予感5
「ねぇ、キリ。お祝いは今度でいいから、いつもの話を話してよ。わたし、キリの話大好き」
いつもの話とは、キリの力に関することだった。和葉が村人から畏れられ、また避けられるようになった原因である能力を、キリは母から受け継いでいる。亡くなる前に和葉は、キリに「特別な力」で見たり感じたこと決して他人には話してはいけないよ、と言った。(かわいいキリ、いい子だから信用できる人以外には絶対に話さないと、母さんと約束してちょうだい。いい子だから)
和葉は自分と同じ苦労を、娘にもかけさせたくなかったのだろう。自分はもう取り返しがつかないし、もとより苦労は覚悟の上で源九郎と結ばれたのだ。でも、娘は違う。娘に同じ思いはさせたくない。和葉は死の床で、娘に堅く誓わせたのだった。
キリは、母と約束したが春菜だけは例外だった。ハルは、キリの親友だし、信用できる。それに、キリ一人で抱え込むには重すぎる秘密だった。父の源九郎も信用できる人だが、苦労している父にこれ以上負担を掛けたくなくて、キリは父に打ち明けられないでいた。ハルは、そんなキリの秘密の話を明るく受け止め、いちいち真面目に関心を持って聞いてくれる。