予感3
お湯が沸くまでの間、キリとハルは取りとめもないおしゃべりをした。
「あのね、キリ。サンゴロウさんのところ孫の、四朗ちゃんが風邪で寝込んでいるみたいなの」
「そう。それは心配だね……。この前も四朗ちゃんみたいなちいさい子が病気で亡くなったばかりなのに」
サンゴロウのところの四朗はまだ三歳になったばかりだ。まだ幼いうちに病気を得て、生き延びる確率は、そんなに高くない。貧しい村ではよくあることだった。この冬も、体力のない老人や、幼い子が病気で何人も黄泉の国に旅立ってしまった。村の情報には疎いキリだが、こうしてハルがたまに来ては教えてくれる。
お湯が沸いたので、それを二つの湯呑にいれ、軽く冷ましてから一方をハルに手渡した。ハルは、両手で湯呑をつつむように持って、白湯は温まるなぁと言った。キリはそれを見て、ふわりと笑った。こういう時のハルは、とてもかわいいと思う。
キリはハルが持ってきてくれたお菓子の包みを開けた。
「わぁ……」
キリは感嘆の声を漏らした。そこにはキリが見たこともないお菓子、白と桃色の小さい花みたいなお菓子があった。
「これはね。落雁っていうの。お米の粉とお砂糖でできているの。とってもかわいいでしょ。キリに見せたくて」