6 私の毎日
働き始めて一ヶ月も経つと、私の生活のリズムが決まってきた。
朝起きて、顔を洗って歯を磨いて、スーツに着替えて鞄を持って、会社に行く。
この鞄は頑丈で重い。会社のパソコンが入ってるんだから仕方ないけど、いつも、肩が痛くなる。
会社のすぐ近くにアパートを借りれて良かった。
ボロいけど、高校の時にいた寮も同じぐらいの古さだったから気にならない。
むしろ、シャワーとトイレが付いてるからかなり快適だと言えるだろう。
家賃も安いし。
会社の前にあるコンビニに寄って、パンを買う。
大袋のロールパンやスティックパンがお気に入り。
食べやすいし、こぼれにくいし。
一袋買うと、一日分・・たまに二日分の食事になる。
給湯室ではコーヒーや紅茶、お茶をいつでも好きな時に勝手に飲んんでいいと言ってもらったので、飲み物を買わなくて済む。ありがたい。
仕事はなかなか大変だ。
通訳はとても楽しい。中継しているだけじゃなくて、二人とも、私にも話しかけてきてくれるからとても勉強になるし、興味深くやらせてもらっている。
語彙が多くて正確だと桐谷社長は褒めてくれるし、マイケルさんは発音が良いとか可愛いとか言ってくれる。
さすが外人さんはリップサービスがお上手です。
桐谷社長は、偉い人なのにちっともエラそうにしないし、ありがとうもすまないもすぐに言う、素晴らしい社長さんだと思う。
本当に、この会社に入ってよかった。
私にとって通訳よりも大変なのはデスクワーク。
パソコンは高校の授業でもやったし、資格も取るために勉強したけど、得意ではない。けど、そんなことも言っていられないのでやるしかない。
会議の議事録は特に大変で、英文化するのに苦労している。
私は昔から、何度も何度も繰り返さないと記憶できないし身につけられない。
だから、資格の勉強をする時でも、人の何倍も繰り返し繰り返し勉強した。
私には、時間はいっぱいある。だから、何度も何度も覚えるまでやった。
仕事でも同じ。
要領も良くないし動作が人より遅い私だけど、時間をかけてでも確実に進めていけたらいい。
今の私には、仕事以外にすることが何もない。
趣味もないし、遊ぶ人も、トモダチもいない。
だから、寝る以外の時間を全部、仕事に当てたって構わない。
誰も文句言わないし、誰にも迷惑かけない。
早く、もっと仕事ができるようになりたい。
メモ書きしたことを何度も読んで、頭に入れておかなくちゃ。
新しい資格をとるのも、会社から補助金が出るって社内規定書にあったし。
挑戦したい。
もっと通訳が上手くできるように、知らない単語を一つでも多く覚えたい。
他のことなんかしてる暇はない。
仕事以外のことは、今は何も考えちゃいけない。
そうじゃないと私は失敗するから。
もっと仕事ができるようになれば、正社員だからいずれは昇進して、お給料も上がるかもしれない。
もっと、もっと、お金を稼げるようになりたい。
それが私の目標。
 




