【第六話〜青空の君〜】
第六話の『青空の君』を投稿します
今回の話は『Cool Sky』の重要な部分の一つです
多分、全編を通し、素直クールの空がここまで色々な表情をする話はもうそうそうないかもしれません
そこの部分を頭の片隅に起いといて下さい
2人の大切な気持ちと言葉をぜひ読んでいって下さい
エレベーターが最上階に着き、俺達2人はそのまま屋上に出た。そこには綺麗な青空が広がり、思いっきり光り輝く太陽が干してあるタオルを余計に白く、眩しくしていた。
空はゆっくりとしかししっかりとした足取りで手すりの所まで行き、青空を見上げた。
俺はと言うと、痛々しい空の後ろ姿を直視する事が出来ずに背を向け、そして俺も無言で空を見上げた。
空はどこまでも青く広がっていた。
何分たっただろうか…それでも俺達2人はずっと空を見上げていた。
空が言葉を選ぶようにゆっくりと話し始めた。
「燈也、今までの事を怒っているか?」
「別に…」
「許してくれるのか?」
「許すも何も、空は悪い事を何もしていないだろ?」
「燈也……」
「なんだ?」
「燈也は私の事が好きか?」
「お前らしくもないな…何だよそれは…」
「友人として好きか?それとも…女として…好きか?」
「え?」
空の言葉の意味を理解できなかった俺は空を見上げるのをやめ、振り返った。俺の目線の先で空はまだ空を見上げていた。
「フフ…もう1度聞いてみよう。燈也は私を好きか?それとも幼なじみという枠からは抜け出せてないか?」
俺は空の言葉の意味を考え始めた。
俺にとって空とは?
腐れ縁?幼なじみ?親友?
分からない…
本当に分からないのか?
嘘だ…
分かっている
離れたくない…
離したくない…
傍にいたい…
守りたい…
俺は今まで生きてきて、空への気持ちに今更ながらやっと気づいた。
空の言葉は俺にやっと自分の奥にあった正直な気持ちを分からせた。
――俺は冷河空の事が好きなんだ――
きっと今まで自分自身を抑えつけていたのだろう。けれど俺の心の中の鍵は今、空の言葉によってやっとなくなった。
「フッ…」
空はまだ青空を見上げながら軽く笑った。
俺はそっと近づき、今にも崩れていきそうな程弱々しくなってしまった空を後ろから抱きしめた。
「俺は今まで自分の気持ちに気付いてなかった。今やっと気付いたよ…俺は空の事が好きだ。」
抱きしめている時、空からは淡い香りシャンプーのような匂いがした。
(やべぇ……ぶっ飛ばされないかな……)
いきなり抱きしめた上に、告白までしたのだ。もしかしたら俺は半殺しにされるのではないだろうかと内心少しだけ怯えてしまっていた。いや、半殺しではすまないかもしれないけれど…
しかし、それでも力を入れたら崩れ落ち、目の前から消えてしまいそうな空の体をむざむざと放す事は出来なかった。
今俺が抱きしめている間は空の温もりを俺の手でしっかりと感じる事が出来たからだ。
俺が空の温もりを感じている間、空は確かに俺の腕の中にいて、どこにも行く事ができなかった。
「燈也も同じだったのか…私も入院して、私の我が儘で会わなくなって、意地を張ってた。君が来る度に何回も君に会いたくて、声が聞きたかった。それでも自分自身の気持ちが分からなかったし、我慢してた。けれどお母さんが燈也を連れてきて、燈也の顔を見た時私自身の気持ちに気付いた…今までの押し込めていた私の気持ちがやっと見つかった…私も燈也の事が好きだ…」
空はそう告げると、手を俺の手に重ねた。
「フフ…燈也の体は温かいな…私は幸せだ…最高に幸せだ…けどな、私はずるい…」
空は自嘲気味に静かに笑い、そしてこう続けた。
「燈也…私は、私は後半年程の命らしい…」
空はそっと俺の腕をほどき、1歩離れ、こっちを振り返った。
「それでも…それでも私を好きでいてくれるか?」
俺の顔を見つめている空は泣いていた。
空の本当の感情は空の瞳から溢れ出し、頬を濡らしていた。
半年…
確かに何かしらの覚悟はしていた。空の状態や空のお母さんの言動で薄々感づいてはいた。ただ、気づこうとしていなかった。しかし、現実はそう甘くはなかった。
たった…たった半年だけ…
「は…はぁ?…」
「私は真面目に言ってるからな。」
「早すぎるだろ…やっと、やっと気持ち分かったのに…」
俺がそう呟いても、空は俺の事を濡れた瞳で見つめながら、微笑んでいるだけだった。
それでも俺の気持ちは変わる訳がない。
「空…それでも俺は君の事が好きだ。」
「ど、どういう事だ?」
俺の答えが女空思っていた答えではなかったのか、空は珍しく動揺していた。
「わ、私は後半年程なんだぞ?私なんかより…」
空がまだ何か続けようとしたので、俺はその言葉の続きをそっと遮った。
「空より大切な人は俺にはいない。ちゃんと言う。俺は冷河空の事が好きです。俺と付き合って下さい。」
「ハァ…全く…私はこんな男のどこがいいのだろうか…だけど…よろしくお願いする。私はやはり少しでも君と付き合っていたい。」
そう言った空の顔は泣いていた上に、いつものように無表情だった。しかし、きっと空は心では笑っていただろう。
「…こんな事ならもっと…もっと生きたい…燈也の側にいたい…」
「ならずっとずっと俺の側にいろ。俺から離れるな。俺が側にいる。だから一緒にいよう。約束しよう。な?」
空は無言で俺に近付き、俺の胸に顔を押しつけてきた。俺は恐る恐るだが手を回した。
「ばか…」
「バカで結構。これから一緒な。」
空は俺の言葉に一度だけ頷いた。
「あぁ…」
空は泣いていたようだが俺は静かに抱きしめていただけだった。。
「燈也…本当にありがと…」
どのくらいたったのだろうか。空は俺の胸から顔を離した。
「気にすんな。、空、そろそろ病室戻んぞ。具合悪くされたら困るからな。」
「だから私をあまり重病人扱いするなと言っているだろう。」
「いや…だからな…そのか、彼女がこれ以上具合悪くなったらこ、困るだろう?」
俺が照れながら言うと、空は少しはにかんでいたが、すぐにいつものように素っ気なく罵倒してきた。
「燈也…真顔でその言葉は気持ち悪いぞ…」
「うっうるせぇ」
「ほら、私の大事な恋人よ行くぞ。」
そう言って空は俺の手を握り、歩きだした。
「こ、恋人って…あっ引っ張んなっ」
急な空の言葉に戸惑う俺をよそに空は細い腕でぐいぐいと引っ張って歩いていった。
青空は空のように優しく、澄みきって、広がっていた。
この日俺達の今までとは全く違う、新しい2人の生活が始まった。半年という期限の中で……
今回も読んで頂きありがとうございます
前書きでも書きましたが、ここが2人の物語の一つの重要点です
今まで『幼なじみ』という大きなものに隠れていた『気持ち』がこの話でやっと光を浴びます
この回で『空』という単語が多様されていますが、自分が青空も曇り空も含め、『空』が好きだからです
もちろんそれだけではありません
でもここでは言いません
「考えてないだけだろ」と思いになる方もいるかもしれませんが、本当に違います
自分の考えでは、小説の作者の意図を「こう思ってたのかな?」と考えるのも小説の楽しみだと思うんですよ
それが作者の意図していた事と違ったとしてもです
作者の意図をこの一つと限定して考えるのは学校の授業だけで十分です
だから自分は自分なりの『空』の意図があり、読者の方々には読者の方々が考えた『空』があるんです
もしかしたらこの後も度々『空』が多様されるかもしれませんが、その時は「また作者の空好きか…」と「この空が表す意味は?」と考えてみて下さい
お読み頂きありがとうございました
次話もよろしくお願いします
自分で「ここまで書いたか…」と編集中にちょっと涙ぐんじゃったのは内緒ですw