【第三話〜桜並木の君〜】
えー…前回前書きやらで第二話なのに第三話と書いてありました
すいませんでした
今回は本当の第三話
『桜並木の君』です
「燈也、早くしろ。」
「お、おぅ。」
まだ俺の体に馴染んでいない制服。俺は玄関先でまだ新しい革靴を俺の足に押し込み、家の前で待っている空の所に行った。
「おはよう。」
「はぁ……」
俺の顔を見た瞬間、空は一つ大きなため息をついた。
「人の顔見てため息つくなよ。」
「違う、君の顔じゃなくて、君の格好だ。」
「え?」
俺が自分の確認をしようとした時、空の白い手が伸びてきた。
「ネクタイが曲がっているんだ。」
「あ、ありがと。」
(空の顔が近い、良い香りだ…つかいつからこんなに綺麗に…)
俺の思考は空の拳によって遮られた。
「燈也、早く行くぞ。あ、おば様おはようございます。」
俺の後ろにはいつの間にか母親が立っていた。
「空ちゃん、おはよう。また綺麗になって〜もううちの馬鹿息子の面倒なんかいいから、さっさと良い男見つけなさいよ〜」
「私が面倒見てないと、燈也は何もしないと思うので。」
「それはそうだけどね〜燈也はもういいわよ〜じゃあ空ちゃん、燈也行ってらっしゃい。」
「おば様行ってきます。」
「行って来まーす。」
高校の始業式が始まった。
人の多さには驚いたが、それに見慣れてしまうと、後はただ退屈なだけで俺はあくびを押し殺していただけだった。
あくびをしないのは先程あくびをした時に偶然こっちを向いていた空ににらまれたからだ。
俺がうとうとしている間に始業式は終わった。俺はのろのろと立ち上がり、とりあえず一年間一緒に過ごすクラスメート達と教室に向かった。
結局、高校生活の1日目はあっという間に終わった。
俺が上履きを履き替え、外に出ようとした時に何かで頭を殴られた。
「いってぇな!」
振り向いた俺の前には学生鞄を前に持つ空が立っていた。
「何分待ったと思っている。」
「文句は俺の担任に言ってくれ。」
「さぁ、帰るぞ。」
校門までの校庭には部活勧誘の先輩が帰宅しようとする新1年の生徒に片っ端から声をかけていた。
前を歩く空はかなりたくさんの部活から勧誘されていた。そのおかげで後ろを歩く俺があまり激しく勧誘されないのはラッキーだ。
だがよくよく考えてみると、俺1人で帰る訳ではないので、結局早くは帰れないのだ。
「すいません、私どこの部にも入部の予定はないです。もちろんマネージャーもやりません、失礼します。あーもう…燈也ー」
どんな事も戸惑いなくズバズバと言う空も先輩の多さとあまりにしつこさにいよいよ俺に助けを求めてきた。その瞬間
「ぜひ我が部のマネージャーに!!」と必死になっていた先輩(男)の目線が空から俺に変わった。
(あー…殺気を感じる…俺…付き合ってる訳じゃないんだけどな…)
中学の時からこんな勘違いは良くされていた。慣れていると言えば確かに慣れているが、やはり喜ばしい事ではない。
「そ、空早くしろ。」
完全にアウェーとなってしまったこの場から逃げ出したかった俺は空の手を握り、どんどん進み始めた。
「ふーお前の人気も何とかしてくれよ。」
やっと学校の敷地内から出た俺達は徐々に散り始めた桜並木を歩いていた。
「そうは言ってもしょうがないじゃないか。」
空は後ろ手で鞄を持って俺の数歩前を歩いていた。
空が一歩歩く度に空の特徴的な長い髪が揺れ、風が少し吹く度に咲き誇っている桜の花びらが舞っていた。
「燈也…」
横の桜を見上げていた俺は空の方へと視線をやった。
「ん?」
「これからもよろしく。」
前を歩いていた空が振り返った。
桜の花びらが舞う中、空の綺麗な髪がなびいた。
「燈也、これからもよろしくな。」
「あ、あぁ…」
(何だ…この変な感じ…)
「ほら、燈也帰るぞ。」
「お、おぅ。」
(まぁ、いっか…)
俺は変な感覚を覚えたが、それは空の言葉で曖昧になってしまった。
今回もありがとうございます
早いもので読者が100人突破しました
新しくされたユニーク表示と総表示に分かれて結構分かりやすいです
さぁ今回の話では空と燈也の入学式のお話です
今回の物語はかなり急に入れたんです
当初の予定では昔話なんて全くなかったんですが、どっかの作者が
「回想いれたいなぁ…」
「もっと互いが学生のシーンいれたいなぁ…」
「空が元気な時みたいなぁ…」
とやら何やらの思い付きで書きました
まだまだ2人の物語は始まったばかりです
皆様温かい目で2人を…むしろ自分を見守ってくださると嬉しいです
でわ次話でまた会いましょう