15話 チターナ
朝起きるとパールはまだ寝ていた。いつも通り10分で起きるかと思ったが30分たってもいまだ起きてこない。昨日は親に会って疲れたのだろうか、しかし、王宮には午前中にと言われているのであまり寝かせとくわけにはいかない。
いつもなら弄って起こすのだが、昨日色々あったから流れ的にやめといた。ほっぺを軽く摘みゆすった。
「ふげぇえ」
あまりにも緩い返事だ。
「起きろーパール」
「あ、はぁ?あ!ごしゅ、シノブさん!」
「ああ、おはよう。シノブさんて呼べるようになった翌日で悪いんだが今日は王宮に行く日だご主人様でお願いできるか?」
「かしこまりました。ご主人様!」
「ありがとう」
王宮に行くのだからと言うことで朝シャワーを浴び、新しいポロシャツとチノパンをはいた。パールは水色ワンピースに紺のベストだ。
ージリリリリリーン
電話が宿の部屋にかかってきた。相手は誰だかだいたい予想がつく
「あー、ごめんパールでてくれる?」
「へ?私ですか?かしこまりました。ーはい、もしもし」
『あ、シノブ様ですか?』
「あ、はい。」
『あれ?あなたは女性の方ですね。もしかしてあの時に一緒にいらした方ですか?』
「ええ、パールです。アパートの準備が終わったのですか?」
『ええ、そうです。話がはやいです。なので、いつこちらに移られますか?』
「あ、えーと。」
チラッと僕を見てきた、いつ?とか聞かれたのだろう。髪をとかしながらジェスチャーで明日と伝えた。
「明日行くと思います。」
『わかりました。お待ちしております。』
「はい。」
ガチャー
パールがふつうに民と話した。さりげなかったがすごいなあ。なんか新鮮味があった。
「ありがとうパール。それにしても民と対等に話せたな」
「は、はい…」
「ん?何固まってんだ?」
「き、緊張しました。」
「あはははそうか無理もないけど、でもすごいよ。対等に話すパールもまた魅力的だったぞ」
「あ、ありがとうございます。」
少し顔が赤かった。
「支度は終わったな?」
「はい。あとは髪をとかすだけです。」
「そうか…今日もパール左の前は三つ編みやんだろ?」
「はい、やめたほうがいいでしょうか?」
「いや、ならパールは三つ編みやってな僕がとかす。やって見たいんだ。」
「え?あ、はい。わかりました。」
僕は櫛を持ち、パールの肩の直前で切ってある水色の髪をとかした。これはやって見たかったんだ。女の子の頭ってなんか可愛いオーラが出てて…
ジリリリリリーンー
「なんだ?ガチャーもしもし?」
『ゆっくり喫茶という方があなたの部屋に行きたいそうです。』
「通してくれ」
ガチャー
「迎えがきたぞ。パール僕は一通りとかしたつもりだがそれでいいか?」
「はい、ありがとうございます。」
「えーと、たしか…チターナとかいうメイドがくる予定だったな」
「はい」
「パールは記憶力いい方か?」
「まあまあ自信あります。」
「まあまあか、まあいいや」
「あっ、そうだ。西部では君は妹だ。妹キャラで頼む。」
あえてお兄様と言え、とは言わなかった。いまのパールなら他の呼び方もしそうだからな。
「かしこまりました。お兄様。」
うーん、お兄様か…お兄様よりふつうに言うとお兄ちゃん?兄上はおかしいよな。お兄ちゃんかー…
コンコンー
「開いてる、どうぞ」
扉はゆっくりと開きそこにはロングの青緑の髪を腰まで垂らした少女が立っていた。名前はチターナ、西部に行ったときに契約を結んだメイド喫茶店のエースだ。
「店長の命により参りました。チターナです。店で一度会いましたがあいさつはまだだったので、よろしくお願いします。」
「うん、よろしく。僕はシノブ。そしてこっちがパールだ。」
「よろしく。」
「あ、よろしくお願いします。パール様。」
パールは民になっていた。いいぞ!
「シノブ様にはお礼も言いたかったのです。私を貴族に引き渡されるところを助けていただき本当にありがとうございました。」
「いやあ、ただのビジネスだよ。まあ君がかわいそうってのもあったけどね。」
「私、…私、シノブさんに惚れてしまいました!」
顔を真っ赤にして急に告白してきた。だが僕は動揺はない。心に揺るぎはないからだ。
「ありがとう。嬉しいよ。気持ちは受け取っとくよ。」
「ああ、ありがとうございます。フートがでしゃばってすいません!」
「いやあ、君はすごいさ。告白ができるほど洗脳が溶けてんだから。」
「え、ええ。カフェでお客様を毎日見ているので…」
「ああ、なるほどね」
「しっ、失礼ですが。シノブ様は誰か好きな方はおられるのですか?」
「ああ、いるよ。近くにね。」
「え?でも、あの方は妹さんでは?」
「いや、彼女はようしー」
「フートです。」
パールが僕に割り込んで自らフートと言った。割り込むなんて民でもしてこないことだ。だがパールの目は真剣だ。おそらくチターナへの同情だろう。まあいっか。
「すいません、ご主人様。お約束を守れませんでした。」
「守り通すべき約束か、破っても構わない約束か、それを判断するのも自立だ。構わないよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「え?じゃあ、あなた方は恋人でいらっしゃる?」
「いーや、答え待ち。」
「え!?な、なんと!すごいですねぇ」
「僕が本心で素直にいろって言ったんだ。偽の気持ちで恋をするなんて相手に対する侮辱だからね。」
「たしかにそうですね。私達フートは告白された場合と言うのを習っていないので…まず、ご主人様に告白を平等にされることはないと言えるので…」
「だろうな。まあそうだな、それはいいとして…」
「ご主人様、もう少し彼女の心をいたわった話の終わらせ方がいいのでは?」
「…ごめんよ。まあ…なんていうか、あれだ、えーと君は美人だ。民になったら彼氏を作って楽しく暮らすといいよ。」
「ご主人様…あまりフるのはうまくないのですね。」
「もう許してくれよパール。僕はそんな完璧じゃないさ。ていうかパール君はもう民になっていいんじゃないか?」
「すいません。ご主人様。」
表情を変えず、実に冷徹に見えた。
「え、ええと。私は大丈夫ですので。行きましょうか。」
「そうだな。」
「ご主人様、私少しご主人様にお話が…チターナさんすいません。下の喫茶店で待っていてくださる?今日の王宮での話す内容を確認するので。」
「はい。わかりました。ごゆっくりどうぞ。」
チターナはせっせと退室し一階に降りて行った。だが驚いたのは僕だ。王宮で話す内容ってなんだ?
と振り返るとー
「ごじゅじんざばー…うー…」
号泣…なぜだ…
「申し訳ございません。うー…ご主人様をあそこまで否定してしまい申し訳ございません。…うっ…お許しくださいぃー!」
「泣くこたないだろう。僕は許してるさ、なんせ君は民に近づいているんだ。」
「私はつからったです…うー…うっご主人様を否定したくありませんでしだー…」
「え?じゃあなんで?」
「彼女が可哀想だったので…フート初めての告白で断られて…」
「そうか、そうか…優しいなパールは…」
パールの背中をさすりながら抱きしめた。
「私はご主人様を否定したくありません…ひっく…」
「ありがとう。悪かったよ…パール、優しいな。いいんだぞ?優しいのはいいことだ。」
「…はい。」
しばらくパールが顔を洗い乱れたものを直し、部屋を共に出た。まだ目元は赤かった。
しかし、驚くいたのは一階のロビーにいたチターナの様子だ。うつむいている。思い詰めたように。僕は心配になり、速足で行き、肩に手を置いた。するとチターナはびくんとしたあと見上げて目に涙を浮かべていた。
「あ、じゅ、準備は済みましたか?」
しかも鼻声だ。
「チターナ。どうして泣いていたんだ?」
ズバリ聞いた。これは僕の手法だ。パールにも文句は言わせん。
「え、いや…大丈夫です。ただ…シノブ様の所にいたかったなあと思って、少し…」
「そうか…なら、君、僕のメイドになるか?」
「え?…そんな」
たしかにチターナの顔から希望が見えていた。
「もちろん君が民になってからだ。民になったら自由、そしてそのとき僕と一緒に居たいという気持ちに変わりが無ければおいで?」
「あ、ありがとうございます!シノブ様!だ、大好きです!」
「あははは、パール!君はチターナがメイドでもいいかい?」
「ええ」
パールは嬉しそうだった。よかった。パールは優しいなあ。




