【第十一話〜触れる優しさ〜】
十一話を投稿します
良かったら読んでいって下さい
みんなと一緒に見舞いに行ってからも俺は変わらず毎日、空の所へ行っていた。
みんなもほぼ毎日来てくれていた。それでもみんなも用事がある訳で全員ちゃんと揃う日はなかなかなかった。
それに誰かが来ても俺らに気を使ってくれるのか、何かを買いに行ったりして病室にはいつの間にか2人きりになっている事もしょっちゅうだった。
今日は誰も都合が合わず、病室には俺と空の2人っきりだった。
「燈也…」
急に空が呟いた。
「ん?なんだ?」
「今度の日曜日開いてるか?」
「ほぼ毎日暇だぞ。」
「フフ…そうか。なら都合が良い。まぁ、とりあえず約束だ、今度の日曜日朝一番に来い。
いいな?拒否権は認めない。」
「強制かよ…」
「毎日暇だと言ったのは君だが?」
「へいへい、次の日曜だな。」
空のいきなりの約束に戸惑いながらも俺は了承した。
先程から意味もなく流れているテレビには俺達と2、3歳しか変わらない新人の女優が元気に笑顔を振り撒いていた。
(何で…何で空なんだ…)
そんな事を考えていた俺の口からは気づかぬうちにため息が漏れていた。
「燈也…溜め息をつくのは駄目だぞ。溜め息をすると幸せが一つ逃げるんだ。」
空は微笑みを浮かべながら教えてくれた。
「そうなのか…これからは気をつけるよ。」
「分かったならよい…燈也、それよりキスをしないか?」
「キ、キグゲホッゲホッ」
空のいきなりの発言に俺は思いっきりむせてしまった。空はそんな俺を不思議そうな顔で見つめていた。
「い、いきなり言うなっ!!」
空のこんな突拍子もない発言には今までずっといたがまだ慣れない。多分一生慣れる事はないだろう。
「嫌だったか?」
小首を傾げながら空は呟いた。
(嫌な訳あるか…つかその顔は反則だ…)
俺を見つめる空の瞳は少し潤んでいた。
当たり前だが嫌なはずがない。もし自分の好きな相手から
「キスをしよう。」と言われて
「嫌だ。」と思う奴がいたら、俺がぶっ飛ばしてやる。
「べ、別に嫌な訳ねーよ。」
俺はそっぽを向きながら呟いた。
「良かった…」
そっぽを向きながらも空の顔をこっそり見ると瞳が爛々と輝いていた。そして空は俺の視線に気が付いたのかその目をそっと閉じた。
俺はぎこちない動きで空に近づき、空の唇に俺の唇を重ねた。
俺にはこの時数秒が何時間にも感じた。
キスをし始めてからどのくらい経ったかは分からないがいきなり
「はいはぁい、冷河ちゃ〜ん失礼しますよ〜」と看護士が言いながらドアを開けてきたのだが、あまりに突然の事で俺は反応する事が出来なかった。
俺達を見た看護士は
「なゃ!?ごゆっくり〜」と言いながらドアを閉めて戻って行ってしまった。
俺はもう遅いがその時になって慌てて唇を離した。
「燈也…温かかったぞ…ありがとう…」
「お、俺も…」
多分あの時看護士が入って来なかったら俺はずっとしていただろう。
俺は何もかもを忘れてあの空間の中にいたかった。
そうすれば空の病気は進行しない…
変われるなら俺が変わりたい…
空が健康になるなら、俺はこの身を捨てたっていい…
俺は無力だな…
「…う…、……や、燈也!!」
「んわっ!?な、な、何だ!?」
俺が空が呼ぶ声で現実に戻った時、空は互いの鼻先がくっつくほど俺の近くまで迫っていた。
そして、再び……
「大丈夫だ、燈也…私は君が拒否しない限りずっとずっと君の隣にいる。だから、大丈夫だ。」
空がいつもの笑顔で呟く。俺の心は全て見透かされているような話し方だった。いや、実際見透かされていただろう。
俺は何をやってんだ…
一番辛いのは空なのに…
自分が辛いふりをしているだけじゃないか…
「ごめん……」
謝る俺に空は再び微笑んでくれた。
それは他の人が見たら本当に小さな微笑かもしれない。しかし、気持ちをあまり表情に出さない空にとっては満面の笑みなんだろう。
「気にするな。君は…燈也は優しすぎるんだ。」
「ありがとう…空、ありがとう…あと、ごめん…」
「フッ、もういい気にするな。次にこの事に関して君が謝罪をするならば、次は私の久しぶりの運動の相手になってもらうからな。
それよりそろそろ時間だな…今日もありがとう。」
俺は時計を確認し、立ち上がった。
「分かったよ。そうだな…じゃあな。」
俺は空に手を振り、病室を後にした。
俺がナースステーションの前を歩いていると、急にやって来た看護士の人達に捕まった。
「久遠く〜ん、どう言う事かなぁ〜?」
「おね〜さん達に聞かしてもらおうかな?」
「病院内でのキスはほどほどにしてもらいたいんだけど〜?」
「あ…いや、すいません…」
「妬けちゃうなぁ〜」
「おね〜さんに彼氏いないからって見せ付けないでほしいな〜」
「本当にだめだからね〜」
それから看護師の人達は俺を説教し終えると仕事に戻っていった。
「はぁ…」俺はさっき空に言われたのに気づかぬうちにため息をしていた。
「幸せが逃げるか……」
先程空が教えてくれた言葉を思い出し、俺は1人ぽつりと口に出してみた。
俺の幸せはもう逃げてしまったのか……
俺の幸せは空との未来だ。
(もし……)
一瞬最悪の事態が俺の脳裏に浮かんだ。
「いや…」
俺は頭を振り、そんな考えを捨てる。
「俺は何を考えてんだ…はぁ…あっため息しちまった…」
やはり俺のため息をする癖は治りそうもないみたいだ。
今回も読んでいただきありがとうございます
読んでいただいたので分かると思いますが、今回の話は次話にしっかりと続いています
次話では何が起こるんでしょーねw
日々、綺麗な文章が書く事が出来るよう頑張っているのですが…やっぱりまだまだですね…
次話でも燈也と空には思いっきりいちゃいちゃしてもらおうと思ってます
これからも宜しくお願いします
でわでわ
失礼しまーす