表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/69

8 ガスコンロのない我が家

桐谷社長はとても気遣いに溢れた人だ。

ご飯は食べているか、とか、ちゃんと睡眠をとっているか、とか、何か困っていることはないかといつも聞いてくれる。

たぶん私がヒヨッ子な新人だから頼りないんだろう。

心配かけてしまって申し訳ないけど、そんな風に声を掛けてもらえるなんて嬉しい。本当に素晴らしい人だ。


山本さんも色々と親切に教えてくれる。

会議に出席してて出れなかった新人研修も、山本さんが内容を教えてくれる。


書類の書式設定の仕方とか、プリンタの使い方とか。席が隣なので、私の指が止まっていると「何かあった?」と声を掛けてくれる。

しかも、本当に初歩的なことでも詳しく丁寧に説明してくれる。

「わたしもパソコン苦手だったからよく分かるわ」と笑って。

美人で親切だなんて女神様のような人だ。

とは言え、山本さんは電話が掛かってきたりメールで呼び出されたと出て行くことが多い。

なんでも副社長との連絡係のような仕事も任されているらしい。



石橋さんは外回りでいないことが多い。

怖い顔の人だけど、怒っているわけではないのだと山本さんに教えてもらって、やや恐怖は薄れた。

桐谷社長がいない時に仕事を見てもらうと、あれこれダメ出しを食らう。

前回は五回も再提出した。

それでもミスの指摘はとても的確で、ものすごく勉強になる。





パソコンのキーボード操作は一ヶ月経ってもなかなか思うように上達しない。

スピードを上げるとミスが多くなって、結局戻って直さなくちゃいけないから意味がない。

今のところ、ミスの無いように慎重に打ち進めていくのが精一杯。

教えてもらったことが書かれたメモを何度も見直しながらやってる。


必死になってパソコンと睨めっこしていると、昼ごはんを食べるのを忘れてしまうことがよくある。

空腹でお腹が痛くなって、アレ?食べたっけ?と気付いたり。

いけないと分かっていても、集中すると周りが見えなくなる。




高校では寮で炊事場があって、当番制でグループ皆の食事を作っていたから、食べることには困らなかった。

けど、こんな都会で一人暮らしになったら、食生活には本当に困ってしまった。

まず、物価が高い。

寮にいた時には近所のスーパーで二本で百円で買ってた人参が、こっちの食料品では一本百五十円もした。思わず出した手を引っ込めた。

どの野菜も高い。野菜だけじゃなくて全部高い。セレブが買う厳選されたオーガニック食材、みたいなヤツ。

でもこの近辺に激安スーパーなんてなさそうだし、そもそも、うちのボロいキッチンにはガスコンロもないから、それを買うところからスタートしなくちゃいけない。



どうしようか・・、と週末ごとに悩んで一ヶ月が過ぎた。


お高いお店の食料品より、意外とコンビニにのパンが安くて、結局コンビニパンで毎食を過ごしている。火もいらないし、ボリュームがあるからお腹も膨れる。

以前は栄養バランスや見た目にもこだわりながら食事当番をこなしてきたけど、今となっては自炊は初期費用がかかり過ぎて断念せざるを得ない。


まあ、食事にお金かけるなんてもったいないし、空腹さえ満たされればそれでいいから、このままでいいやと思ってる。


調理器具一式と激安スーパーが空から降ってくれば考えてもいいけど。

・・・あ、うち、ガスが引いてないからダメだ。

タダで貰えたとしても使えないや。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ