第一章 死神は舞い降りた
硝煙の匂いと鉄臭い臭気が、辺りを漂っていた。
見てとれるようにここは戦場である。そんな死の匂いが充満するこの空間を顔もしかめずに歩いて来るのは、若くして死神部隊を率いている青年―新塚 徹である。
彼は幼いときにテロリストに誘拐され少年兵になっていたという噂があるが、真相は謎である。
「隊長!!」
部下が呼ぶ声に振り向くと、なんと部下に向かって発砲した。
しかし弾丸は部下に命中せず、後ろに着弾した。
「っ!?なぁっ!?何するの!!あんた殺す気!?」
「……いや、後ろに敵いたし……」
ボソッという彼の声を聞き(部下であるにも関わらずタメ口)少女―マリアは振り向くと、敵の骸が目に飛び込んできた。
敵は見事に額を貫かれており、手にはナイフが握られていた。
「嘘……ガチで敵じゃんこいつ……」
「だからそういったろ」
見てわからんのかこのピン球目玉、と付け足す彼に彼女の空中回し蹴りが飛んだのはいうまでもない。
しかし彼は器用に身を屈めて回避した。
「ふん……腕を上げたわね」
「そっちが学習してないだけだ」
彼はため息をつくと意地悪げに笑って言った。
「まあ、何せ軍人になって3年たったのにマシンガンで肩外れたもんな」
「なっ!!い、言わないでよ!!」
顔を真っ赤にして抗議したものの彼は既にいなかった。
部隊の誰もが今回の任務は早く終わると思っていた。
―この時はまだ気づいていなかった。全ては仕組まれていたことに