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番外編 3 同僚と社員食堂

桐谷さんが不在だった間、私は研修に参加したり経理や総務で仕事をして、同期の人達にたくさん声を掛けてもらった。

その時聞いた話だけど、私は入社以来ものすごく目立っているらしい。

入社式で遅刻したからかな・・。気をつけよう。



同期会というものにも誘ってもらった。

同期の人達の中で予定を合わせて、月に二回ほど飲み会をやっているのだそうだ。


会社ではそれぞれの部署で色々な飲み会があるらしい。

誰かが来たら歓迎会。大きな企画が成功したらお疲れ会。

年末には忘年会。年明けには新年会。

毎年桐谷さん達もやっているそうだけど、今年は無しだなと石橋さんがボヤいていた。



「同期会、行かない?」と言われても、私はお酒は飲めないし断わろうと思っていた。

でも、行ってみることにした。

総務の種村(たねむら)梨花(りか)さんが「わたしも飲めないからジュースだよ。楽しくおしゃべりしようよ! で、お友達になってくださーい!」とにっこり笑って誘ってくれたからだ。


梨花さんは、小柄でとても可愛らしいひとだ。

おしゃべりするのも聞くのもが大好きなんだと言う。

彼女は他の同期の皆、誰とでも親しく話せるのですごいと思う。

モジモジしてる私をさりげなく会話に引き込んでくれるので、梨花さんのおかげで何人かの人とお話することができた。


それから梨花さんは、お昼ご飯を一緒に食べようとよく誘ってくれるようになった。

お兄ちゃんからの誕生日プレゼントで携帯を持つことになったので、梨花さんからメールで来る。

「今日のお昼、社員食堂行かないー?」って。

桐谷さんが出張でいない間の三ヶ月半は、ちょくちょく梨花さんとお昼をご一緒させてもらった。




桐谷さんが帰って来て、どうしようかと思ったけど、桐谷さんとお食事に行くと奢ってもらってばかりで心苦しいので丁寧に断りを入れることにした。

同期の友達と社員食堂に行きますと言ったら、桐谷さんはちょっと驚いた顔をした。

でもすぐににっこり笑って「友達ができてよかったな」と言ってくれた。

「会社という小さな組織の中では、自分の味方でいてくれる存在は一人でも多い方が良い」って。





社員食堂で食べる時は、梨花さんと私二人の時もあれば、他にも同期の人が何人か一緒になる時もある。

皆、私より歳上で、キレイで、大人のお姉様方なので緊張してしまう。


はじめの頃、ガチガチに緊張していた私の肩を叩いて、「上司とじゃないんだから、楽にしていいんだよ」って梨花さんが笑った。

「同期なんだからタメ口でいいよ」とも言ってくれたけど、なかなかそれは難しい。

だって、皆さん年上だし・・。


かと言って、社会人の敬語がうまく話せているわけではない。

尊敬語、謙譲語に関しては山本さんにいつも笑顔でダメ出しをされてしまう。

桐谷さんと二人で家にいる時なんかは、桐谷さんもラフにしゃべるもんだから、私までデスマス抜きで話しそうになる。

以前、感情的になってしまった時にもタメ口きいてしまったし・・。


話すというのは難しいものだ。

これでいいのかな、って頭で考えてからしか口にできないから、余計に話すタイミングを逃してしまうことも多い。

だから皆には無口な奴だと思われているだろう。





今日は五人で一緒にランチになった。

皆がそれぞれ食べたいものをトレイに乗せてテーブルに着く。

食堂のサラダバーはグラムで計り売りなので、自分で食べれる分だけ買えてとてもありがたい。

母から、きちんと食べなさい! と怒られて数ヶ月。私の胃も少し容量が増えた。

まだ周りからは少食だと言われるけど・・。


「はあ、お腹空いたー!」

「わたし、今日はオススメにしたわ」

「すずちゃん、それだけで午後、もつの?」

「あ、は、はい」

「細いもんねえ、お肉分けてあげたいわ」

「ねえねえ、それ新メニューでしょ、食べたら感想聞かせて」

「いいけど、どうせ明日頼むんじゃないのー?」

女の人の話すテンポは特に早い。私なんて皆の話について行くだけでも精一杯だ。


ご飯を食べながらも皆は次々とおしゃべりを繰り広げている。

社員食堂ってイマイチだけど安いのよね、近くにランチの美味しいとこあったわ、家でも料理してる? 彼氏でもいないと作れないわよね、イイ男いないかしら・・・

どんどん話題が飛んで行く。すごい。


「すずってば、あの桐谷社長と山本秘書と同じ空気が吸えるなんて羨ましすぎ!」

梨花さんがきゃーっとテンション高く私の肩を叩いた。

「あ、はい」

「今朝たまたまお見かけしたわ。桐谷社長! めちゃくちゃイケメンだった。

桐谷大社長もダンディで素敵だけど」

「ホント、そうよね」


桐谷さんのお父さんは、皆さんに大社長と呼ばれているみたい。

私が思うように、皆さんも桐谷さんをかっこいいって思うみたいだ。


「あの二人って素敵よね。ほんと憧れる」

「ねえ、美男美女で。社長と秘書って。ドラマかってーの!」

「我が社のベストカップルよねえ」


かっぷる??

何の話をしているのか分からない私に気付いた梨花さんが「桐谷社長と山本さんよ」と説明してくれた。


「え!? き、桐谷さんと山本さんって、こ、こいびと同士なんですか?」


「えー!? 知らないの? もう一年前から噂なのよ。

そりゃあ、公の場で宣言されたことはないけどね」

「そうそう。他の秘書はどんどん辞めさせられていくのに、山本さんはずっと残ってるし。

山本さん以外には務まらない、みたいなことを言ったって。聞いたことあるわ」

「ねえ。絶対に本当よ」

「でも、嘘であって欲しいわー」

皆さんはうっとりと頬を赤くして、きゃあきゃあ騒いでる。



言われてみると、二人はいつも一緒にいるし、そばに寄り添う姿は文句なしにお似合いだ。

でも、だとすると・・・

えっと、・・・

え・・?

頭の中はグルグルとあれこれ考えるのに、ミキサーでかき混ぜたみたいに訳がわからない。

噂なの? 本当なの?


周りで話している声は、箱の外にから聞こえるみたいにぼんやりしてた。



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