らないうちに地球がエルフの星になったと、まったく笑えない冗談だよ」
『心中お察しします・・・』
まさか、数万年後に変わり果てた地球で、AIに 心中お察しします といわれるとは面白いジョークだな。
しかし、それでも嬉しい情報はあった、妹がまだ生きている、この世界のどこかで眠り姫として兄の俺を待ってるはずだ。
「マリア、教えてくれ、妹・・・舞と、どうすれば会える?」
『現在アキラ様名義で《中央》接続し舞様の生存は確認ができてます、よって妹様の冷凍保存してる施設は現在も安全稼動しることを保障します、ですがアキラ様の生命番号ではそれ以上の情報は引き出せませんでした』
「ふむっ」
『ですが、先に述べました通り、現在超期間による原因不明の通信障害が発生し他施設のAIともども自閉のため最新情報を取得ができません、また《中央》は私のセキュリティーレベルでは開示応答に答えないため、晶様には直接他施設に赴き、応じるて頂ける高いセキュリティーレベルのAIから、《中央》にアクセスして頂ければ・・・』
「そうか!それで舞の居場所を聞き出すてわけか!」
『はい、その通りです』
舞は生きている、なら場所が判ればなんとかなるかもしれない、俺はその朗報を聞いて興奮してた。
「で、その高いセキュリティーレベルAIてどこにあるんだ?」
『申し訳ないのですが、判りかねます・・・』
「え?」
『現在私も含めて自閉のため各施設のAIとの通信が遮断されてます、私からも他からの通信を受け取れない様設定されてます』
「なるほど・・・つまりだ、《中央》だんまり、俺の名前を出したから妹が生きてることは判ったが他の詳しい情報は俺の権限でも判らないと、周りのやつに聞こうにも喋ること禁止されてるてわけだな?」
『はい、端的に言えばそのように捉えて頂いてかまいません』
まったく意味がわからない。
いや話の意味は判るが、何故こんなことになっているのかがわからない、通信障害?AI?ついこの前までただの庶民には情報過多すぎてパンクしてしまいそうだ。
「まぁ要約すると俺は、外の世界でまず妹の場所を中央てところから聞きだせるAIを探索しないといけないわけだな・・・」
『はい、その通りです』
妹に会うためとはいえ、気が遠くなってきた・・・。
変わり果てた未来の世界を旅することを考えると・・・。
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目覚めてから数週間、マリアのリハビリプログラムとナノマシン治療により、鈍ってた体を整えて、序序にだが冷凍睡眠前と遜色のない状態まで回復していった。
リハビリ中もマリアは舞検索は行ってたが良い情報はなかった、ただ生存中とう確認だけは取れた。
またリハビリ期間中、この世界の情報やらなんやらもレクチャーを受けてた。
エルフ族、かつて旧人類が多用途目的に生産された生体アンドロイド、旧人類がこの星を遺棄し、去ったあと遺されたエルフたちは独自の生態系と文化を築き現在地上で繁栄してる種族。
魔法、幾度もの世界大戦で荒廃した地球をテラーフォーミングするために、散布された大気のナノマシンが特定のコマンド詠唱に反応し作用を発生させる、エルフの間では魔法として認識されてるらしい。
魔獣、いま世界でまだ稼動してる小型兵器群をエルフたちはそう呼称してる,基本人間とエルフ関係なく無差別に攻撃をするので要注意らしい。
魔竜、世界中に確認されてる大型兵器郡、マリアと同じ独立演算AIが操作をしている、こいつらの中でもしかして目当てのAIがいるのかもしれない?
新人類、遺されたわずかな旧人類の子孫、亜人の世界でなんとか溶け込んで生活をしてるとかなんとか。
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-2週間後
最後のリハビリを終えて俺は一息ついてた。
そして相変わらず姿の見えないAI マリアに語りかけた
「いままでありがとうマリア、大分体が出来上がってきた、というわけで、そろそろ地上出ようと思う」
『・・・ほんとに行かれるのでしょうか?晶様の体型試算からしてここにはまだ100年以上の生存に適した食料ならありますが』
「あぁ、ありがとう・・・でも、ここで閉じこもっても妹には会えないし、住めば都だ、・・・世界がどうなってたとしても」
『判りました・・・では旅の助けになるよう、こちらの適応ナノマシンを注射してください・・・役にたちます』
床から機械アームのトレイのせられた注射器が晶の目の前に運ばれてくる
「・・・」
チクッ プシュー
俺は少し躊躇ったがその注射器を首元に突き刺しボタンを押し、小さな痛みと体に何かが流し込まれているいく感覚。
「・・・んっ」
体中に何かが蠢き、なんともいえない感覚が襲われる、吐き気がする、キモチワルイ。
『定着にすこし不快感がございますが、我慢してください』
「はぁはぁ・・・」
『大丈夫でしょうか?』
「最高最悪だな・・・はぁはぁ・・・うぷっ」
不快感にたまらず思わず俺は倒れこんだ、いままでのナノマシン治療になかった感覚だった。
それは大量のデーターを一度に脳に叩き込まれる感覚といえばいいのだろうか。
「はぁはぁ・・・」
『大丈夫ですか?』
マリアと違う声がした、その娘は気付いたら視界端に不思議そうに大の字になって天井を見上げてる俺を覗きこんでる。
ちびっ子だ。
「幽霊?!」
『晶様、いきなり倒れるから心配しましたよ お怪我はありませんか?』
「マリア!なんだこのちびっ子はどこから出た?!」
『晶様は彼女が見えてるということは、適応ナノマシンの定着は完了したということですね』
「ではマスターが私を見えてるようなの 自己紹介しますね、独立演算型ΩAI 補助AI アリス ですっ」
アリスと名乗るAIの少女は、銀髪赤眼姿の姿で自己紹介をしお辞儀をした。
『彼女を晶様の地上のサポートに補助AIをお使いください、監視衛星の操作と端末操作など、本来地上で行える私のサポートを彼女が一手に行います』
そうか、施設AIのマリアは地上に行けないから、サポート用にサブAIをナノマシン経由して俺の体の中に入れたわけだな、そりゃー情報量多いて感じわけだ。
「ははっ、旅の仲間ができたな、よろしくアリス!」
『よろしくね、マイマスター!』
その、AIはここ目覚めてからずっと話し相手になってたマリアと違って、どこか人間的な揺らぎのある笑みで元気よく返事を返してくれた。
どうやら、マリアが俺に気を利かせてそのように設定したのだろうが、今はそれがありがたかった。
一人で世界を彷徨うことに不安だったが、こうして同行者ができただけでも、この先の旅は賑やかになりそうだな気がした。
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翌日。
長い真っ白な通路を俺は歩く。
視界端にはアリスが横並びで一緒に歩いてくれてる、正確には頭の中にAIアリスは歩かなくていいのだが、俺に合わせて歩いてるフリをしてるだけである。
そしてたいぶ歩いた長い通路の行き当たり、また白い壁。
『あとはこのエレベーターですぐ地上に出ます』
「そうか・・・ありがとうマリア・・・世話になったよ」
『バイバイ~マリア~』
ちびっ子は白い天井の小さな穴の、恐らくカメラレンズに大きく手をぶんぶん振り回してる別れを言う。
―ピっーピッーピッ、ガシャンっ
白い壁は警告音を出しながら左右上下に開かれていく。
そして俺たちはエレベーターに乗り込む。
『ではマスター閉じます』
どうやらここから先はアリスが機械の管理を行うみたいだ。
扉が閉じる最後の間際、マリアの最後の声が聞こえた。
『晶様に良き旅の導きを願ってます・・・』
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