予感6
普段のキリならここで、夢で感じたことを、躊躇うことなくハルに話す。例えば、キリの感じたことが三日後に大きい嵐が来るとか、今年は豊作になるとか、そういうことなら全く問題はない。だけど、今回の夢はいつもと様子が違った。目が覚めたとき、全身に鳥肌が立っていて、べたつく嫌な汗をびっしょりかいている。そして、いつまでも正体不明の嫌な予感が胸から去っていかない。(こういうとてつもなく嫌なことは、あまり人に話さない方がいい。例え、ハルでも……)そうキリは思った。
だからキリは口ごもった。
「えっと、最近はなにも感じないの。ごめんね。面白い話ができなくて」
ハルは、全然気にした風もなく、明るい調子で答えた。
「いいのよ。そんな日もあるよね。いつもいつも何かあるなんて期待する方が間違っているよね」
キリは、ちくりと胸が痛むのを感じながら微笑み、話題をそらした。
「それより、ハル。お祝いは何がいい?私にできる精一杯のことをするから」
これはキリの真心からの言葉だった。大切な親友、ハルの晴れの舞台だ。心から祝福してあげたい。
「なんでもいいの。キリが私のためを思ってくれるなら。ねぇ、お嫁に行ってもわたしのこと忘れないでね」
それは、明るくてさっぱりした性格のハルらしい言葉だった。