【第十話〜温かい一時〜】
遅くなってしまい申し訳ありません
良ければお読み下さい
コンコンッ
ドアをノックする音が俺"達"が来た事を空に知らせる。
「あ〜俺。」
「燈也か。どうぞ。」
俺がドアを開けると同時に津出、灯糸、深澄が病室になだれ込む。
「空っ、おはよっ!」
「見舞いに来たぞぉぉぉ!!」
「そらちゃん、来たよー」
空はみんなの顔を見ると、すぐに笑顔になった。
(それでもあまり表情が変化したようには見えないが…)
「涼華、美咲、詩依来てくれたのか…ありがとう…」
「あの〜俺もいるんだけど〜」
俺の隣から急に内藤の声が聞こえた。
(忘れてた…)
「あっ…内藤もいたのか、ありがとう。それよりみんなに話したい事がある。そこら辺の椅子に座ってくれ。」
「それよりって……」
内藤は何かしらぶつぶつ言いながら、手近にあったパイプ椅子に腰を下ろした。俺も座ろうとしていると空が俺を呼び寄せた。
「燈也はこっちに来てくれ。」
「ん?あぁ…」
俺は結局空のベッドの端に座った。
「あのな…」
空がみんなを見回し、一つ笑顔を浮かべた。
「私は燈也と付き合う事になった。」
「いきなり何を…」
俺が続けようとした言葉を急に遮ったのは空の柔らかい唇だった。
「えっ!?」
「えぇぇぇ!!」
「え〜?」
「俺ダケイツモ対応ヒドイヨナ…ブツブツ…」
俺は一瞬何が起こったのか理解できなかったが、すぐに唇から空の温もりが伝わってくるのが実感できた。そしてその温もりはどんどん俺の全身へと広がっていった。
離れようとしても、空がしっかり俺に手を回しているので動けない。
どこを見ればいいか分からない俺の目は空の綺麗なまつげをとりあえず見つめていた。
多分数秒後に空が離してくれた、しかし俺の中での時間はとてつもなく長かった。
「そ、そ、そ、空何やってんだよ!?」
「キスだが?嫌だったか?」
「そ、そ〜じゃなくてっ!!」俺はそう言いながらみんなの方を指差した。俺の指の先には当然津出、灯糸、深澄そして内藤が呆然と椅子に座って、俺達2人を見つめていた。
「空〜とりあえず詳しく聞かせなさいよ〜」
津出が不思議そうな顔で空に尋ねた。灯糸はなぜか顔を真っ赤にしながら硬直している。深澄はまだ状況を分かっていないような顔で俺と空の顔を見比べている。そして、内藤は我関せずとあくびをしていた。
「うむ、もう一度言う事になるが、私は燈也と付き合う事になった。ちなみに今のが私のファーストキスだ。みんなにも私達が付き合い始めた事を知っておいてほしかった。以上だ。」
そんな空のことばに苦い顔をしながら津出が呟いた。
「そ、そうなの…まぁいいんじゃない?」
「フフ…ありがとう。」
「ハイハーイ、質問ー」
深澄が勢いよく手を上げた。
「はい、詩依君どうぞ。」
空が教師の様に右手を深澄に向けて出し、質問を促した。
それに答えるように深澄はなぜか立ち上がり空に聞き始めた。
「質問は3つあります。
1つ目はくどー君のどこがいいのか?2つ目はどちらから告白したのか?後、告白の場所。3つ目は空先生は浮気は許しますか?
私の質問は以上です。」
なぜか空もノリノリで答え始めた。
「よろしいまずは1つ目の質問だが燈也のどこがいいのかか……うーむ、上手く言えないが顔とかではなく、燈也が持つ優しい心だな…」
空が自分でウンウンと頷きながら答えた。
「俺も一度くらい言われてみたいなぁ…」
内藤の小さく呟いた言葉は静かな病室で大きく響いた。。
「私の大好きな内藤く〜ん、ちょっと後でいいかなぁ〜?」
満面の笑みを浮かべた津出が内藤に話しかけた。
「ハッ、ハイッ!!お、俺はな、な、何も言ってませんぞっ!!」
語尾がおかしくなっている内藤は顔がどんどん真っ青に変わり始めていた。
(多分内藤は死んだな…)
「先生、次の質問よろしくお願いします。」
深澄が津出と内藤など気にしていないかのように質問の答えをさらに促す。
「そうだな、では2つ目の質問だが告白したのはあれはどちらからなんだ?」
空が急にこっちを向いた。
「あの…もうこの話やめない?」
俺はこれ以上空に話すのを止めさせようとする。しかし俺の願いは
「だが断る。」と、さも当前のように却下された。
結局、津出、灯糸、深澄に散々冷やかされている俺をしり目に空は2つ目の質問にもしっかりと答えた。
しかし、空は空の余命が半年ほどという事は言わなかったし、俺の空への言葉の肝心な部分は曖昧に燈也の告白って言葉で片付けていた。
「そして最後の質問だが、もちろん私は嫌だが、燈也がその人を選ぶならそれはそれでしょうがないと思う。
詩依君これでいいかな?」
「はいっありがとうございます。浮気おっけぇだってよ、良かったね?」
深澄がこちらを向きウィンクをしてきた。
「あぁぁ!!深澄ぃ誤解を招くような言い方すんな!!!!!」
時既に遅し、俺の叫びは意味をなさなかった。
「燈也…詩依の言葉はどういう意味なのかな?」
「だから何もしてないって!!」
「詩依どうなんだ?」
「さぁーねー」
深澄がニヤニヤしながら答えた。
「ニヤニヤしながら言うなっ!!誤解を解け!!」
「と〜う〜や〜」
それから俺達はみんなでふざけ合い、ここが病室だと忘れてしまうほど笑い合った。
その時は今この場所は薬品臭い、無機質的な病室ではなく、学校の教室や友達の部屋のように温かい、優しい、大切な場所となっていた。
ちなみに騒ぎ過ぎたのか途中で看護士の人に怒られた。
面会終了時間が迫り、俺達は誰からともなく静かに立ち上がった。
「空、また来るわねっ!」
「ぜひ来てくれ。」
「お大事にぃぃぃ!!」
「あぁ、ありがとう。」
「そらー早く治すんだよー」
「早く治すさ。」
「じゃあまた来るな。」
「内藤はもう来なくていい。」
「ヒデェ…」
「嘘だ。」
「また来なさい。」
「はーい。」
俺はドアノブに手をかけ、空に話しかけた。
「空…じゃあな…」
「燈也、いつもありがとう。そして今日はごめん。」
「何が?」
「今日言えなかった…」
「気にすんな。まだまだ時間はある。空が言いたい時に言ってやれ。」
俺はそう言うと空の方へと近付き、頭をくしゃくしゃと撫でた。
「んっ。」
空は少し首を縮め、目をギュッと閉じ、俺のされるがままにしていた。
「なぁ、燈也。」
空が俺を見上げながら呟いた。
「ん?」
「ちょっと耳を貸せ。」
「あぁ。」
空の口元に耳を近づけた瞬間、空の両手が俺の両頬を掴み、空と向き合うようになった。
「えっ!?」
空と俺の唇が触れているのか触れていないのか分からなかった。しかし、確かに空は俺に触れていた
「気持ちが抑えられなかった。ありがとな、じゃあな。」
「お、おぅ。じゃあな。」
空の病室のドアを出た俺を待っていたのはニヤニヤしている津出、灯糸、深澄、内藤、空のお母さん、そして2人の看護士さんだった。
「え゛っ!?なんでっ!?」
「あ〜もぉ〜いちゃいちゃして〜」
津出が溜め息まじりに呟いた。
「俺もしたい…」
「私もだぁぁぁ!!」
「私もー」
津出の言葉につられ、内藤、灯糸、深澄が俺をからかいだした。
「さぁ〜て、仕事、仕事。あっ、あんまり病院でいちゃつかないで下さいね〜」
「あ〜私も彼氏ほし〜」
「今度合コンでもしよ〜」
そう言って看護士の人達は笑いながら仕事に戻っていった。
「燈也君、あんな娘だけどこれからも末永くお願いします。」
空のお母さんが空とそっくりな笑顔を浮かべながら、俺に言ってくれた。
空のお母さんにも今の事を見られていたかと思うと俺はとても恥ずかしくなり、顔を合わせる事も出来ず、必死にペコペコと何度も頭を下げて謝った。
「いえいえ、自分こそ未熟者ですが、よろしくお願いします。それに…」
「気にしなくていいのよ。それに燈也君なら安心できるしね。」
そんな事を言われていた俺は
「早く帰ろ〜」とみんなに呼ばれた。
俺はおばさんに帰る旨を告げもう一度頭を深く下げてからみんなと一緒に帰宅した。
この時の俺は何て馬鹿だったのだろう……
空が元気でいたのは俺に、友人に、家族に心配をかけないためなのに……
それなのに…
それなのに…
何が彼氏だ…
空は1人きりで暗い、冷え切った病室で痛みに耐えていたのに……
まず、遅くなりましたが明けましておめでとうございます
本年も作者共々宜しくお願いします
そして、投稿が遅くなってしまい、読者の皆さんには色々とご迷惑をお掛けしました
ごめんなさい
これからはちゃんとペースを戻し、執筆作業をさらに頑張っていきたいと思います
今回はキャラクターが生き生きと描く事が目標だったので、それが伝わればとても嬉しいです
多分あまりないかもしれない友人達の絡みを出来る限り書きました
今更ですが、やっぱり文章の雰囲気が変わっちゃってますね…
まだまだ自分の中で多分確立しきれてないんでしょうね…
早く自分の文章が確立出来るようにしたいです…
今回お読みいただきありがとうございます
では、また次回にお会いしましょー